2018年食の10大ニュース[1]

米中覇権争いとの付き合い方。

  1. 食品衛生法の改正
  2. 自然は怒っている
  3. 食品表示法の宿題進捗
  4. 外人さん いらっしゃい!
  5. マイクロプラスチックに注目
  6. LL(ロングライフ)豆腐と液体ミルク実用化
  7. ゲノム編集への対応明確化
  8. 豚コレラ発生
  9. 生活のICT化の前進
  10. 「まんぷく」ヒット

 2018年の新語・流行語大賞は「そだねー」、2018年の漢字は「災」が選ばれた。インパクト不足だが、理解できる。韓国の平昌・冬季五輪を皮切りに、日本人アスリートの活躍が目立った。2020年の東京五輪におけるメダルラッシュと滞りない開催を期待したい。一方、今年は例年以上に自然災害が多く、それが今年の漢字になった。

 本庶佑博士のノーベル賞受賞は日本中でうれしく受け止めたものだ。

 安倍氏が自民党総裁選に3選され、働き方改革法やカジノ法等が成立した。

 国際情勢は困難さが増大した。独裁者に近いトップが増え、自国第一主義が蔓延した。国と国の関係は複雑で、一言では表現できない。それでも、わかりやすい形で表面化したのが「米中の覇権争い」だ。日本はその両国と上手に付合う必要がある。そのなかで安倍首相の国際的な存在感は継続している。ただし、ロシアと北朝鮮との交渉は慎重に進めたい。任期が決まっているため、足元を見られかねない。

 人類全体の課題は環境であり、資源枯渇に加え、難民問題も含まれる。これらの根源は人口増にあると考える。発展途上国の援助に「避妊策」を加える必要がある。教育の進捗を待つ余裕はない。また、格差拡大への対応が重要だ。全世界で、GAFA(グローバルICT企業。Google、Apple、Facebook、Amazonを指す)への適切な課税ルールを定める必要がある。

 課題の克服には科学技術の推進が重要だ。歴代ノーベル賞受賞者が共通して指摘するのは、日本の科学研究のあり方だ。100億円の科研費増額が計上されたが、一過性であってはならない。

 2019年、皇太子さまが新天皇に即位される。よい年にしたいと切に願っている。

 上記動向に配慮しながら、食関連ニュースを選択した。

1. 食品衛生法の改正

 食品衛生法が改正された。項目は多岐にわたるが、中でもHACCP制度化が重要と考える。対象は食品を扱うすべての業種だ。業界ごとのガイドラインが整ってきた。ただし、現場は多様で、対応には本質の理解が必須である。事故を起こせば、従来以上にHACCPの状態を問われる。広域食中毒への対応、容器包装ポジティブリスト制度化の行方にも注目している。

2. 自然は怒っている

 全国的に年初は厳冬、夏季は猛暑だった。西日本は豪雨に見舞われ、野菜が高騰した。大型台風が多く、直後の北海道地震で広範囲の土砂崩れが発生した。交通網寸断と大規模停電が起きた。生乳が廃棄され、農林水産物に大きな被害が出た。

 豪雨等は地球温暖化との関連が懸念されている。COP24では国際的枠組み「パリ協定」をなんとか採択できた。

3. 食品表示法の宿題進捗

 食品表示法には積み残した宿題があった。原原(原料原産地)、GM(遺伝子組換え)、食品添加物の3課題である。原原表示は消費者・事業者に向けた啓蒙活動が進められた。GM表示はよい方向の見直しができた。

 問題は今後始まる食添表示である。日本だけとされる一括表示等が議論されるだろう。国際調和と消費者のわかりやすさに配慮して進めたいものだ。

4. 外人さん いらっしゃい!

 入管法が成立した。検討不足で拙速とのそしりを免れない。ただし、喫緊の人手不足対策のため、走りながら調整するのは止むなしと考える。上限を設けるというが、そこまで訪日してくれるだろうか。

 また、2018年のインバウンドが3,100万人に達するという。単純に喜んでいる訳にはいかない。観光公害等が指摘される。負の側面を的確に軽減する必要がある。

5. マイクロプラスチックに注目

 マイクロプラスチックによる環境汚染の状況が明らかになってきた。想像以上の深刻さで、すべての魚類に含まれる。プラ・ストローの廃止はパフォーマンスに過ぎない。生活のあり方全体を見直す時期に来ている。レジ袋の有料化に反対意見があるのは理解に苦しむ。

「みんなで変われば、怖くない」ではないか。飲食店の受動喫煙対策も同じである。

6. LL(ロングライフ)豆腐と液体ミルク実用化

 常温保存可能なLL牛乳は欧州で一般的だが、日本では見かけない。同等の技術でLL豆腐を製造可能だが、流通には法律上の制限があった。これが撤廃された。乳児用の液体ミルクも災害時対応等のため、解禁されることになった。

 どちらも食品安全委員会への諮問とパブリックコメントを経ている。厚生労働省の動きが機敏になった印象があり、注目している。

7. ゲノム編集への対応明確化

 ゲノム編集にはいくつかの方法が存在する。外部から遺伝子を導入しない場合、通常の突然変異と区別できない。厚生労働省・環境省ともに、本手法により作成した生物は安全性審査を不要とする方向が決定した。

 妥当であり、海外に比べ出遅れている研究を加速させたい。社会に向けたリスコミも重要で、消費者のメリットを併せてアピールすべきだ。

8. 豚コレラ発生

 岐阜県で豚コレラが複数の養豚場や野生イノシシで発見された。ウイルスの侵入経路は特定されていない。ただし、養豚場の不適切な衛生管理が露見した。1例目では異常届出の1カ月前には侵入していたとされる。

 一つ間違えば、2010年の口蹄疫流行(宮崎県)のように甚大な被害になった可能性がある。関係者は常に緊張感を持って職務に臨んでほしい。

9. 生活のICT化の前進

 人手不足を背景に、コンビニやスーパーの無人化試験が始まっている。すでにレジの支払いは自動化が進んでいる。指紋等による生体認証も実用化されている。

 驚いたのは、「渋谷ハロウィン騒動」である。軽トラ横転の暴徒4名が逮捕されたが、決め手は防犯カメラ捜査だった。警視庁の努力を称賛したいが、少し間違うと「1984年」に描かれた監視社会なる。悪いことをしなけりゃいいのか。

10.「まんぷく」ヒット

 NHK朝ドラ「まんぷく」は高視聴率が続いている。モデルの伝記から流れはわかっているが、毎週ハラハラしている。以前の「マッサン」はウイスキーのマーケティングに注目したが、運だけだった。

 NHKが実在メーカーの話を許容する方向に舵を切ったのなら、「バイオテクノロジーの父」と称される高峰譲吉氏の大河ドラマ化を実現したい。混沌の時代、将来を見通す活眼は重要性を増している。


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About 横山勉 99 Articles
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。