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バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2015洋酒レポート(1)

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FOODEX 2015。今年の参加国数は78カ国、入場者数は77000人。

FOODEX 2015。今年の参加国数は78カ国、入場者数は77000人。

今年もFOODEX会場を歩き回って探し出したとっておきの洋酒をご紹介する。まずはヨーロッパ勢から。

 今年もFOODEX(国際食品見本市)の季節がやってきた。バーテンダー向けに特化してFood Watch Japanでお伝えしてきたレポートも、早いもので今年で4年目となった。さすがにそろそろネタ切れになるのでは……と思いつつ、都内からははるか彼方の幕張まで足を運んだ。入場者は微増ながら右肩上がりで推移しており、今年も参加国数は78カ国と例年並みだったものの、入場者数は前年比2000人増の77000人と発表している。

 最近ではフランス・ボルドーで1981年に産声を上げたVINEXPO(ヴィネクスポ http://www.vinexpo.com/)という酒に特化したBtoBの見本市の活況が聞こえて来る。本拠地のボルドーでは48,000人、アジアでも昨年香港で開催した際には16,000人の来場者を記録している。食がメインのFOODEXと数字だけの単純比較はできないものの、VINEXPOは昨年日本に上陸した(2014年11月1日~2日東京で開催)のを皮切りに、今後の積極的な日本進出を決定しており、こと輸入酒に関する限りFOODEXに強力なライバルが出現したことになる。もっとも、数字で見る限り「日本への進出の足掛かり=FOODEX」という海外メーカーのイメージはまだまだ盤石で、根強いものがあるようだ。

 毎年、Food Watch Japanにレポートを掲載すると、それを読んだバーテンダーや飲食業界関係者から「こんなの、ありましたっけ?」「どこでこんな珍品見つけてきたんですか」とよく尋ねられる。FOODEXを効率よく回る秘訣は昨年までのFOODEXレポートでもいろいろ書いているのだが、率直に言えば、楽しみに行く気持ちを諦めることができるならば、そこそこ1日でも周ることができる。

 人間の心理というのは面白いもので、東京駅の長い通路を足早に京葉線のホームを目指して歩いているときは「せっかく幕張まで行くんだからいろいろ見てこなければ」と決めているはずなのに、派手なのぼりや大掛かりな展示を目の当たりにし、きれいな女性の「ご試食、いかがですか」の声を聞いているうちに「わざわざ幕張まで来たんだから……」までは同じでも「……楽しんで行かなければ」とコンパニオンの笑顔についつい負けてしまうことになる。とくに店の常連客を観光旅行気分で引率していたりすると、本当に国内ブースの試食だけで終わることも珍しくない。もし「来年こそはいろいろ見て回りたい」と本気で読者が思われるようなら、幕張駅に到着した後、会場に行く途中で小腹を満たしておくことをお奨めしたい。幕張駅前のビルにはうどん屋と牛丼屋が早い時間から開いている。

 のっけからいささか厳しい話になったが、それが誰にでもできれば苦労はない。それができそうにない方々にお伝えすることが、逆に筆者が足を棒にして広い会場内を駆け回る励みにもなっている。そんなわけで今回も2015年のFOODEXレポートをお送りすることにしよう。

フィンランドの新顔ウイスキー/「ヴァーソ」「ユーリ」
フィンランドのキュロ蒸留所のブースで。

フィンランドのキュロ蒸留所のブースで。

 フィンランドと言えば、ウオッカ好きの間ではコスケンコルバ蒸留所の「フィンランディア」で有名だが、そんなウオッカの聖地、北欧フィンランドから新顔のスピリッツがお目見えした。

 昨年蒸溜を開始したばかりのキュロ蒸留所のメインはライ・ウイスキーとジンで、「ヴァーソ」(フィンランド語で「芽」)はオーク樽熟成、「ユーリ」(「根」)は未熟性のライ・ウイスキーでバー用語で言うところのニューポット。

 香味はバーテンダーに評価が高いリトアニア・ウォッカ「サマネ」に近く、スピリッツそれ自体の質がかなり高いだけでなく、ライ麦が香ばしく香ることを実感できる。白樺の樹液・クランベリー・フィンランドの花を使ったジン「ナブエ」と合わせてレポートの巻頭を飾るにふさわしい好打者の登場だ。

