“あたたかな”北海道で明日を見ませんか

北海道の農場
北海道の農場
北海道の農場
北海道の農場

「福島」「香川」「熊本」「三重」「鳥取」「加賀」「伊達」「白石」「北広島」「新十津川」「世田谷」……日本地図を広げて当てずっぽうに地名を挙げたのではない。これらはどれも北海道にある地名だ。それぞれ、入植した人たちが新天地にふるさとの名前を付けた、歴史ある地名である。

入植者たちが拓いた土地

 今回の震災について、多くの北海道民と話をした。そのほとんどが、新規の北海道入植には好意的な意見を持っている。ご存じの通り、北海道は約150年の昔から、“内地”(北海道以外の日本を指す)出身の入植者たちを受け入れてきた実績がある。ただし、この数十年は人口が減り続けているのも事実である。

 そして日本のすべての地域と同じように、北海道も魅力ある土地であることは間違いない。ただ、戦後の著しい成長過程において、首都から遠い地方や農業への投資効率は低かった。だから、都市産業へ移行可能な東京などの大都市に人口が集中したということは、歴史の教科書を見なくても簡単に理解できることだろう。現在発展する多くのアジア諸国、アフリカ諸国での人々の動きを見ても、それはわかる。

 ただ、その首都圏から発せられる情報の中に、あまりにも勘違いしたものが多い。勘違いどころか大間違いなことがあることを、国民は理解しようとしない。

日本の南北問題

 代表的な大間違いは「北は寒い」である。

 今までにも幾度か、首都圏の人たちに「大地震が起きて、東京に住めなくなったらどうするのですか?」と聞いてみたことがある。すると、多くの人が「北海道は寒いんでしょう?」と即答するのだ。

 つまりこう言うことだろう――「大地震」と「北の寒さ」は等価である。いや、等価でなければならないのだろう。

 同じ日本語を基礎として教育を受けているとは思えない発想だ――と考えたこともある。しかし、日本語の成り立ちが雪や寒さと暮らすことを前提としていないようだから、当然のことなのかもしれない。また、尋ねた相手が男性でも女性でも、サラリーマンでも大学教授でも、同じようにこういう答えが返ってくるのだから、教育とは巧みな洗脳と変わらないことの証明のようだ。

 この人たちは、もし自分の子供がボストンのハーバードに行くとなったら、大喜びするだろう。では、同じ緯度の札幌の大学に行くとなったらどのように反応するのだろうか? もし、ニューヨークに転勤が決まったら、きっと夫婦そろって「ヤッター」と飛び上がるだろう。では、同じ緯度の函館ならば? ため息が出るのだろうか。

 韓半島を除いて、北半球のどの国、どの地域を見ても、北の方が豊かである。そのようなことは社会の教科書で学んだはずなのに、なぜか日本では北の豊かさをアピールしないのは、東京を中心とした南の雪がない文化が一番であるとの理論からなのだろう。

北海道は“あたたかい”

 たとえば夏の時間を有効的に使えるサマータイムの実行も依然として進まないのはなぜか。低緯度の南方文化圏中心の考え方では、当然、効率を求めない生き方を推薦することになるのだろう。

 はっきり言って日本人は米国人よりも怠け者である。先日所用で東京へ行ったが、朝7時の品川駅に何人いると思うだろうか? 祝日、休日も米国よりも多い。それでGDPが伸びないなんて当たり前の話だ。

 果たして物理的な“寒さ”は経済活動とどのくらいの関係があるのか、調べた“大先生”は存在するのだろうか。きっと北の優位性が暴露されてしまうことは、南の文化圏の人たちには“不都合な真実”なのだろう。

 それに北海道の家はどの部屋にいても暖かい。灯油もしくは電気を使い、全室セントラル暖房も珍しくなく、この“暖かい北海道”に住む我が家にはエアコンも付いていると話したら驚かれるだろうか。2人住まいの両親の住宅には“南方文化圏東京”からやってくる孫たちのためにエアコンを3台用意してある。寒ければ暖かくすればよいし、暑ければ涼しくすればよい。こんな当たり前の発想は、何か不自然なことだろうか。

 もう一つ、案外知られていないことがある。北海道では自然災害が少ないことだ。最近は吹雪による交通事故が少なくなってきているのも事実だし、台風の影響も本州に比べれば明らかに少ない。降水量は本州の半分だが、雪があるので、干ばつ被害や水道の制限なんて聞いたことはない。

 そして、いちばん自慢したいのは“人柄”だ。実に「バカ」が付くぐらい真面目で正直者という人が多い(100%ではないが……)。人を陥れたり、人をだまそうなんて野郎は大都市に吸収される運命のようだ。妻子が道内のある都市へ出かけてバスに乗った。降りるときに小銭がなくてあわてていたら、ドライバーがなんと言ったか。「今度でいいですよ~」。

土地にこだわらず将来にこだわる

 さて、食に関するサイトなので、もちろん農業にも触れる。その北海道の土地利用はどのようになっているのか?

 北海道では“先祖伝来の土地が云々”という発想は通用しない。その発想を捨てて明日を見た人が開拓に渡ってきたのだ。もちろん、自分たちが今ここに存在しているのは、ご先祖様がいたのだからというのは当たり前だ。しかし、ご先祖様だって長い将来をすべて見て、間違った選択を排除しきれたわけではあるまい。今生きている子供たちの将来を守ろうと思えば、その時代の人なりに最もよい土地を選べばいいはずだ。

 日本国民は、西に行くもの自由、東京、大阪、名古屋などの大都市に行くのも自由だ。そして北海道に行くのも自由である。この選択肢は残されている。来たれ、北海道へ。

 それに、われわれは本州から離れているからと言って、ただ手をこまぬいているわけではない。北海道電力は数十年前から、津軽海峡の下海底ケーブルをとおて緊急時に電力を送り続けている。

宮井能雅
About 宮井能雅 22 Articles
西南農場有限会社 代表取締役 みやい・よしまさ 1958年北海道長沼町生まれ。大学を1カ月で中退後、新規就農に近い形で農業を始め、現在、麦作、大豆作で110ha近くを経営。遺伝子組換え大豆の栽培・販売を明らかにしたことで、反対派の批判の対象になっている。FoodScience(日経BP社)では「北海道よもやま話」を連載。