
国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国の複数州で発生した家禽に関連のサルモネラ感染を受けて、当局は小規模飼育の家禽類を取り扱う際の衛生手順遵守を呼びかけている。米国の刑務所で確認されたA型肝炎陽性受刑者が調理を担当していたことがわかった。当該患者と接触した可能性のある受刑者の3割が出所していたが、迅速な曝露後予防接種の実施が行われた。
注目記事
【米国】小規模飼育家禽のサルモネラ
米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)および複数州の公衆衛生当局は、複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Mbandaka)感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集している。
追跡情報が得られた患者4人のうち2人が、発症前に家禽類を購入または入手していたことを報告した。これらの患者は家禽類を農業用品店で入手したと報告した。調査では、患者が家禽類を入手した場所、および患者が家禽類を購入した小売店に家禽類を供給した孵化場について、情報の収集が続けられている。
S. Mbandakaアウトブレイク株は、過去に発生したアウトブレイクで特定された2カ所の孵化場に関連しており、このうちの1カ所は、今回のアウトブレイクで採取された家禽類出荷用品の検体にも関連している。CDCは関連各州の当局と協力し、当該孵化場にこの結果の通知を行い、孵化場への供給業者が関連した可能性についても調査を進めている。調査は継続しているため、本アウトブレイクに関連した別の孵化場が新たに特定される可能性がある。
WGS解析の結果、本アウトブレイクの患者由来サルモネラ分離株が遺伝学的に相互に近縁であることが示された。この結果は、本アウトブレイクの患者が同じ種類の動物から感染した可能性が高いことを意味している。
オハイオ州で実施された調査において、孵化場から小売店への家禽類の出荷時に使用された輸送箱内部から複数の検体(中敷き、敷き藁など)が採取された。WGS解析が行われた結果、これらの検体から検出されたS. Mbandaka株が患者由来株と同一であることが示された。
WGS解析の結果、患者由来6検体および環境由来1検体から分離されたサルモネラ株に
CDCは、健康被害を防ぐため、小規模飼育の家禽類を取り扱う際に衛生手順を遵守するよう注意喚起を行っている。
【米国】大規模な都市刑務所で発生したA型肝炎
米国の刑務所には路上生活経験や注射薬物使用経験がある受刑者が高い割合で収容されており、A型肝炎の伝播リスクが高い環境となっている。
2023年5月30日、ロサンゼルス郡公衆衛生局はロサンゼルス郡刑務所システムでA型肝炎の徴候を示した受刑者に検査を行い、急性A型肝炎陽性であったことをロサンゼルス郡保健局矯正医療部門に報告した。当該患者が調理を担当していたことが翌日判明し、CDSCは当該患者と接触した可能性のある受刑者5,830人を特定したが、このうち1,702人がすでに出所済みであった。
6月1〜12日の間に電子健康記録もしくは州の免疫レジストリを確認し、当該患者と接触があった受刑者のうち、A型肝炎の血清学的検査歴もしくはワクチン接種歴の記録が確認できない受刑者を計2,766人特定した。これらの受刑者に対し、曝露後予防としてA型肝炎ワクチン接種を提案したところ、およそ半数に当たる1,510人が接種を受けた。
当該患者との接触があった受刑者のうち、調理担当者でかつ免疫状況が確認できない、もしくはワクチン接種を拒否した受刑者は、推定潜伏期間中は調理担当から外した。当該患者以外のA型肝炎発症者は確認されなかった。
接触者を即時に特定し、また免疫状況記録および血清学的検査記録を活用することで迅速な曝露後予防接種の実施が可能となり、曝露環境における受刑者間のA型肝炎伝播の防止に繋がった。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
目次
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 小規模飼育の家禽類に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Mbandaka)感染アウトブレイク(2025年5月5日付初発情報)
【Morbidity and Mortality Weekly Report(CDC MMWR)】
1. 大規模な都市刑務所で発生したA型肝炎および拡大防止対応(米国カリフォルニア州ロサンゼルス郡、2023年5〜7月)
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)
【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 生鮮および冷凍の果物・野菜・ハーブ(ffFVH)の収穫後の取り扱いおよび加工に使用される水に関連する微生物ハザード-Part4(カット済み生鮮FVHにおけるプロセス水管理計画)
【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. オランダでの感染症の発生状況(2023年)
【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 食品中のブルセラ菌:感染源の特定および感染予防
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.10(2025.05.14)
- https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202510m.pdf