「食品安全文化」推進の時代へ

No.26(2022.12.21)

ほうれんそう(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。コーデックス委員会文書に「食品安全文化」が明記されたこともあり、この概念の政策への導入が進められている。FDAは食品安全文化に関する科学文献の系統的レビューを実施した。オーストラリア・ニュージーランドでベビーホウレンソウ製品への植物素材の混入があり、大規模なリコールを発表している。

注目記事

【FDA】スローガンではなく科学としての食品安全文化の推進:系統的な文献レビュー

 米国食品医薬品局(FDA)は、業界、消費者およびFDA内での食品安全文化(Food Safety Culture)に関するFDAの取り組みの基盤として、食品安全文化に関する科学文献の系統的レビューを実施した。食品安全文化の推進は、FDAの将来計画「よりスマートな食品安全の新時代」の重要な柱である。

※ポイント:コーデックス委員会の食品衛生の一般原則の改訂版に「食品安全文化」が明記されたこともあり、諸外国では政策への食品安全文化の導入が進められています。食品安全文化とは、簡単に説明すると、食品の安全性を確保するために、食品事業者が、組織全体で食品安全のことを考えて認識を深め、価値観を共有し、行動を改善できるような社風をつくることが必要であるという考え方です。FDAが公表した報告書には食品安全文化をどのように推進するとよいのかが例も含めて具体的に記載されているので、よい参考になると思います。

【FSANZ】ベビーホウレンソウ製品の全国的リコール

 オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は、安全でない植物素材の混入のためベビーホウレンソウ製品の全国的リコールを発表した。2022年12月18日時点で、ニューサウスウェールズ州、オーストラリア首都特別地域、ビクトリア州、クイーンズランド州から190名を超える症例が報告されている。問題の製品は、Riviera Farmsの1つの畑から収穫されたものである。混入原因と原因植物は現在調査中。

※ポイント:メディアでも大々的に取り上げられています。メディアニュースによると症状からトロパンアルカロイドを含むナス科の有毒植物が疑われているようですが、オーストラリア当局からの公式発表はなく、原因は調査中とされています。リコールは、生鮮ベビーホウレンソウのパックのみならず、ベビーホウレンソウが使用されたそのまま喫食可能なさまざまなサラダも対象となっており、かなり大規模なものとなっているようです。

【ご挨拶】

 2022年の最終号となります。今年もさまざまなニュースがありました。EUにおける食品添加物としての二酸化チタンの禁止、米国環境保護庁(EPA)によるクロルピリホスの食品中トレランスの失効、米国FDAによる食品への新規技術(ゲノム編集、培養細胞)の利用推進、EUや米国における食品接触物質へのフタル酸エステル類の使用の再評価・制限、オーストラリア・ニュージーランドでのポピーシード製品の大規模リコール、各国によるカンナビジオール(CBD)への取組、パーフルオロアルキル化合物の使用制限に向けたさらなる取組、そしてロシアのウクライナ侵攻による食品安全保障の問題に関する記事が目立ちました。

 来年も引き続き食品安全の海外情報をご紹介していきますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。皆さま、よいお年をお迎えください。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.26(2022.12.21)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202226c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. ガイドライン案へのパブリックコメント募集:健康的食生活を推進するための財政政策
2. 報告書はヒトの細菌感染の抗生物質耐性増加とより良いデータの必要性を示す
3.4者は薬剤耐性と統合サーベイランスについての4者技術グループ(QTG-AIS)を設立
4. イベント
5. NCDs の予防とコントロールのためのヘルスリテラシー開発:WHO 報告書発表ウェビナー
【FAO】
1. Codex

【EC】
1. SCHEER(環境及び新興リスクに関する科学委員会)
2. 食品中最大濃度基準の改定:PFAS
3. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 亜硫酸塩:多量摂取者に安全上の懸念、だがデータ不足
2. EFSA のアドバイザリーフォーラムは欧州の研究課題を支援する
3. 安全で栄養価の高い、持続可能な食品への移行を支援:ONE Conference2022の結果
4. クロアチアの生後3か月〜9歳児の全国食品摂取調査
5. EFSA の化学物質ハザードの維持・更新・更なる開発:OpenFoodTox2.0
6. 食品添加物関連
7. 食品酵素関連
8. 新規食品関連
9. 食品接触物質関連
10. 農薬関連

【Europol】
1. 危険な可能性のある馬肉を売った41人逮捕

【FSA】
1. イングランド全土の18の地方自治体で進行中の学校給食基準コンプライアンスのパイロット
2. 硝酸塩調査:要約
3. リコール情報

【COT】
1.2022年12月14日の会合
2. ポジションペーパー
3. COT/COM/COC年次報告書2021

【ASA】
1. ASA と広告は60年で-変わり続ける
2. アルコール代用品についての意見募集-暫定声明
3. ASA 裁定

【FSAI】
1. プラスチック物質に関する新リサイクル規則
2. FSAI とヘルシーアイルランドが食品組成変更イベントを主催した

【BfR】
1. まったく難しくない
2.「スポットオン」製品:イヌ用寄生虫製品をネコに使用しないこと

【RIVM】
1.年次報告-複合ライフスタイル介入モニター2022

【FDA】
1. FDA は2022年のタルク含有化粧品のアスベスト検査のデータを発表する
2. FDA は食料生産動物用抗菌剤の販売又は流通に関する年次概略報告書2021を発表
3. 食料生産動物におけるバイオマス重量当たりの抗菌薬の販売及び流通データ:インタラクティブサマリー
4. FDA は FDA ヒト用食品プログラムを強化するための外部評価について更新情報を提供する
5. 食品トレーサビリティ最終規則に関するウェビナー
6. FDA はオンラインの宅配サービスの食品安全に関するベストプラクティスを強調する
7. スローガンではなく科学としての食品安全文化の推進:系統的な文献レビュー
8. 警告文書
9. リコール情報

【EPA】
1. EPA は有害化学物質排出目録への PFAS データ報告を増やすための規則を提案
2. EPA は州に有害 PFAS 汚染を減らすためのガイダンスを発表

【USDA】
1. ARS は初めて USDA 冬エンドウを飼料用としてではなく食用として発表

【FSANZ】
1. ポピーシードの全国的リコール
2. 食品基準通知
3. ベビーホウレンソウ製品の全国的リコール

【MPI】
1. 一般消費者への直接販売を目的としないポピーシードのリコール
2. ポピーシードティーについて
3. リコール情報

【香港政府ニュース】
1. FEHD は食品の持ち帰り及び配達に関する実施ガイドを発表する
2. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 豆腐、ハム、発酵乳など消費期限は何日でしょうか?
3. 食薬処、ナトリウム・糖類を減らす食生活情報を一箇所に集める
4. 食品中の重金属(4種)基準・規格の再評価結果を公開
5. 食薬処、チキン業界とともに栄養表示拡大のために手を取り合う!

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から