栽培現場ごとの土の事情(4)露地畑(3)

海外の土壌は固まってもほぐしやすい性質の場合が多い。写真は米国インディアナ州で
海外の土壌は固まってもほぐしやすい性質の場合が多い。写真は米国インディアナ州で
栽培現場を7つに分類して説明する
(1) 育苗培土(野菜苗を中心に)
(2) 固形培地によるハウス栽培
(3) ハウスでの地床栽培
(4) 露地畑
(5) 水田での水稲
(6) 水田からの転作
(7) 海外での農業

農業生産を行う現場を7つに分類し、それぞれについて、土のあり方と栽培の実際について説明している。露地畑の3回目。重量のある大型農業機械を使うことで起こる日本に特有の障害を説明する。

大型機械が障害を助長

 前回述べたように、現代の日本の露地畑は、有機物の不足、石灰(カルシウム)と苦土(マグネシウム)の不足、さらに微量要素の不足という事情があります。その結果、露地畑の収量は減っていきます。

 そして、作物が出来ている間は取り続け、出来なくなったら場所を替えるという考え方になっていってしまっているのです。これも替える場所があるうちはよいのですが、使える場所を一通り使ってしまえば、後はさらなる減産に甘んじるしかありません。

 また、大型機械の普及で露地畑の効率は上がったように見えますが、実は機械化が進むとともに、露地畑の土壌は物理的な障害も起こしてしまいました。重い機械が土を踏みつけることによって土の圧密化が進んだのです。これは全国的に見られる現象です。

踏圧に強いヨーロッパの土壌

海外の土壌は固まってもほぐしやすい性質の場合が多い。写真は米国インディアナ州で
海外の土壌は固まってもほぐしやすい性質の場合が多い。写真は米国インディアナ州で

 ここでもヨーロッパの優位性を紹介しなければなりません。たとえばヨーロッパにはグリメ(Grimme)という大型機械メーカーがあります。トラクタやハーベスタ(収穫機)など、戦車か船のように大きな機械をいくつも揃えている会社です。その製品を日本の畑で使うと、確かに効率はよいのですが、間もなく土壌の表面近くがきつく圧迫され、硬い層が出来てしまい、作物は生育が芳しくなくなります。

 ところが、このメーカーのお膝元ヨーロッパでは、そのような困った現象は起こりません。日本とヨーロッパでは、土壌の質が違うのです。

 ヨーロッパの土壌は氷河が削った細かな岩屑が風化した土壌で、しかも日本のような多雨にさらされていませんから風化程度が浅いものです。そのため、日本の土のように湿ると粘るような風ではなく、むしろ砂っぽいのです。そのため、ヨーロッパの土壌は大型機械が踏みつけても、それをまたほぐしてやればもとのふかふかにもどるというわけです。

硬い層が湿害と“連作障害”の原因に

 しかし日本の土は極度に風化しているため、圧密すると硬く固まってしまいます。これをほぐしてやってもヨーロッパでのように簡単には元に戻らず、どんどん硬い層が出来ていきます。

 こうした硬い層が出来ると、雨水が下に下がることができなくなります。これで起こる問題はだいたい2つあります。一つは過剰な水分で作物の根の呼吸が阻害され、湿害を起こします。また、水が下に移動しにくいことから、連作による作物の排泄物が溜まることになり、これが障害の原因物質になります。

 また、こうした硬い層を壊すためにまた大型機械を入れて耕すと、その踏圧でまたしても土を固めてしまうという悪循環にも陥りがちです。

 このように、日本の露地畑はマイナス条件下にあることを押さえる必要があります。今は、産地競争とかブランド化とか言って、生産者はさらなる試練を受けているのですが、根本的に不利な条件にあることを理解しておかなければ、何事もうまくいきません。

関祐二
About 関祐二 101 Articles
農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。