愛用者のコメントは“台本通り”なのか?

健康食品のテレビ通販番組に携わって十数年。現役の番組制作担当者が、舞台裏のホントとホンネを語ります。前回、通販番組で「個人の感想」を言っている人たちは、愛用者を装っているわけではないというお話をしましたが、今回は「言ってることはホントに本人の実感なのか?」という疑問について、解説します。

「局のOKが出ません」

 前回、健康食品の感想を話している愛用者にはタイプがあり「ずっと前からの愛用者」と「ちょっと前からの愛用者」(撮影前にお願いしてその商品を利用してもらう)ということを書きました。

 では、その「ちょっと前からの愛用者」は、どこからどんな風に見つけてくるのか? これも大きく2パターンに分かれます。

1. すごく健康的な人、たとえば年齢より明らかに若く見えるとか、体力あって筋肉ムキムキとかの人を探してきて、その人に愛用者になってもらう。

2. 世の中にはエキストラ(臨時雇いの出演者)を紹介・派遣してくれる事務所というものがあります。そこに登録している素人さんで、「こういう依頼があったときに出演可」としている人に、愛用者になってもらう。

 みなさんの中には、「関係者の知り合いが愛用者で出ているんだろう」と思っていた方もいるのではないでしょうか。しかし、現在このパターンは非常にレアなケースと思われます。

 たとえば10年ほど前など、今ほど通販番組が多くなかったころはあるにはあった話ですが、その当時でも一般的な方法ではありませんでした。しかし今や、もしそうしようと考えたとしても、制作現場の人間は出演できるような知り合いを使い果たしてますね。何人も何人も、いい具合の年齢層の知り合いがたくさんいるなんてことはまずありません。

 第一、関係者の知人が愛用者で出るというのは、「身内のヤラセ出演だろう」なんて指摘された時のリスクが高すぎるんです。そもそも今の放送局は、この種の番組に親族等が“愛用者”として出演していないかのチェックも入れてくるものなんです。

「人はウソつけないんです」

 次にみなさんが抱かれる疑問はこんな風ではないでしょうか。

質問:「愛用者のコメントって、制作者が頼んだセリフをそのまましゃべってるだけなんじゃないの? その『ちょっと前からの愛用者』なんかはとくに」

答え:「そうもうまくいかないものなんです。本人が感じてないとなかなか言葉は出ません」

 お願いして愛用者になってもらった人の場合は、セリフも感想も制作サイドの意のままでは? と思うかもしれませんが、そうはいきません。

 出演してほしい人に「これを飲んでいてもらえます?」と頼んで愛用者になってもらったとしても、基本的にみなさん、良心をお持ちなんです。しゃあしゃあとウソを言えるようは人はなかなかいません。全く元気にもなってないのに、「『すごく前と違って元気ルンルン!』と言ってください」と言われても嫌でしょう? 普通。できないのです、そういうことは。

 ただ、イメージカットを撮るときなどに、「元気そうに走って~!」などと声をかけることはあるでしょうけど。

 そして制作サイドでも、「『あれがよかった』と言ってくれません? ウソでも」とは、まあ頼めないのですよ。そんなことしたらこの時代、ネットでバラされてハイ終わりです。

 そこで制作サイドではお仕着せでセリフを言わせたり、直接的な指示をするのではない方法で、なんとか商品のよさが漂うコメントを引き出そうとするわけです。たとえば、「朝どうでした?」(目覚めのよさなどにつながるコメントを引き出したい)、「体重計乗る時、気分変わりました?」(ダイエットにつながるコメントを引き出したい)など、いろいろな質問を重ねるのです。

「ノリノリも困るんです」

 一方、元々ほれこんでいる長年の愛用者さんという場合では、本当にさまざまな実感を持っていて「飲んだ感想教えてください」と振っただけで、もうドンドンドンドン話が出てきます。だって本当によかった実感をお持ちですから。

 これと同様のことが、お願いして“愛用者”になってもらった人でも起きることがあります。「言われて飲み始めたら思ったよりよくて、こんなこともあったあんなこともあった」というパターンで、結構あります。

 こういうわけですから、本当に実感がこもっているかを見抜くポイントとしては、表情、語調がいちばんではあるのですが、もう一つ「語るエピソードが具体的か」というのもあります。本当に気に入った人は、自分で強い実感を得たエピソードをお持ちの場合が多いんですよね。

 ですが、ここも悩ましいところなんです。ほれ込んでいる人ほど、薬事法にひっかかる効果効能に関わるエピソードをバンバンおっしゃるわけです。「何とかの数値が下がった! もう嬉しくって~♪」などなど。

 以前書きましたが、健康食品はクスリではないので、そのようなコメントをテレビでお知らせするわけにはいかないのです。法律違反です。だからカットになることはしょっちゅうです。

 テレビを見ていて「ホントに嬉しくってね~。毎日の気持ちが変わって」など語りながら本当に楽しそうな表情している愛用者さんいらっしゃいますよね? テレビでそれが伝わる方は、あくまで僕の関わった範囲と主観ですが、本当にそう思っている方が多いですよ。

 実際、人ってうまく演技なんてできないんです。素人さんはもちろんのこと、実は俳優・タレントの場合も多くは、「よいと思ってないものをほめる演技」はそうそうできないんですよ!「ウッソ~!」と思われるかもしれませんが、そうなんですよ。

 というわけで、次回は俳優・タレントの愛用者ってホント? という話についてお話しましょう。

About 森畑たけし 65 Articles
通販番組制作担当者 もりはた・たけし 1975年生まれ。通常のテレビ番組と通販番組を手がけて12年。ひと昔前、一段下に見られていた感のある通販番組とその市場の成長に驚くばかり。同時に「やっててよかった~」とありがたい食い扶持があることにホッ……。しかし、膨大なグルメ情報、健康情報、お得情報などを発信し続けていながら、本人は全く活用できていない。自分が通販アイテムを買って続けるなら髪関係だろうかと、毛根と〆切が気になる人。