「映画 体脂肪計タニタの社員食堂」でダイエット

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チキンのゴマサルサ定食
「チキンのゴマサルサ定食」。チキンのゴマサルサ(中央152kcal)、こんにゃくと人参の白和え(右上82kcal)、アスパラと卵のおすまし(右下17kcal)、きゅうりの和え物(左上13kcal)、ご飯100g(左下160kcal)、しめて424kcal。

衣替えの季節で服装も薄着になってくるとウエストラインが気になる人もいるだろう。かく言う私も例外ではない(汗)。今回はそんな人のためにダイエットのきっかけになるような映画を紹介する。

「映画 体脂肪計タニタの社員食堂」の低カロリーメニュー

チキンのゴマサルサ定食
「チキンのゴマサルサ定食」。チキンのゴマサルサ(中央152kcal)、こんにゃくと人参の白和え(右上82kcal)、アスパラと卵のおすまし(右下17kcal)、きゅうりの和え物(左上13kcal)、ご飯100g(左下160kcal)、しめて424kcal。

 現在公開中の「映画 体脂肪計タニタの社員食堂」(2013)は、計量計測機器メーカーのタニタが社員の健康管理のために設けた社員食堂のレシピを公開し、2010年の初版以来発行部数500万部を突破したベストセラー本「体脂肪計タニタの社員食堂~500kcalのまんぷく定食~」(タニタ著、大和書房刊)をヒントに同社の社員がダイエットに挑戦するストーリーに仕立てたフィクションである。

 ワンマン社長の父、谷田卯之助(草刈正雄)の七光りと陰口を叩かれうだつの上がらないタニタの副社長、幸之助(浜野謙太)は、新製品の体脂肪計の販促キャンペーンのために自分と同じ体脂肪率40%オーバーの3人の社員「ヒマン・スリー」と共に発売までの3カ月間ダイエットに取り組んでその成果を公表するというプロジェクトに着手する。彼は高校の同級生で自らも肥満を克服した成功体験を持つ栄養士の菜々子(優香)を社員食堂の責任者に招き、ダイエットのための指導とメニュー開発を依頼する。

 菜々子は3カ月で脂肪を10kg落とす目標を達成するための作戦を提示する。まず脂肪を1kg落とすためには合計約7200kcal消費しなければならないため

72000kcal(脂肪10kg分)÷90日(3カ月)=800kcal

 が1日の消費目標となるが、通常の1食の平均カロリーである800kcalを500kcalに抑え、1日の食事の回数を2食にすれば

800kcal-500kcal=300kcal

300kcal×2=600kcal

 となり、残りの200kcalを運動で消費すれば1日800kcalは十分達成可能な数字となる。

 次に彼女が1食の平均を500kcalに抑えるためにとった調理法は、以下のようなものである。

・フライパンの代わりにオーブンや蒸し器を使い、油はなるべく使わない。

・肉は部位を選んで使い、脂肪分や皮を取り除く。

・高血圧やむくみの原因となる塩分をカットする代わりに、香味野菜やスパイスを多用したソースでしっかり味を付け、ダシをしっかりとってうま味成分を増やす。

 このような調理法で作った料理の一例が、イラストの「チキンのゴマサルサ定食」(424kcal)である。

 それでも味が薄いと言う者が出るが、それは普段の濃い味に舌が慣れてしまっているからで、しばらくすると味覚が変わって濃い味に感じるようになると彼女は言い、案の定1週間後には彼女の言う通りになるのである。

 また、食べ方も重要なポイントである。

・ゆっくり食べる。急いで食べると血糖値が急上昇してインシュリンが分泌され、糖を脂肪に変えてしまうため。

・よく噛んで食べると満腹中枢が刺激され食べ過ぎを抑えることができる。噛む回数を増やすため、野菜は大ぶりにカットする。

・食べる順番も大事。野菜から食べることで食物繊維がお腹に溜まり、食べ過ぎを抑えて消化吸収が緩やかになる。

結局はメンタルの問題

 こうして綿密に練られた作戦によってダイエット計画は順調に進むかに見えたが、1カ月後には体重が思うように減らない停滞期が訪れる。これは蓄えていた脂肪が吐き出されることで体が飢餓状態にあると認識して防衛本能が働くためである。体が少ないエネルギーでも対応できる節約モードになり、断食などの急激なダイエットほどその傾向は顕著になる。それが極限まで進んで節約から蓄積モードに入ってしまう状態が、世に言う“リバウンド”である。

 この状況を克服する術は、結局のところ個々のモチベーションにしかない。開発部の太田(草野イニ)は菜々子への恋心から、総務部の福原(小林きな子)は彼氏に認められたい一心から、営業部の丸山(宮崎吐夢)は愛娘と運動会で親子競走に出るために、幸之助は父を見返すために一度は挫折しかかったダイエットに再チャレンジを誓う。そしてかつては太っていた菜々子もダイエットの秘訣を「自分を嫌いになりたくなかったから」だと打ち明けるのだった……。

 食べながら無理なくダイエットするためには料理の味だけでなく、彩りや盛り付け方などの見た目も重要な要素だが、本作では「かもめ食堂」(本連載第22回参照)「南極料理人」(本連載第38回参照)でもフードコーディネーターを務めた飯島奈美が原作のレシピ本にアレンジを加えたメニューとオリジナルを合わせて、20種類以上の目で楽しめる料理を提供している。

 また昨年ダイエット本を上梓した優香が特殊メイクで回想シーンの肥満体を演じているのも話題を呼んでいる。

作品基本データ

【映画 体脂肪計タニタの社員食堂】

◆公式サイト
http://www.tanitamovie.jp/

製作国:日本
製作年:2013年
公開年月日:2013年5月25日
上映時間:100分
製作会社:「体脂肪計タニタの社員食堂」製作委員会
配給:角川映画
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
監督:李闘士男
脚本・原作:田中大祐(「体脂肪計タニタの社員食堂」角川文庫刊)
原作:タニタ(「体脂肪計タニタの社員食堂~500kcalのまんぷく定食~」(大和書房刊))
音楽:小松亮太
主題曲/主題歌:矢野顕子(「さあ、召しあがれ」)
フードコーディネーター:飯島奈美

◆キャスト
春野菜々子(栄養士):優香
谷田幸之助(副社長):浜野謙太
谷田卯之助(社長):草刈正雄
小泉(専務):酒向芳
丸山(営業部社員):宮崎吐夢
福原(総務部社員):小林きな子
太田(開発部社員):草野イニ
光子(食堂パート社員):渡会久美子
信子(食堂パート社員):藤本静
看護師:壇蜜
居酒屋の大将:駒木根隆介

(参考文献KINENOTE)

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映画ウォッチャー 埼玉県出身。子供のころからSF映画が好きで、高校時代にキューブリックの「2001年宇宙の旅」を観たところ、モノリスに遭遇したサルの如く芸術映画に目覚め、国・ジャンルを問わない“雑食系映画ファン”となる。20~30代の一般に“青春”と呼ばれる貴重な時をTV・映画撮影現場の小道具係として捧げるが、「映画は見ているうちが天国、作るのは地獄」という現実を嫌というほど思い知らされ、食関連分野の月刊誌の編集者に転向。現在は各種出版物やITメディアを制作する会社で働きながら年間鑑賞本数1,000本以上という“映画中毒生活”を続ける“ダメ中年”である。第5回・第7回・第8回の計3回、キネマ旬報社主催の映画検定1級試験に合格。第5回・第6回の田辺・弁慶映画祭の映画検定審査員も務めた。