牛由来食品に感染性因子あるか

No.04(2023.02.15)

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国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所ほかは、ドイツがん研究センターが発表していた牛由来の食肉や乳製品に存在するとされる新しい感染性因子(BMMF)について再評価を実施した。その結果、BMMFによる健康被害はいずれの年齢の消費者においても考えにくいとされた。

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【ドイツ】牛由来の食肉や乳製品に新しい感染性因子というのは本当か

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)およびMax Rubner研究所(MRI)は、先にドイツがん研究センター(DKFZ)が発表していた「BMMF」(Bovine Meat and Milk Factors)と呼ばれる新しい感染性因子の問題について再び評価を実施した。

 2019年2月、ドイツがん研究センター(DKFZ)は、欧州のウシに由来する食肉や乳製品に存在するとされる「BMMF」(Bovine Meat and Milk Factors)という新しい感染性因子に関する知見を発表した。それによると、これらの食品の喫食を介して乳幼児が早い時期にBMMFを摂取すると、腸や乳房組織の炎症の原因となる可能性や、その周辺組織のがんの発生が促進される可能性があるというのであった。

 BfRおよびMRIは、その時点ではデータが不十分であり、BMMFによる健康リスクの評価は不可能であるという共同声明を発表した。その後、さまざまな研究グループがBMMFの研究を行ったことから、BfRおよびMRIはこれを受けて2019年4月に再評価を実施した。

 がんの所見が認められるのは、実際に感染が成立してから数十年後である。大腸がんおよび乳がんの最近の患者の地理的分布にもとづき、DKFZは欧州のウシ由来の乳や食肉製品の喫食との関連を疑い、乳幼児にはあまり早い時期に牛乳を与えるべきでないという結論を出した。

 BMMFが新しい種類の病原体であるとする仮説は、以前および今回のいずれの研究でも裏付けられていない。これらの研究結果で示されているのは、既知のDNA配列の変異型や既に発表されているDNA配列である。現時点では、BMMFがヒトおよびその他の生物に健康被害をもたらすことを示すエビデンスはない。また、最近の様々な研究で、BMMF が欧州のウシ由来の乳および食肉だけでなく、動物・植物由来の他の多くの食品からも検出されることが示されている。

 このように、現在の知見は、BMMFが欧州のウシおよびウシ由来の食品のみに見られる「新規の病原体」であるとするDKFZの仮説と一致しない。大腸がんおよび乳がんの最近の患者の地理的分布は、特定の食品の喫食とヒトの一部のがんの発生との間に間接的関連がある可能性を表していると解釈できるが、因果関係を示してはいない。

 これまでの研究結果および文献にもとづくと、食肉および牛乳には特有の微量栄養素が含まれていることから、BfRおよびMRIは、乳幼児にこれらを与えることを引き続き推奨している。生後1年間に特定の食品を避けることは、アレルギー予防の観点からも推奨されない。

 現時点で得られているすべてのデータを考察してまとめると、食肉・乳製品・その他の食品に含まれているBMMFによる健康被害は、いずれの年齢の消費者においても考えにくい。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.04(2023.02.15)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202304m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 牛ひき肉に関連して発生した大腸菌 O157:H7感染アウトブレイク(2022年10月28日付最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 国外旅行に関連していないサイクロスポラ感染に関する調査(2022年10月14日付最終更新)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. エキノコックス症 ―2018年次疫学報告書
2. 欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)の抗菌剤耐性 ― 欧州抗菌剤耐性サーベイランスネットワーク(EARS-Net)の2020年次疫学報告書

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 食品安全の推進:「ONE – Health, Environment & Society – Conference2022」会議からの戦略的提言

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1.「BMMF(Bovine Meat and Milk Factors)」に関する新しい知見

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(04)(03)