2014年食の10大ニュース[7]

農業に関する話題をまとめた。

  1. 米価が歴史的暴落
  2. 国産子実トウモロコシ栽培面積150ha超
  3. 国際農業機械展in帯広が8年ぶりに開催
  4. 2月の大雪で施設園芸等に大被害
  5. イオンがコメ大規模生産に参入を発表
  6. JA全中支配廃止案に必死のあがき
  7. TPP交渉の膠着状態続く
  8. バター不足
  9. 食品表示基準案がパブコメに供される
  10. 鳥インフルエンザ

1. 米価が歴史的暴落

 農水省が発表した2014年産米の相対取引価格・数量(2014年9月、速報値)は、全銘柄平均価格が12,481円/60kg。前年より2,000円~3,000円下落し、ついに13,000円を切った。

 すでに零細の副業的農家を中心に相当な数の農家の間で「コメは赤字で作るもの」が常識化していたが、主業農家、準主業農家にとっても抜本的かつ継続的なカイゼンが待ったなしに。

 日本農業も市場経済の中で行われる健全なビジネスの一つに脱皮する、その契機となることを祈りたい。

2. 国産子実トウモロコシ栽培面積150ha超

 子実トウモロコシは、野菜であるスイートコーンとは違って穀物として利用するトウモロコシ。世界で最も多く生産され、日本の食品産業にとっても最も重要な穀物でありながら全量輸入という、世界でも“あり得ない”日本の子実トウモロコシ事情。

 北海道・長沼町の農業経営者柳原孝二氏が国産子実トウモロコシ生産を成立させるというアイデアを提起し、農業技術通信社(東京都新宿区、昆吉則社長)が水田で子実トウモロコシ生産を行うことで経営改善と食料自給率問題の突破をと呼びかけている。

 これに共鳴して子実トウモロコシ生産を開始した圃場が、2014年全国で150haを超えた。日本の気候風土に合わせた実践的な栽培技術蓄積の動きが本格化したという意味で大きなエポックだ。

3. 国際農業機械展in帯広が8年ぶりに開催

 最新の農業機械、技術が展示される通称「十勝博」は4年に1回開催されてきたが、2010年は口蹄疫発生により翌年に延期となり、その2011年は東日本大震災で中止となった。したがって今年の第33回は2006年以来8年ぶりの開催。

 この間、高齢化等で撤退する農家の営農を肩代わりする農業生産者・農業生産法人が全国的に増加。大面積に高速作業で対応する大型機械等に、全国の生産者らが「待ってました」とばかりに集まり、熱心に性能を調べていた。

4. 2月の大雪で施設園芸等に大被害

 平成26年豪雪は各地に大きな被害をもらたしたが、ビニールハウス、ガラスハウス、果樹、格納庫など農業生産分野の被害も大きかった。

 農業共済は一定面積以上の水稲、陸稲、麦は強制加入、畜産でも加入率が高いというが、野菜や果樹については加入しないケースも多い。異常気象への物理的対策とリスク回避について考えさせられるつらい出来事となった。

5. イオンがコメ大規模生産に参入を発表

 イオンの子会社イオンアグリ創造は埼玉県羽生市と「農業振興に関する協定」を締結。2015年から農地中間管理機構を活用したコメ生産(11ha)を開始する。

 今後、イオンだけでなく流通・小売各社の農業生産はさらに本格化していくだろう。

6. JA全中支配廃止案に必死のあがき

 6月、首相の諮問機関・規制改革会議は、JA全中による単協の経営への関与を減らすよう抜本的に見直すこと、単協は株式会社化を目指すことなどをまとめた答申を提出。

 これに対してJA全中は自らの改革案を公表し、単協の指導、監査権限などを従来どおり維持する方針を打ち出して真っ向から対立。

 安倍政権としては、JA全中は経団連のように他の業界団体と同じ一般社団法人への転換をめざす方針。

7. TPP交渉の膠着状態続く

 日米は2015年1月上旬にも事務レベル協議を再開と伝えられるが、農産物や自動車で膠着状態が続いており、交渉参加12カ国の合意にこぎ着けるのは容易ではない。

 耕種に限って言えば農業で今さら困ることはなさそうにも見えるが、何を守ろうとしているのか。意外と、両国ともに、妥結することよりも交渉していることに意義があるのかもしれない。

8. バター不足

 酪農・乳業のシステムに市場原理が働いていないこと、誤ったコントロールがされていることが露呈した。

9. 食品表示基準案がパブコメに供される

 省庁ごとにばらばらに管理されていたルールを大統合する食品表示法での、具体的な表示基準案がまとめられ、パブリックコメントに供された。施行の期限まであと半年。

 フードチェーンの起点の一つである農業にとっても重要な話題だが、食品表示法自体を知らない農家もけっこういるのが残念。

10. 鳥インフルエンザ

 宮崎県に次いで山口県でも鳥インフルエンザに感染した鶏が発見された。ともに高病原性のウイルスで殺処分が行われている。

 効果的な予防には国際的な連携が必要だ。

(情報協力:農業技術通信社)

齋藤訓之
About 齋藤訓之 298 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。東京栄養食糧専門学校非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →