EUが新しいGM技術の評価へ

No.22(2022.10.26)

(写真はイメージです)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。WHOは各国当局による積極的な食品安全への取り組みを呼びかける世界戦略を発表した。欧州食品安全機関は新しい遺伝子改変技術を利用した食用作物の評価の手続きを整備した。英国基準庁の消費者調査によると、消費者はインフレに対して食事の頻度や量を減らしたり、保存や調理の方法を変更するなどの行動を取っている。

注目記事

【WHO】食品安全システムの強化とグローバルな協力に向けて:食品安全のためのWHO世界戦略2022-2030の開始

 世界保健機関(WHO)は10月17日、第75回世界保健総会で加盟国により採択された「食品安全のためのWHO世界戦略2022-2030-決議WHA75(22)」を公表した。この戦略は、食品安全システムを継続的に強化してグローバルな協力を促進することにより、食品由来疾患の負荷軽減のための、優先順位付け、計画、実施、監視および定期的な評価への取組について、加盟国を導きサポートするために策定された。戦略はSDGsの達成にも貢献するものであり、世界がSDGsに向けた進捗を振り返る2030年に見直される予定である。5つの戦略的優先事項を提示し、各国当局による取組を推奨している。

※ポイント:これまでのWHO世界戦略ではWHO自らが実施すべき戦略や目標を掲げていましたが、今回の世界戦略は各国当局による積極的な食品安全への取組を呼びかける内容になっているのが最大の特徴です。5つの戦略的優先事項を簡潔に言うと、自国の現状を把握して規制等を整備し、基盤となる食品安全システムを強化する。その上で、将来的に起こり得る課題を特定する、科学的根拠(データ)に基づいたリスク管理を行う、利害関係者の関与を促し協力する、費用対効果を向上させる、というものです。各国の食品安全戦略の実施と、その進捗のモニタリングを支援するための指標やツールも紹介しています。

【EFSA】FAQ:標的突然変異誘発、シスジェネシス、イントラジェネシスで生産した植物のリスク評価の規準

 欧州食品安全機関(EFSA)は、標的突然変異誘発、シスジェネシス、イントラジェネシスの遺伝子工学の技術を用いて生産した植物のリスク評価を支援するために、6つの主な規準を提案した。

※ポイント:新しい改変技術を利用した食用作物について、従来の遺伝子組換えと同様に忌避してきたEUですが、世界的な動向に合わせて、科学的根拠とリスクに応じて評価する方へ検討を始めたようです。EFSAは評価の手続きを整備しましたが、政策については欧州委員会(EC)の判断によります。

【FSA】最新の消費者調査により、食費に関する心配の度合いとそれが食品安全に与える影響を追跡調査する

 英国基準庁(FSA)が実施している消費者調査最新データ(Consumer Insights Tracker)は、16〜75歳の約2,000名を対象に、消費者が感じている食料への不安や懸念、入手可能性、FSAへの信頼度について調査している。2022年9月の調査結果を発表した。

※ポイント:英国では経済政策を理由に首相が交代しましたが、この消費者調査の結果が示す食生活の様子からも、食事の頻度や量を減らしたり、燃料経費を理由に保存や調理の方法を変更するなど、インフレ問題の深刻な状況が伝わってきます。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.22(2022.10.26)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202222c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 国際鉛中毒予防週間2022
2. 世界保健サミット2022
3. 食品安全システムの強化とグローバルな協力に向けて:食品安全のための WHO 世界
戦略2022-2030の開始
4. 栄養データポータル:栄養データ集約のための相互的プラットフォーム
5. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】
1. 世界食料フォーラム
2. Codex

【EC】
1. 水枠組み指令優先物質の環境基準案に関する予備的意見にパブリックコメント募集
2. 食品安全:欧州委員会は食品接触物質の新しい規則についてパブリックコメントを募集
3. 食品ロスと廃棄についての EU プラットフォーム:食品廃棄を減らし、食料安全保障を確保し、気候変動と戦う
4. 査察報告書
5. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 食品中のニトロソアミン類についてのパブリックコメント募集:意見案の説明
2. 複数の化学物質への複合暴露のリスク評価に関する活動のロードマップ(RACEMiC)
3. SSD2と FoodEx2に準拠した食品サンプリングデータのリアルタイム登録及び分類― リスク評価のデータ品質改善(IDRisk)
4. FAQ:標的突然変異誘発、シスジェネシス、イントラジェネシスで生産した植物のリスク評価の規準5. 食品酵素関連
6. 新規食品関連
7. 農薬関連

【FSA】
1. FSA は英国の食品法実施規範に関する意見募集を開始する
2. 食料生産動物に殺生物剤や特定の重金属を使用した結果として生じる AMR リスクのクリティカルレビュー
3. 最新の消費者調査により、食費に関する心配の度合いとそれが食品安全に与える影響を追跡調査する
4. リコール情報

【COT】
1.2022年10月25日の会合のペーパー(PFAS、ターメリック)

【ASA】
1. ASA 裁定

【BfR】
1. トータルダイエットスタディ:ベルリンで第6回国際ワークショップ
2. 蜜蜂の謎を追って-ドイツ連邦リスク評価研究所の植物迷宮は老若男女を魅了
3. スイートルーピンのアルカロイドは牛に与えると乳に少量移行する
4. 自己実験:身体は皮膚を通してフッ素含有化学物質 PFOA を吸収する可能性がある
5. 研究報告

【RIVM】
1. オランダ飲料水中 PFAS と新しい欧州飲料水指令との比較、及び EFSA の健康影響に基づく指標値との関係性

【FDA】
1. FDA と連邦政府パートナーは子供の成長と発達における魚介類摂取の役割に関する研究を開始する
2. ウェビナー情報
3. リコール情報
4. 警告文書

【NTP】
1.(+)-ウスニン酸の毒性試験

【EPA】
1. EPA は鉛及び銅に関する規則改良に環境正義を取り入れる機会を発表
2. EPA は有鉛燃料を使う航空機エンジンからの鉛排出を危険状況と提案

【CDC】
1. フィールドからの報告:個人の飲料水摂取に影響する有害藻類大発生-クリアレイク、カリフォルニア、2021年6-11月

【FTC】
1. FTC は10月19日に子供へのデジタル広告についてのバーチャルイベントを開催
2. FTC は高齢者を守るための対応についての議会への年次報告書を発表

【CFIA】
1. リコール情報

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【APVMA】
1. プロシミドン最終規制決定
2. 法令違反疑いを報告するための新しいフォーム

【香港政府ニュース】
1. 生鮮牛肉のサンプルから二酸化硫黄が検出される
2. 違反情報

【MFDS】
1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果
2.「記憶力改善」など大学修学能力試験関連の不法・不当広告を特別点検
3. 食医薬データを活用した今年最高のアイデアは?
4. 食薬処、養殖水産物を流通初期段階から安全管理実施

【SFA】
1. 食用昆虫に関する SFA の声明
2.2022年世界食料デー:安全な食料の供給を確保するために力を合わせよう
3. リコール情報

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・Eurekalert1件