海外土壌と有機物(1)

海外の圃場
海外生産地の圃場面積は日本とは桁違いに広い
堆肥舎
日本の堆肥舎の例

日本の土壌と海外の土壌の違いの2回目。日本では堆肥などの有機物を圃場に施すことが推奨されている。ところが、海外の圃場では堆肥を使うことは一般的ではない。一般に、それは無理であり、不要だからだ。

 日本の土壌と諸外国の土壌とでは、カリウムの特性が日本とは全く違うという話を前回しました。今回は、有機物の施用のしかたや考え方について、日本と海外の違いをお話しましょう。

海外では堆肥の施用の例が少ない

 まず、耕地の様子を比べてみましょう。多くの日本の圃場は、海外のそれに比べれば狭いものです。その小さな圃場を必死になって丁寧に管理しようとするのが日本の農家の特徴で、だから日本の耕地はすみずみまできれいな田んぼや畑になっています。

 しかし、海外のいろいろな耕地を訪ねると、もちろん地域にもよりますが、一箇所当たりの圃場の面積が広いというところが多い。そして、日本のように丁寧に作っているところはあまり見かけないものです。とくに開発途上国といわれる地域では、ラフな手入れのところが多い。

 堆肥などの有機物の施用は、日本ではよく勧められています。しかし、海外ではあまり行われていないものです。

 まず、設備も道具もないことがほとんどです。海外の生産現場を訪ねたとき、日本のような堆肥撒きの機械(マニュアスプレッダなど)があるのかと探してみますが、これがだいたい見当たらない。堆肥を作るには耕作地の広さに見合った規模の堆肥製造設備が必要で、耕作地が広ければそれだけ大規模なものがあるはずですが、そういうものもない。人に聞いてみても、出てこない。ということは、せいぜい作物収穫後の残さを土に入れる程度のことしかやっていないということでしょう。

大量の有機物施用は現実的でない

海外の圃場
海外生産地の圃場面積は日本とは桁違いに広い

 こうした耕作地で、堆肥などの有機物の施用があまり熱心に行われない理由はいくつかあります。

 まず、耕地面積が広いという問題があります。海外の耕地には、1枚の畑に千代田区がすっぽり入るとか、その農業地帯に東京都が入ってしまうとか、地平線の先まで畑だとかいうのはざらです。米国のグレートプレーズなどは日本列島が3つぐらい入ってしまいます。

 そんな広大な面積の耕地を見れば、こんなところで堆肥を作って施して回るなどということは、発想すらしないでしょう。まず、有機物を施用する作業がたいへんです。また、施用する有機物の量の確保が難しい。

 たとえば、家畜の糞尿を使おうとした場合、その地域の畜産の主体が放牧であれば、集めるのは困難です。家畜を集中的に管理している場合でも、その畜産の現場と、有機物を施用したい圃場との距離が遠く離れていれば、家畜糞尿の利用は現実的ではありません。

 有機物利用の先進国ヨーロッパではそうでもありませんが、海外の多くの地域では、家畜由来の有機物を使うのが難しいことが多いものです。

大量の有機物はそもそも不要

 また、実はそもそも多量の有機物を施用する必要などないという事情もあります。

 海外の耕地には、もともと土壌が有機物を含んでいる、あるいはあまり与えなくても栽培には問題がない土壌であるという場合が多いのです。

 地球上には、土壌の劣化や地力の低下があまり起きないという優良な穀倉地帯はたくさんあります。そうした場所こそが、その土壌生産力の高さで世界に穀物を供給する役割を担うのにふさわしいということです。

 そうなのです。そうした優良な土壌があるところでしか、大規模な企業的農業はやらないと考えるのが、グローバルの標準ということではないでしょうか。

 米国でもロシアでもヨーロッパでも、良好な土壌に恵まれた地帯で営むのが農業というものです。それ以外の条件が不良の場所でも作物の栽培は行われてはいますが、そういうものは企業的農業の範疇には入らないくらいに考えて海外農業を整理して見なければ、海外の農業や有機物事情などは頭の中で整理できなくなります。

関祐二
About 関祐二 101 Articles
農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。