食品安全情報(化学物質)No.07(2012.04.4)

国立医薬品食品衛生研究所が月2回発表している「食品安全情報」(化学物質)。食品中の発がん物質のコントロールについて、欧州食品安全機関(EFSA)は暴露マージン・アプローチを採用すると発表した。「できるだけ少なく」から「有害な量と実際の摂取量の差を評価する」へのシフト。一方、米国国防総省は軍施設でDMAAを含む製品の販売を中止。集中力を高めるなどとするサプリメント。

注目記事

【EFSA】遺伝毒性発がん性不純物の安全性を評価する:暴露マージンアプローチ

 分析技術の向上によって検出される不純物が増加し続け、食品/飼料添加物や食品と接触する物質の中にも遺伝毒性(細胞の遺伝物質であるDNAを傷害する可能性のあるもの)を持つ発がん物質が低用量で検出される可能性がある。これらの物質が存在することによる安全性について、欧州食品安全機関(EFSA)は暴露マージン(MOE)アプローチを使用すると発表した。

※ポイント:これまで、食品中のDNA傷害性のある物質についてはALARA原則(As Low As Reasonably Achievable/合理的に達成可能な範囲で可能な限り低くする)が適用されてきました。

 しかし、分析技術が向上して沢山の微量物質が検出されるようになったことやDNA傷害性をもつ物質が数多く発見されたこと、さらに有害影響の発現を左右する摂取量をALARA原則では考慮していないことなどから、ALARA原則での対応は現実的ではなくなってきました。

 そこで出てきたのが、暴露マージンアプローチです。このアプローチは、有害影響が観察される推定用量と実際の摂取量との間にどの程度の差(マージン)があるかを評価するという方法です。ですから、検出された不純物がたとえDNA傷害性がある物質だとしても、推定される摂取量が有害影響をもたらす用量に比べてはるかに微量であれば、評価では健康への懸念が低いでしょうという結論が出されるわけです。

【NIH】DMAA(1,3-ジメチルアミルアミン)に関する消費者向けニュースレター

 NIH(米国国立衛生研究所)のダイエタリーサプリメント局(ODS)は、国防総省が軍の施設でDMAA(1,3-ジメチルアミルアミン)を含む製品の販売を一時的に中断したと発表した。2人の兵士の死亡を含む重大な健康影響報告を受けての措置である。国防総省は、DMAAの安全性についての科学的根拠を現在レビュー中だとしている。

※ポイント:DMAAは集中力や代謝を高める目的のサプリメントとして販売されているものです。日本では「ジェラナミン」という名称のサプリメントや天然ハーブ「ゼラニウム」を原料に使用した製品として販売されているようです。

食品安全情報へのリンク

「食品安全情報」
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(化学物質)No.07(2012.04.04)
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2012/foodinfo201207c.pdf

今号の目次

【EC】
1. 残留農薬
2. ある種の食品中のダイオキシン、ダイオキシン様PCB、非ダイオキシン様PCBの公的コントロールのためのサンプリングと分析法改訂
3. 加盟国における国の残留物質モニタリング計画の実施に関するECスタッフワーキングペーパー2010
4. 食品以外の危険な製品についての緊急警告システム(RAPEX)
5. 食品獣医局(FVO)視察報告書:トルコ、アイルランド、ルーマニア
6. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 食品と飼料にシトリニンが存在することに関連する公衆と動物健康リスクについての科学的意見
2. 遺伝毒性発がん性不純物の安全性を評価する:暴露マージンアプローチ
3. 食品/飼料に添加される遺伝毒性発がん性不純物の安全性を評価するための暴露マージンの適用可能性についての声明
4. 健康強調表示関連
5. 遺伝子組換え生物関連
6. 飼料添加物関連
7. 香料関連
8. 食品と接触する物質関連
9. 乳児用ミルクとフォローアップミルクのタンパク源としてのヤギ乳タンパク質の適切性についての科学的意見
10. 食品と飼料の残留農薬コントロールデータを報告するためにEFSAの標準サンプル記述を使うことについて
11. 清浄海水に適用される最小衛生基準と家畜用ボトル入り海水の公衆衛生リスクと衛生基準に関する科学的意見

【FSA】
1. チェルノブイリ後のヒツジ規制は廃止
2. FSA最新研究
3. Mistral Laboratory Chemicalsについての警告

【MHRA】
1. 香港衛生署は伝統的漢方薬に重金属と表示されていない医薬品が含まれることを発見

【RIVM】
1. 遺伝子組換え植物の一般サーベイランス:オランダでの実施可能性

【EVIRA】
1. ステビオール配糖体

【FDA】
1. 米警察はミズーリ州の販売業者の未承認不正商標表示医薬品を押収
2. FDAはBPAの研究を継続
3. 警告文書(2012年3月20日、27日公表分)

【NTP】
1. テクニカルレポートTR-571 カバカバ抽出物の毒性およびがん原性試験、F344/N ラットおよびB6C3F1 マウス(強制経口投与)

【EPA】
1. 有害な可能性のある化学物質の新規使用を制限する規則を提案/EPAは同時にPBDEsの健康環境影響について追加の試験を要求

【USDA】
1. USDAはアメリカ人に外来性害虫を予防しアメリカの農業を守ることを強く呼びかける

【NIH】
1. The Scoop(消費者向けニュースレター)

【NYC DOHMH】
1. NYC保健省は生鮮バルク豆腐とボツリヌス症患者2人を関連づける

【FSANZ】
1. FSANZの意見募集文書では栄養物質と新規食品の規制に新しいアプローチを提案
2. マイナー肉の提案に意見募集
3. 園芸報告書に意見募集
4. 植物ステロールに富むミルクの用量制限変更申請

【APVMA】
1. APVMAサイエンスフェローはアメリカのサミットで除草剤耐性について警告
2. ジウロンの停止を継続

【NZFSA】
1. サプリメント食品の基準変更が迫る

【KFDA】
1. 食品原料に対するすべての情報を1ヶ所に!
2. インド産の乾燥唐辛子の残留農薬基準超過で回収措置
3. 医薬品服用時にも食品相性を調べてみてください!

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から

登田美桜
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国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室主任研究官 とだ・みおう 農学博士。国立医薬品食品衛生研究所は、医薬品、食品、その他生活環境中に存在する物質について、品質、安全性、有効性を評価するための試験、研究、調査を行う機関。 安全情報部の「食品安全情報」は、食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報を伝える。