栽培現場ごとの土の事情(6)水田転作(3)

陸田
水田を畑として耕作している圃場
栽培現場を7つに分類して説明する
(1) 育苗培土(野菜苗を中心に)
(2) 固形培地によるハウス栽培
(3) ハウスでの地床栽培
(4) 露地畑
(5) 水田での水稲
(6) 水田からの転作
(7) 海外での農業

農業生産を行う現場を7つに分類し、それぞれについて、土のあり方と栽培の実際について説明している。水田を畑として使う場合の最終回。水田転作で成功する必須の判断基準を説明する。

転作奨励金が大規模経営を生んだ

 さて水田転作はもちろん農家から始まったことではありません。昭和53(1978)年ころから強制的にイネ以外を作らせる、あるいはイネを青刈りするということが農水省の号令で始まりました。各地の生産組織は、これを「全面積の何%」という形で呑みました。

 そしてダイズやコムギ、飼料作物、野菜などを作付すると、イネで得られる収入に匹敵する金が与えられるというのが、米退治農政でした。

 この発想で始まった水田転作でしたので、最初は貧弱な現場が多かったのです。しかし大規模経営の人が増えてきて、水田転作圃場の様子は変わってきました。否、この水田転作奨励金を源泉として経営の規模拡大を進めてきた生産者は多いのです。転作奨励金が、多くの大規模経営を作り出したのです。

 彼らは創意工夫をこらして、日本の水田を畑のように使いこなす術を開発していきました。もちろん、これに農業機械業界が加勢したことは言うまでもありません。

 このヒモツキ水田転作が発端となって、平野部を中心に大面積でしかも好成績のダイズやコムギの事例が誕生しました。

畑としての実力がある田んぼを選ぶ

陸田
畑としても使えるように作られた陸田(茨城県)

 しかし、それらに取り組んでいる皆さんが悩んでいることもまた深刻です。それは、作柄の安定性がないことと、思うように収量が得られないことです。

 これを「田んぼを無理やり畑にしているのだからしかたがない」としてしまう空気が随分最近まであったのですが、ここにきて変わってきました。

 やはり作物の収入も確保したいという欲が出てきたのです。これはよいことです。

 では対策はあるのでしょうか。答えはイエスです。しかも身も蓋もないほど簡単なことです――水田転作に対応できる、元々の排水性をもった田んぼを選ぶことです。

 この“選ぶこと”というのが大事です。というのは、かつて農民は耕作する農地を選ぶことはできなかったのです。そのため、自分に割り当てられた田畑が善くても悪くても、一所懸命にがんばって土づくりをし、改良しなさいということでした。

 そんな歴史があるからこそ、誰しもが身の上をあきらめながらも、自分の農地をよくしようとしてきたのだと思います。

選べる田畑の時代

 ところが時代は変わり、「大地主―小小作」という時代から「小地主―大小作」時代に変わってきました。つまり、できなくなってしまった小農家の田んぼを他の農家が借りて規模を拡大し、大きな小作人となった人たちが借りまくり始めたということです。

 これによって、“選べる田畑の時代”が到来したのです。

 そこで、自社で耕作できる圃場のポートフォリオを見て、水田転作に向かない田んぼはそのまま、何もしないでも畑のようにダイズやコムギが出来る田んぼは転作するという風に個別に考えるのです。

 水田転作で勝つには、これに尽きます。

 では、こうした“見かけは田んぼでも実力は畑”というのはどうすれば見つかるでしょうか。それは土壌図というものを見れば一目瞭然です。土壌図を見て、「褐色低地土」という場所がこの水田転作の最良適地です。

 その土壌図のこと、この日本列島のどこにどんな土壌があって、何に向いているのかという情報の話は、この連載のしかるべき回にゆっくり説明します。

関祐二
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農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。