おとぼけでしたたか竹鶴政孝

「マッサン」が始まったNHK連続テレビ小説がまたまた好調と聞きます。

 物語の設定だけでなく登場人物もニッカウヰスキー創業者竹鶴政孝を巡る企業と人物に沿ったもので、公共放送NHKも変わったものだなと感じます。ウイスキーを「ウヰスキー」と書かないところだけは、国語を守る団体としての立場を守っているようですが。

 竹鶴政孝については「ヒゲのウヰスキー誕生す」(川又一英著)という伝記が1982年に新潮社から上梓されており、2011年にアサヒビールがこれの非売品版を制作して各地の図書館に寄贈するということが行われました。今回の放映は、そうしたPR活動の結実の一つと思われます。

 この本を読んで私が感じたことは2つあります。

 一つは、竹鶴政孝という人は企業や篤志家を手玉にとって自分の場所を作っていく、とぼけたしたたかさのある人だったということです。あの方の孤高・孤独なイメージが、そのことと重なって見えるように感じました。

 もう一つは、竹鶴政孝という人はたいへんに頑固な人だったということです。拘ったことの一つが、ウイスキーはスモーキーでなければならないということでした。そのこだわりが、大日本果汁(現ニッカウヰスキー)創業へとつながっていったのでした。

 ところが、最近コンビニなどでよく見かける「ブラックニッカクリア」は、「ノンピートモルト(ピートを使用せず乾燥させた、ピート由来のスモーキーフレイバーのない大麦麦芽)を使用する事で、やわらかな香りとまろやかな味わいを実現したクセのないクリアな飲み心地のウイスキーです」と紹介されています。

 この商品のこと、そのラベルにヒゲの人物が描かれていることについて、余市蒸溜所を見下ろす墓で竹鶴氏はどのように思っているのでしょう。

 竹鶴政孝と夫人リタに関する本は最近多数出版されています。これらも読んで、もう少しこの一筋縄ではいかない人の理解を深めようかと思います。

「ヒゲのウヰスキー誕生す」(川又一英著、新潮社)
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「ウイスキーと私」(竹鶴政孝著、NHK出版)
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「竹鶴政孝とウイスキー」(土屋守著、東京書籍)
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「『マッサン』と呼ばれた男 竹鶴政孝物語」(産経新聞出版)
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「リタとマッサン」(植松三十里著、集英社)
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「竹鶴とリタの夢 余市とニッカウヰスキー創業物語」(千石涼太郎著、双葉社)
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「マッサン語録~ニッカ創業者・竹鶴政孝と妻リタの生きた道」(菊地秀一著、宝島社)
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「琥珀色の夢を見る 竹鶴政孝とリタ ニッカウヰスキー物語」(松尾秀助著、朝日新聞出版)
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「リタの鐘がなる 竹鶴政孝を支えたスコットランド女性の生涯」(早瀬利之著、朝日新聞出版)
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「日本ウイスキー 世界一への道」(嶋谷幸雄・輿水精一著、2013、集英社)
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※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

齋藤訓之
About 齋藤訓之 300 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。東京栄養食糧専門学校非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →