冷燻魚のリステリア症リスク

No.01(2024.01.10)

スモークサーモンの料理(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。英国当局はリステリア症の高リスク集団に対し、RTE(レディ・トゥ・イート)の冷燻魚や保存加工魚の喫食を避けるよう助言している。

注目記事

【英国】燻製魚製品のリステリアで助言

 英国食品基準庁(UK FSA: Food Standards Agency, UK)およびスコットランド食品基準庁(FSS)により、そのまま喫食可能な(ready-to-eat)燻製魚製品によるリステリア症に関する合同リスク評価が発表され、妊婦および免疫機能が低下している人は重症化リスクが高いことが示された。

 この結果を受けて UK FSA および FSS は、当該高リスク集団に対し、ready-to-eat 冷燻魚や保存加工魚の喫食を避けるよう助言を発表した。対象製品にはスモークサーモン、スモークトラウト、グラブラックスなどが含まれる。

 今回発表された最新の助言の対象は、妊婦および免疫機能が低下している人であり、これには癌・糖尿病・肝疾患・腎疾患などの特定の基礎疾患を有する人や免疫抑制剤の投与を受けている人などが含まれる。重症化リスクの高さは基礎疾患の有無によると考えられる。リスクは加齢によっても上昇し、妊娠中も高くなる。

 スモークサーモンやスモークトラウトなどの冷燻魚およびグラブラックスなどの保存加工魚は、製造工程において十分に加熱されておらず、リステリア菌が死滅せずに生残する可能性があるため、感染リスクが比較的高い。

 十分に加熱調理した燻製魚は喫食しても安全であり、調理の直後でも、また調理後に冷蔵庫で冷却し冷えた状態でも提供可能である。

 加熱調理するパスタやスクランブルエッグなどの料理に冷燻魚を使用する場合は、冷燻魚を最初に加熱することが重要である。食事の準備中に軽く温めるだけでは、リステリア菌を死滅させるために十分な高温まで燻製魚を加熱することはできないためである。

 製造時に加熱処理が施されている缶詰などの燻製魚製品は、再加熱しなくても安全に喫食できる。これらの缶詰製品は、製造時にリステリア菌を死滅させるために十分な高温まで加熱されている。

※編集註:グラブラックスは北欧の魚料理の一つ。生のサケを調味料、香草、酒などでマリネする。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.01(2024.01.10)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202401m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 葉物野菜に関連して複数州にわたり発生したリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2023年6月13日付最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:Malichita ブランドおよび Rudy ブランドのカンタロープメロンに関連して発生しているサルモネラ(Salmonella Soahanina、S. Sundsvall および S.
Oranienburg)感染アウトブレイク(2023年12月22日付更新情報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. リステリア症 -2021年次疫学報告書

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1.「EC 委任規則(Commission Delegated Regulation)(EU)2018/772」に則して2023年に提出されたエキノコックス(Echinococcus multilocularis、多包条虫)サーベイランス報告書の年次評価

【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. そのまま喫食可能な(ready-to-eat)燻製魚製品のリステリア汚染に関するリスク評価を受けて英国食品基準庁(UK FSA)およびスコットランド食品基準庁(FSS)が高リスク集団向け助言を更新

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(31)(30)