キノコ採取に関する重要な助言

No.19(2022.09.14)

絵・いらすとや

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。WHOはマイクロプラスチックに関して食品や空気中も含めた包括的な暴露による健康リスクに関する報告書を発表したが、現時点ではデータが不足しており、ヒトに対する暴露評価やリスク評価を行うことができないとしている。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所は、キノコ採取に関する重要な助言を紹介している。

注目記事

【WHO】ナノおよびマイクロプラスチック粒子の食事および吸入暴露とヒト健康への意味

 世界保健機関(WHO)は、2019年8月に公表した飲料水中のマイクロプラスチックに関する報告書に続き、食品や空気中も含めた包括的な暴露による健康リスクに関する報告書を発表した。2021年12月までに入手可能なデータを対象にしている。総合的な結論では、現時点では必要とされるデータが不足しており、ヒトに対する暴露評価やリスク評価を行うことができないとしている。

※ポイント:経口と吸入暴露によるリスクの可能性については、2021年に英国毒性委員会(COT)が、毒性や体内動態の情報がなく適切な分析法や標準物質もないことから評価できないと結論していました。今回のWHOのレビューでも同様の結論に至っています。とくに、体内へ取り込まれると考えられる10μmより小さい粒子の定量とキャラクタリゼーション(※1)に係わる問題解決が重要だと指摘しています。

【EC】食品中のパーフルオロアルキル化合物の管理について

 欧州委員会(EC)は、EU加盟国と食品事業者が協力して食品および飼料中のパーフルオロアルキル化合物(PFASs)のモニタリングを行うことを促す委員会勧告とサンプリングおよび分析法に関する委員会実施規則を発表した。

※ポイント:モニタリング期間は2022年から2025年で、欧州食品安全機関(EFSA)がグループ耐容週間摂取量(TWI)を設定した4つのPFASsが主な対象です。さまざまな食品を広く調査することに加えて、家畜への移行を考慮して飼料中のPFASsも可能なら測定することを勧告しています。EUでは動物由来食品についてこれら4つのPFASsの最大基準値の設定が進められているようなので、近いうちに発表されるかと思います。

【BfR】キノコ:間違えると致命的

 ドイツでは自ら採取したキノコを食べた後に頻繁に中毒が発生しており、連邦中毒センターはキノコについて年間3,000以上の問い合わせに対応している。国内で人気のある食用キノコはハラタケ(Agaricus campestris)や食用のベニタケ属などである。採取者はよく食用キノコと有毒なタマゴテングタケ(Amanita phalloides:通称 death cap)を間違えている。タマゴテングタケに含まれる毒素は肝臓障害を誘発し、ごく少量を食べただけで致命的となるほど毒性が高い。ドイツで致命的となったキノコ中毒の少なくとも80%はこのキノコが原因と推定している。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)がキノコ採取に関する重要な助言を紹介する。

※ポイント:日本もキノコ狩りの季節となり、有毒なキノコとの誤認には注意が必要です。タマゴテングタケの毒性分はアマニタトキシンというペプチドの毒素で、日本では同類の毒成分を含むドクツルタケ(Amanita virosa)やシロタマゴテングタケ(Amanita versa)による死亡事例が報告されていますので注意しましょう。

(安全情報部第三室)

※編集部註:キャラクタリゼーション(characterization)は、物質の特徴や性質をはっきりさせること。特性評価。

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.19(2022.09.14)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202219c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. ナノ及びマイクロプラスチック粒子の食事及び吸入曝露とヒト健康への意味
2. 国際鉛中毒予防週間2022
3. イベント
4. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】
1. Codex

【EC】
1. 食品中のパーフルオロアルキル化合物の管理について
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 第三国伝統食品としてのオニバスの種子の煎ってはじけたカーネルの通知に関する技術的報告書
2. 農薬関連
3.(生態)毒性試験におけるヒストリカルコントロールデータの報告・使用・解釈方法に関する準備作業
4. 飼料添加物関連

【FSA】
1.2022年9月の FSA 理事会ペーパーが公表される

【FSS】
1. スコットランドはパンと小麦粉規則の更新に関する協議を行う
2. Beat the Squeeze – 健康を維持しながらお金を節約する

【DEFRA】
1. 胎児の脳と脊髄の病気を予防するために小麦粉に葉酸添加

【COT】
1.2022年9月6日の会合

【ASA】
1. 助言
2. ASA の健康的食環境に関するウェールズ政府の相談への回答
3. ASA のエネルギードリンクに関するウェールズ政府の相談への回答
4. ASA 裁定

【BfR】
1. キノコ:間違えると致命的
2. 世界的に連携:消費者の健康保護を強化するための研修

【RIVM】
1. ドルドレヒト、パペンドレヒト、スリードレヒト、モーレンランデンの自治体の菜園からの菜園作物における PFAS のリスク評価
2. Salvia divinorum(を含むハーブ製品)のリスク評価
3. 地表水の PFAS リスク限度値. EFSA の健康影響に基づくガイダンス値から導出した地表水濃度基準

【FSAI】
1. 次回の Breakfast Bite:保存可能期間

【FDA】
1. 違法な健康製品に対処するための政府全体によるアプローチ
2. FDA は特定の種類の表示を含む動物用食品の規則に関するバーチャルリスニングセッションを発表する
3. 消費者向け情報
4. 警告文書

【EPA】
1. EPA は人々の健康を守るためにある種の PFAS 化合物をスーパーファンド法に基づく有害物質に指定
2. EPA は農薬製品に認可されているある種の PFAS の使用中止を提案
3. EPA と日本環境省は二国間環境協力継続について共同声明を発表
4. EPA はコロラド州 Lakewood でエチレンオキシドの更新リスクを発表する地域会議を行う

【USDA】
1. ホワイトハウス飢餓、栄養、健康に関する会議-もうすぐ!
2. APHIS は最初の規制状態レビュー回答を発表:Norfolk 植物科学の紫トマト

【NIH】
1. スクープ-2022年秋

【FTC】
1. FTC の報告書はフレーバー付き使い捨て電子タバコとメンソール電子タバコカートリッジの販売が劇的に急増したことを強調する

【York Region】
1. ヨーク地域公衆衛生局は食品中の毒素の可能性を調査している

【FSANZ】
1. 食品基準ニュース
2. 食品基準通知

【TGA】
1. 安全性助言:ペニソールカプセル(アーユルベーダ医薬品)

【MPI】
1. プレスリリース
2. 警告

【香港政府ニュース】
1. 食品事故報告
2. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 食薬処、安心な食事とバイオ·デジタルヘルス革新成長支援などのための来年度予算案
6,694億ウォン編成
3. 効率的な HACCP 管理のためにハザード分析情報の提供を拡張
4. 畜産物に使用する動物用医薬品のリスク評価安全情報を公開

【SFA】
1. 変革への道:養豚を終えたシンガポールの養豚家たち
2. 食品取扱者のマスク又はマウスシールドの着用に関する注意喚起について
3. リコール情報

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から11件
・ProMED-mail1件
・カナダ薬物使用と依存センター(CCSA)