ロス削減のための新しい基準づくり

これはさすがにB品とも言えないか(ニューヨークのファーマーズ・マーケット/撮影:編集部)
これはさすがにB品とも言えないか(ニューヨークのファーマーズ・マーケット/撮影:編集部)
これはさすがにB品とも言えないか(ニューヨークのファーマーズ・マーケット/撮影:編集部)
これはさすがにB品とも言えないか(ニューヨークのファーマーズ・マーケット/撮影:編集部)

外食のバイヤーが農業生産者と取引する場合、“ズレ”を感じることがしばしばある。厳しく守っている選果基準はその一つ。目線を変えれば、利益と新しい価値が見えてくる。

曲がったキュウリではだめなのか

「食料自給率アップ」や「ロス削減」が叫ばれて久しいが、本当に必要なことは何だろうか?

 現行の市場での野菜の選別基準は戦後にスーパーマーケットが躍進したときに、箱詰めしやすく効率よく輸送できるようにと、スーパーマーケットの店頭で見栄えがいいようにと決めた基準であり、1950年代から基本的に変わっていない。たとえば日本のスーパーで、キュウリはまっすぐなものでないといけない。

 都市の消費者は、曲がったキュウリを見る機会がほとんどない。まっすぐなキュウリを作るために、実際の生産現場で摘果したり、防除したりという手間をどのくらいかけるかも、どのくらいの選別を行なうかも、考えることはほとんどない。

 しかし、その手間や資材のすべてはコストにつながっていく。そのコストはかけるべきものなのかどうか。本当に必要なことを棚卸ししなければならないと、私は考える。

 先日、近所のスーパーで「曲がったキュウリ」とPOPで訴求しているのを見つけて、すばらしい取り組みだと思ったが、あまり売れているように見えなかった。もう一歩突っ込んだ情報提供がほしいところだ。

厳しい選果基準の弊害

 選果場での基準は、見た目(傷の有無、曲がり、肌目など)とサイズで選別し、美しいものからA・B・C・規格外とする基準が一般的だ。その中で基準にあったもの、通常はA品だけがスーパーの店頭に並ぶしくみだ。

 その時の作柄にもよるので一概には言えないが、たとえばニンジンのA品率は、圃場で収穫して選果場に持ち込んだものの40%程度だ。圃場から持ち出さないで捨ててしまっているものまで含めると、20%以下になっていると思われる。7~8割が正規品の扱いを受けないしくみだ。

 この古い選別基準の問題の一つは、たとえば表面に虫食い跡があるとA品にならないので、歩留を上げるために各種の農薬を使うことだ。これは第一にコストであるし、適正に使えば安全とは言え、使い方が上手な人ばかりではないからリスクでもある。

 それは食品として安全かどうかだけでなく、益虫や微生物相への影響も考えられる。結果、栽培がより難しくなればさらにコストがかかって本末転倒だ。見た目重視の選別基準は、本当においしく安全な野菜を作ることとはあまり関係がないし、むしろ弊害のほうが多い。

 現行の日本の選別基準は、そのように実際の生物としての野菜の生育状態とはかけ離れていることが多いと感じている。それだけでなく、食品、商品を構成する原料としての野菜に求められるニーズともかけ離れている。実際、選果場や農場に行って見ると、我々外食業が求めるものとはかなり違ったことをやっているのだ。

本当に必要な基準づくりへ

 3年前から一部トマトの契約栽培を始めた。その契約先の農業生産法人がそれまで使っていた選果基準は、SとSSのA品で28玉という、従来の流通では一般的なものだった。しかし、トマトをカットして使用する我々にとっては、オーバースペックだった。

 そこで相手に事情を話し、弊社独自の仕入れ基準を作成したところ、歩留が向上した。

 たとえば、ヘタが付いていないと従来の基準ではA品にならずはねられるが、我々としては全く問題ない。いわゆるB品までは店舗で使用できるのだ。サイズの選別もゆるくすることができた。トマトはSS~Mまでとし、ケースの入数の幅を広げ、固定しないことで出荷の選別歩留を30%程度上げることができた。そうして、食材としての品質は全く変えることなくコストダウンを実現できたのだ。

 市場買いをしている限りは世の中の通常の基準に従うしかないが、弊社が契約栽培を拡大していくことで、ムダを省いて行くことができればと考えている。サイズ、形状、見た目より、「もっと重要なことは何か?」「健康な野菜とはどんなものなのか?」という部分にこだわっていきたい。

 目的は弊社のコストを下げることだけではない。会社の役割は、お客様に対して確かな商品と正しい情報を提供し、満足し、理解をしていただくことだ。その活動を推進することで、本当の意味でのムダを省いていく取り組みを推進していきたい。

本部長Q
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FFSチェーン マーケティング本部長 某ファストフードチェーンのマーケティング本部長。コンビニエンスストアチェーン、サンドイッチファストフードチェーン、ハンバーガーファストフードチェーンの商品開発に携わってきたこの道30年の現役マーチャンダイザー。仕入れのために日本中、世界中の産地と工場を訪ね、新商品の設計から物流までに知恵を絞る毎日。