内分泌攪乱物質の影響を検討

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.05(2013.03.06)を発表した。

注目記事

【WHO】画期的な国連報告でホルモン攪乱物質へのヒト暴露の影響を検討

 国連環境計画(UNEP)および世界保健機関(WHO)の新しい報告書「内分泌攪乱物質の最先端科学 State of the Science of Endocrine Disrupting Chemicals」において、ホルモン系への攪乱影響が検討されていない多くの合成化学物質に、意味のある健康影響の可能性があることが報告された。この共同研究では、内分泌攪乱化学物質(EDCs)と特定の疾患との関連を理解するためにさらなる研究が必要だとしている。

※ポイント:内分泌攪乱物質の評価を難しくしているのは、有害影響の判断基準が明確に決められていないということです。つまり、内分泌攪乱物質の影響試験をしたとしても、どのような変化が見られた場合に有害影響があると言えるのか定義されておらず、実際にはヒトの疾患につながらないような変化でさえ有害影響と見なされてしまう可能性があります。このUNEP/WHOの報告書とは別件で、欧州食品安全機関(EFSA)が、内分泌攪乱を判別するための科学的基準と、現在採用されている試験方法の適用性についての科学的意見を今月中に公表する予定です。

【RASFF】食品および飼料に関する緊急警告システム

 EU加盟国で緊急性が比較的高いと判断された食品および飼料に関する基準違反等が定期的に報告されている。今回報告されたフォローアップ用情報の多くは、牛肉製品中のウマDNAの検出に関する報告である。

※ポイント:RASFFに報告された事例を見ると、牛肉製品からウマDNAが検出された問題の影響がいかに広いか驚かされます。この問題はまだ拡大しそうですが、欧州委員会が要請した各国の検査結果が4月に報告される予定ですので、それでやっと全体像が見えてくるかもしれません。また、FSA主任科学者がDNA検査についてわかりやすく説明している記事もオススメです。

【FSANZ】ファクトシート:清涼飲料のベンゼン

 2006年に清涼飲料中でベンゼンの生成が確認されて以降、世界中で清涼飲料業界が生成の原因および解決法について検討してきた。オーストラリアでは、オーストラリア飲料協議会(ABCL)が事業者における飲料中ベンゼン対策の中心となり、国内での検査結果をオーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)へ毎年報告している。これまで報告された検査結果によると、アクションレベル超過検体の数は年々減少し、2011年はゼロであった。これを受け、ABCLからFSANZへの報告頻度を2013年以降は2年毎に変更した。

※ポイント:国際清涼飲料協議会からガイダンス文書が公表され、飲料業界の努力により現在では飲料中のベンゼンはかなり低減化されているようです。発見当初は大騒ぎになりましたが、食品中汚染物質と言っても、ベンゼンやアクリルアミドのように加工段階の対策である程度低減化できるものは良い方です。より問題なのは、環境中に存在するカドミウム、ヒ素およびメチル水銀などのように、原材料そのものに存在し簡単には除けないものについて、どの程度なら許容できるかの見極めの判断でしょう。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(化学物質)No.05(2013.03.06)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2013/foodinfo201305c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 画期的な国連報告でホルモン攪乱物質へのヒト暴露の影響を検討
2. 最近のLancet報告に対するWHO/IARC共同声明
3. 福島原子力発電所事故の包括的報告書が健康リスクの詳細を記す

【EC】
1. 食品獣医局(FVO)査察報告書:スウェーデン、トルコ、アルバニア、チェコ
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. FOCUS地下水ワーキンググループの報告書(FOCUS, 2009)に関する科学的意見:低層の評価
2. 香料グループ評価
3. 飼料添加物関連
4. 内分泌活性物質のヒト健康と環境ハザード-EFSAは関係者と会合
5. EFSAの科学者は食品と飼料の添加物評価で協力を強化
6. アスパルテームのウェブによる意見募集のフォローアップ会議
7. 作業計画2013

【FSA】
1. 牛肉製品へのウマ肉混入について
2. FSA主任科学者Andrew Wadgeのコメント

【MHRA】
1. 香港衛生署が重金属を含む漢方薬に警告

【HSE】
1. HSAは重大な有害反応を引き起こす海外で購入した異物混入健康製品について警告

【FSAI】
1. 牛肉製品へのウマ肉混入について

【EVIRA】
1. ウマ肉混入製品を回収

【FDA】
1. 詐欺についての6つの警告:健康詐欺の犠牲にならないように
2. 警告文書(2013年2月19日、26日公表分)

【NTP】
1. OHATの系統的レビュー推進
2. NTPニュースレター:環境因子

【EPA】
1. 2013年授粉媒介者サミットとオンラインセミナー

【USDA】
1. USDAはバイオテクノロジー規制申請及びその他の対応について発表

【FSANZ】
1. ファクトシート:清涼飲料のベンゼン
2. 食品基準通知
3. 主任科学者のデスクから 食品添加物

【APVMA】
1. 化学物質規制機関はフェナミホスへの対応を検討
2. あなたの庭の小屋にはどんな物質がある?リスクを知ろう

【TGA】
1. 安全性助言GNYオーストラリア製品:MSV ストロングバージョン、ESV エクストラストロングバージョン、 RL Rapid Lossソフトゲルカプセル

【MPI】
1. DCD更新:検査で製品中のDCD分布予想確認

【香港政府ニュース】
1. 漢方薬リコール
2. 乳児用調整乳の輸出を制限
3. 8食品が安全性検査に不合格

【KFDA】
1. 国内流通食品中のカビ毒の安全管理を強化!
2. 食品の異物混入、毎年減少
3. ベンゾピレン(Benzopyrene)基準超過「唐辛子種の油」の回収および廃棄措置

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED)ウマ肉 ヨーロッパ(第6報):コントロール、食品安全、更新
・(ProMED)ニコチン中毒、子ども-米国(シカゴ)
・(EurekAlert)肉の同定に問題が?答えはバーコードをチェックすること