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FFSはCVSと組めないか

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「セブン-イレブン」がレジ横でのドーナツの展開に着手して8カ月が経ちます。8月末までに全店展開を予定しているとのことです。しかし、まだ改善点がいくつかあるように思います。

 まずオペレーションがよくないようです。具体的にはショーケースから取り出しにくく、提供がスタッフの負担になっているように観察されます。というのも、ショーケースの中にドーナツをかなり起こした状態で収納していますが、ここから商品を取り出すためにドアを開けた後、棚板を手前に引き出すという動作が余計に必要です。しかも棚板から商品をつまみ出すときに、ものによっては肩ほどの高さかそれ以上に腕を上げており、これが難しい作業のようです。また棚板から商品が横にずれて落ちることを気にしている様子も見受けられます。

 こうした収納は、小さなショーケースの中に多く詰め込むこととお客への視覚効果を狙ってのことと考えられますが、棚板の構造や機構には改善の余地があるでしょう。中華まん、各種のフライ、おでん等の提供時間と動作の数を比較すれば、課題があることはすぐにわかるはずです。

 もし、「セブン-イレブン」でのドーナツ提供がセブンカフェとのシナジーを狙ったものであれば、これはむしろセブンカフェの足を引っ張るものになっている可能性も考えるべきではないでしょうか。なぜなら、セブンカフェは通常は容器を渡せばスタッフが行うべき提供作業は終了で、これの検品は食品よりも簡単で提供の動作とともに一瞬で終わり、その動作自体も簡単なものです。この軽快な提供による効率を、ドーナツ提供の鈍重さが台無しにしている可能性を考えるのです。

 今ひとつの改善点は官能面のことなので、筆者の主観が入っていることをご了承いただきたいのですが、味覚について品質に不満が残ります。最も強くそれを感じるのはオールドファッションの硬度です。複数店舗で何度か買い求めましたが、概してクッキーに近いと感じるほど硬くドライです。本格提供前の店頭で一口サイズにカットしたサンプルを食べたときにこれを感じ、それは正規のショーケースでの保管ではなく紙ナプキンを敷いたカゴに置いていたためだと思っていましたが、実際の商品でもあまり変わらないとわかって、これには少し驚きました。

 あの硬さが好きな人が多いことが統計的にわかっているのであれば問題はないので、あくまで筆者個人の感想ですが、筆者の場合はあれを食べて「ミスタードーナツ」に行きたくなりました。また、以前から製パンメーカー製のオールドファッションがパンコーナーに並んでいることがありましたが、それを上回る価値が提供されるようになったとはどうも思えないのです。原材料と調理工程に、まだ先行チェーンに追いつけていない部分があるのではないかと感じます。

 そこで思い出すのは、最近の「セブン-イレブン」のPB商品の多くが、その分野のトップブランドを、実際にそれを製造しているトップメーカーが製造するもので、形状やパッケージを「セブン-イレブン」仕様に変えたものであるということです。これは、「セブン-イレブン」の圧倒的な店舗数が実現した価値づくりであり、チェーンストアの勝利の一つでしょう。メーカーにとっても広告費等の販管費を抑え得るので、廉価提供してもWin-Winの関係は保ち得るのです。

 それらに比べれば、「セブン-イレブン」の現在のドーナツはあまりにもジェネリック的であり、独自の価値創造には至っていないように感じます。同チェーンのおでんの完成度を考えると、進歩はこれからというところでしょう。

 こんな手もあったのではと考えるのは、日本でのドーナツのトップブランドである「ミスタードーナツ」から商品の供給を受けるというものです。つまり、ドーナツについては「ミスタードーナツ」を母店とし、「セブン-イレブン」をサテライト店とするわけです。近隣に店舗があるエリアであれば既存店が商品の増産で対応し、既存店のキャパシティを超えるエリアや空白地帯では「ミスタードーナツ」の新タイプとして製造専門店舗を出店させることが考えられます。これは一等地である必要はないので出店コストは抑えられます。これを進める過程で「ミスタードーナツ」も新たな技術・ノウハウの蓄積が期待でき、両チェーンの成果であるより進んだ価値を消費者が享受することになるでしょう。

 同じことは「ケンタッキーフライドチキン」でも考えることができます。「ケンタッキーフライドチキン」は揚げた後で油切りのために一定時間ホールドしてから提供が許されるように定められています。このホールド時間を使って配送を行えば、店舗に着荷した段階を最高の品質の状態とするように設計することもできます。店舗規模や消防の基準などからフライヤーを置けない「セブン-イレブン」もありますが、これであれば全店提供も容易となるでしょう。

※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

執筆者

齋藤訓之
齋藤訓之
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。「FoodScience」(日経BP社)では「食の損得感情」を連載。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ → ※齋藤訓之のブログ →