「ゴッドファーザー」三部作の中の食べ物

「ゴッドファーザー Part II」(1974)。若き日のビトー・コルレオーネとソニー、フレド、マイケルの三兄弟(絵・筆者)
「ゴッドファーザー Part II」(1974)。若き日のビトー・コルレオーネとソニー、フレド、マイケルの三兄弟(絵・筆者)

「ゴッドファーザー」(1972)はアメリカの裏社会に君臨するイタリア・マフィアの抗争を描いたマリオ・プーゾのベストセラーをフランシス・フォード・コッポラが監督した映画史に残る名作である。一作目のヒットによって「Part II」(1974)、「Part III」(1990)も製作され三部作となった。イタリア系移民の家族がストーリーの中心なので、劇中ではイタリア料理をはじめとする食べ物が多数登場するが、今回はその中でも印象的なものを取り上げる。

「ゴッドファーザー」の肉料理

「ゴッドファーザー」(1972)。レストランでの銃撃シーン(絵・筆者)
「ゴッドファーザー」(1972)。レストランでの銃撃シーン(絵・筆者)

 記念すべき第一作では、ファミリーの“ドン”ビトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)が、果物屋の屋台で家族のためにオレンジを買っている最中に、敵対するソロッツォ(アル・レッティエーリ)一味に狙撃され重傷を負う。

 それまで“家業”を嫌って距離を保ってきた三男マイケル(アル・パチーノ)は、父を救いたい一心でソロッツオと彼の後ろ盾である悪徳警官マクラスキー警部(スターリング・ヘイドン)との交渉のためブロンクスの小さなイタリアンレストランへと向かう。

 仔牛の肉料理がメインディッシュのテーブルでのソロッツオとマイケルの息詰まるやり取りに、給仕の動きや傍らで料理を食べ続ける警部の立てる音がアクセントとなって緊迫感を盛り上げる。そしてその緊張は、マイケルがトイレに隠しておいた銃で2人を射殺し、店を出て行くまで続くのである。

「ゴッドファーザー Part II」のバナナ・ダイキリ

「ゴッドファーザー Part II」(1974)。若き日のビトー・コルレオーネとソニー、フレド、マイケルの三兄弟(絵・筆者)
「ゴッドファーザー Part II」(1974)。若き日のビトー・コルレオーネとソニー、フレド、マイケルの三兄弟(絵・筆者)

 シリーズ二作目では、若き日のビトー(ロバート・デ・ニーロ)がシチリア島からアメリカに渡ってニューヨークのマフィアとしての地位を築いていくまでの成功譚と、父の死によってドンの座を継承したマイケルの苦闘が時代を越えて対照的に描かれる。

 1959年、息子アンソニーの初めての聖体拝領のパーティに出席したマイケルが、その夜寝室で何者かに銃撃されるという事件が起こる。かろうじて難を逃れた彼は、マイアミのユダヤ系ギャングの大ボスで事件の黒幕と疑うハイマン・ロス(リー・ストラスバーグ)と接触して暗殺者を手引きした裏切者を探るが、それは意外にも兄フレド(ジョン・カザール)であることがわかる。

 キューバの首都ハバナのオープンバーでの兄弟同士の会話で、フレドは自分より聡明なマイケルがファミリーで優遇されてきたことを妬んでいたと告白する。フレドが注文するバナナ・ダイキリというバナナの入った甘口のカクテルが、彼の弱さの象徴のように映る。

 キューバ革命のどさくさに紛れて離ればなれになった兄弟は後に和解するが、フレドには悲しい末路が待っていた……。

「ゴッドファーザー Part III」のカンノーロ

「ゴッドファーザー Part III」(1990)。年老いたマイケルと娘メリー、ソニーの息子ビンセント(絵・筆者)
「ゴッドファーザー Part III」(1990)。年老いたマイケルと娘メリー、ソニーの息子ビンセント(絵・筆者)

 シリーズ最終作では前作から20年後のコルレオーネ・ファミリーのその後が描かれる。

 マイケルは多額の寄付によってローマカトリック教会との関係を深め、その投資会社の経営権を得ることで合法ビジネスへの転換を図っていた。しかしそれはライバルであるドン・アルトベッロ(イーライ・ウォラック)の反感を買い、再び抗争が勃発する。

 病に倒れたマイケルに代わり、ファミリー内では彼の妹コニー(タリア・シャイア)と兄ソニー(ジェームズ・カーン)の遺児ビンセント(アンディ・ガルシア)が実務を取り仕切るようになった。そして、マイケルの息子アンソニー(フランク・ダンブロシオ)はオペラ歌手としてデビューし、そのシチリア公演の開幕に合わせて殺戮の火蓋が切って落とされる。

 このとき、公演に訪れたゴッドファーザー(名付け親)のアルトベッロを毒殺するためにコニーが彼に手渡したのがカンノーロというシチリア名産の焼き菓子である。これはクリームを小麦粉の生地で円筒状に包み込んだもので、第一作でファミリーの幹部クレメンザ(リチャード・カテラーノ)が裏切者のポーリー(ジョン・マルティーノ)を殺害する場面でも使われていた。

 本作で登場するマイケルの娘メリーの名は、第一作でマイケルが、恋人で後に妻となるケイ(ダイアン・キートン)と観に行った映画「聖メリーの鐘」(1945)のイングリッド・バーグマンの役名に由来する。

 そして、このメリーを演じたソフィア・コッポラは、フランシス・フォード・コッポラ監督の娘であり、第一作のラストの洗礼式の場面で、マイケルがゴッドファーザーとなるコニーの赤ん坊(男の子)役でも出演している。彼女自身も、「ロスト・イン・トランスレーション」(2003)や「マリー・アントワネット」(2006)、 「SOMEWHERE」(2010)といった作品の監督として高い評価を受けている。

 また、音楽をコッポラ監督の父カーマイン・コッポラが担当するなど、本シリーズはコルレオーネ・ファミリーの映画であると同時に、イタリア系アメリカ人であるコッポラ・ファミリーの映画とも言えるだろう。

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映画ウォッチャー 埼玉県出身。子供のころからSF映画が好きで、高校時代にキューブリックの「2001年宇宙の旅」を観たところ、モノリスに遭遇したサルの如く芸術映画に目覚め、国・ジャンルを問わない“雑食系映画ファン”となる。20~30代の一般に“青春”と呼ばれる貴重な時をTV・映画撮影現場の小道具係として捧げるが、「映画は見ているうちが天国、作るのは地獄」という現実を嫌というほど思い知らされ、食関連分野の月刊誌の編集者に転向。現在は各種出版物やITメディアを制作する会社で働きながら年間鑑賞本数1,000本以上という“映画中毒生活”を続ける“ダメ中年”である。第5回・第7回・第8回の計3回、キネマ旬報社主催の映画検定1級試験に合格。第5回・第6回の田辺・弁慶映画祭の映画検定審査員も務めた。