リカーズハセガワ本店扱い

駄菓子っぽくないリモンチェッロ/ワルヒェール社
イタリアのワルヒェール社のブース。

イタリアのワルヒェール社のブース。

 フルーツブランデー・メーカーとしてはヨーロッパ最大級の蒸溜設備を誇るワルヒェール社(WALCHER)はイタリア・南チロル地方の温暖な地域で良質なシュナップス、リキュール、グラッパを生産している。特筆すべきはここのリモンチェッロ(レモンのリキュール)。クリア(透明)タイプで酸味と甘みのバランスが日本人向け。

 日本に来ているリモンチェッロはやたら甘みが勝っていたり、人工的な香りがするものが多く、比較的に作り方が容易なことから自家製を出しているバーも日本では少なくない。それはそれでおいしいのだが、本当にいいものがあるのならできれば“スピリタスで作ったレモン酒”ではなく本場の本物を使いたいというバーもあるだろう。

●日本未入荷

デンマークのプレミアム・ウォッカ/「ママ・ウォッカ」
デンマークの「ママ・ウォッカ」。

デンマークの「ママ・ウォッカ」。

 筆者の個人的な嗜好から、やはり目新しいウォッカにはどうしても目が行ってしまう。「ユーリ」で触れたフィンランドと同じく北欧のデンマークから、5回蒸溜、100%ライ麦のプレミアム・ウォッカがやって来た。デンマークのウォッカと言えば1980年代のカフェバー・ブームの時に独創的な金属ボトルで有名だった「ダンツカ」を想起するが、こちらの「ママ・ウォッカ」もボトルのデザインが印象に残る(陶器瓶37.5度、ガラス瓶40度)。とは言え味もデザイン負けしていない。

 この一見不思議な名前は彼らを生んで育ててくれた母への敬意から来ているそうで、それもあってか、通常味が男性的な骨太さをもつ特徴があるライ麦ウォッカだが、こちらは優しい女性的な味わいが印象的だった。

●日本未入荷

日本人がイメージするフレッシュなチェリービール/「リーフマンス」
ベルギーのチェリービール「リーフマンス」(公式サイトより)。

ベルギーのチェリービール「リーフマンス」(公式サイトより)。

 ベルギーからは、ブロンド・ビールにチェリーを加えて18カ月熟成し、ここにさらに5種のベリー果汁を加えたチェリービール「リーフマンス」が来ていた。チェリー系のビールはともすると重かったり酸味が勝ったりしがちだが、こちらは日本人がイメージする「フレッシュなチェリービール」そのままの味なので「ビールが苦手」という女性にも是非お勧めしたい。

 もう一つ驚いたのは、この種のビールには珍しく缶ではなく樽で販売していることで、専用のサーバーもちゃんと用意されている。瓶(250ml)の手軽さもいいが、サーバーで供されるフレッシュなチェリービールは若者向けの気軽なバーや夏に向けて開催されるさまざまな屋外イベントの華になりそうだ。

小西酒造扱い

ハーブ名がわからないスペイン・ガリシアの薬草酒
スペインのブースで見つけた「ガリシア特有のハーブ」のリキュール。

スペインのブースで見つけた「ガリシア特有のハーブ」のリキュール。

 スペインのガリシア地方と言えばきれいな海岸線と多くの世界遺産で知られる場所で、日本でもスペイン料理店の人気メニュー「蛸のガリシア風」を思い出す方が多いだろう。戦争映画不朽の名作「Uボート」で、ジブラルタル海峡突破の前につかの間の休息を取る寄港地「ビゴ」がガリシア州の州都だという。

 シャルトリューズともビター系とも違う、いかにもスペイン人が好きそうなハーブが香る逸品をスペインのブースで見つけた。見つけたのはいいのだが「どんなハーブが入っているのか?」という筆者の問いにスペインおばさん、しばし考えた後、満面の笑みで「ガリシア特有のハーブなので英語で何というかは知らない」と一言。

●日本未入荷

《つづく》

執筆者

石倉一雄
石倉一雄
Absinthe 研究/洋酒ライター いしくら・かずお 1961年北海道生まれ。周囲の誰も興味を持たないものを丹念に調べる楽しさに魅入られ、学生時代はロシアの文物にのめり込む。その後、幻に包まれた戦前の洋酒文化の調査に没頭し、大正、明治、さらに江戸時代と史料をあたり、行動は図書館にバーにと神出鬼没。これまでにダイナースクラブ会員誌「Signature」、「男の隠れ家」(朝日新聞出版)に誰も知らない洋酒の話を連載。研究は幻の酒アブサン(Absinthe)にも及び、「日経MJ」に寄稿したほか、J-WAVE、FM静岡にも出演。こよなく愛する酒は「Moskovskaya」。