不確実性踏まえたリスク評価

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.18(2018.08.29)を発表した。

注目記事

【EFSA】不確実性評価

 欧州食品安全機関(EFSA)の科学委員会は、リスク評価において分野横断的に調和のとれた不確実性の扱い方ができるようにするためのガイダンスを作成している。今回は不確実性を理解できるよう、FAQ形式の説明文書を公開した。

※ポイント:リスク評価では、農薬や食品添加物のように認可のためにデータをそろえた場合でない限り、入手できるデータの内容や質などはばらばらで不足もあり、結論の導出に必要なデータを十分に得られないのが通常です。ただ、以前の「注目記事」でもお伝えしたように、現時点で得られるデータに基づき最も適正と考えられる結論を導く、というのがリスク評価の原則です。ですから、評価の結論を一様に理解するのではなく、それに付随している限界(不確実性)を踏まえて理解することが重要となります。

 今回、EFSAの説明で重点を置いているのは不確実性を定量化するということです。リスク評価の結果はリスク管理を検討する際の科学的根拠となります。そのため、評価結果とその不確実性の内容や程度に応じて、リスク管理の緊急性や考慮すべき事項の優先度も変わります。ご紹介したFAQは、そのことがよく理解できる内容となっています。

※編集部註:参考となる過去記事/【EFSA】「より透明性高く強固な」助言をするための新しい不確実性アプローチ
食品安全情報(化学物質)No.04(2018.02.14)
https://www.foodwatch.jp/science/nihsreport/59838

【EFSA】食品および飼料中の4,15-ジアセトキシスシルペノールに関連したヒトや動物への健康リスク

 農作物を汚染するフザリウム属が産生するタイプAトリコテセン系のカビ毒である4,15-ジアセトキシスシルペノール(DAS)についてリスク評価を行い、急性参照用量(ARfD)を3.2μg/kg体重、耐容一日摂取量(TDI)を0.65μg/kg体重と設定した。2017年末までに入手した汚染実態データに基づき、食品に由来する推定の急性暴露量は0.8μg/kg体重、慢性暴露量は0.49μg/kg体重であり、ヒトにおいて健康上の懸念を生じない程度であった。飼料由来の暴露による動物へのリスクも低いと考えられた。

※ポイント:JECFAも2016年に初めて評価しています。その評価では、同じくトリコテセン系のカビ毒であるT-2/HT-2毒素と構造や発現影響が似ており同時に暴露した場合には相加影響をもたらすとして、4,15-DASをT-2/HT-2毒素のグループ暫定最大耐容一日摂取量(PMTDI)0.06μg/kg体重に含めると結論しました。

 同じ汚染物質を対象にしても評価者の考え方や用いたデータの違いで結論が異なることがあります。どこが違うのかを比較するのは評価書を読む時の面白さの一つでもあり、評価の勉強にもなります。

【FSANZ】食品基準通知:アルコール飲料の炭水化物と砂糖の表示

 オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は、アルコール飲料の炭水化物と砂糖の表示に関する規則の改正を見据え、技術的評価書を公表した。

※ポイント:アルコール飲料の「%シュガーフリー」という宣伝についてで、背景には、そのようなアルコールがより健康的な選択であるかのように消費者の誤解を招くという懸念があるようです。数年前から糖の摂取に関するリスク管理がブームになっていますが、こんなのもあるのかと興味深かったのでご紹介しておきます。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.18(2018.08.29)
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2018/foodinfo201818c.pdf

今号の目次

【EC】
1. 査察報告書
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 不確実性評価
2. 食品および飼料中の4,15-ジアセトキシスシルペノールに関連したヒトや動物への健康リスク
3. 遺伝子組換え植物をEUの市場に対して認可する際の新規タンパク質発現レベルの測定に関する留意事項
4. 複数の国にまたがる食品安全/公衆衛生関連事件への準備に関するEFSAとECDCの2018合同ワークショップ
5.3回目のEFSAの外部評価-進歩した点と改善のための助言
6. 水生生物の農薬規制リスク評価のための最新トキシコキネティクス/トキシコダイナミクス(TKTD)影響モデルに関する科学的意見
7. ナプロパミドの既存最大残留基準レビュー

【NHS】
1. Behind the Headlines

【ASA】
1. ASA裁定

【BfR】
1. 食品中の過塩素酸塩に関するよくある質問

【FDA】
1. 動物食品規則FSMA予防的管理の次の遵守日時になにがおこる?
2. FDAは食品施設登録ガイダンス文書を発表
3. ヒトの病気を予防・治療するための生きた微生物ベースの製品の科学と規制の進歩に関するFDA長官Scott Gottlieb医師の声明
4. 電子タバコ用e-リキッドを子供向け食品に似せたラベルや広告で販売していた会社がFDAとFTCの警告に従い、販売を中止した
5. FDA栄養革新戦略
6. 警告文書

【USDA】
1. APHIS:USDAは油の組成が異なるGEキャノーラの規制解除を発表

【NIH】
1. 医療関係者向けファクトシート更新

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【APVMA】
1. 進化するオーストラリアの農業の背景にある科学
2. グリホサート

【TGA】
1. 安全性警告

【香港政府ニュース】
1. 包装済みウナギに微量のマラカイトグリーンが検出された

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 貝毒発生および検査現況(麻痺性貝毒基準:0.8mg/kg以下)
3.「食医薬R&D物語(e話)」創刊号発刊
3
4. 試験検査機関対象の無機ヒ素試験法の教習実施
5. 食品中のエビ原料真偽判別法の技術移転
6. 秋の新学期を迎え子供が好む食品調理販売店の点検

【FSSAI】
1. 果物の人工的熟成用エテホン使用認可に関する指示
2. FSSAIメディア報道:GM食品に関しては規制の真空、とFSSAI長官が言う

【その他】
・(ProMED-mail)赤潮 米国(第三報):(フロリダ)
・(EurekAlert)福島災害で放出された高放射能のセシウムの多いマイクロパーティクルについての最初の信頼できる推定
・(EurekAlert)有毒藻類のホットスポットの南カリフォルニア沿岸の問題が明らかに
・(EurekAlert)おなかの脂肪を減らす「ある奇妙な技」?心臓に健康的な食生活!
・(EurekAlert)アメリカ人の食事はどのくらい健康的?健康的食生活指数が答えを出すのに役立つ
・(EurekAlert)The Lancet: アルコールは毎年世界中で万人の死亡に関連
・(EurekAlert)研究がスクラロースがこれまで同定されていなかった代謝物をつくることを発見
・(EurekAlert)国際チームが新しい脂肪酸を珍しく発見
・(EurekAlert)子どもの鉛暴露研究が相当な削減が可能であることを発見