酒は安いが飲まない人もいる

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筆者は強くないが、酒類を好む。たしなむのは基本的に醸造酒である。味わいの深さが好きなのである。まずは缶ビール類(冷蔵)からスタートする。そのときの状態により、350mLか500mLを選ぶ。夏季の暑い日はもう一本行くこともある。次に日本酒(常温)に移る。どのくらい飲むかはやはりそのときの状態による。

中国はワイン大国

中国を歩いていて手に入るビール。度数は日本より低めだ。
中国を歩いていて手に入るビール。度数は日本より低めだ。

 海外出張でうれしいのはビールが格安なことである。マレーシアやシンガポールではムスリムが多いため酒類を置いてある店が少ないのだが、それでも探せば見つかるものである。その点、中国では探す必要がない。どこでも簡単にビール(啤酒=ピージョウ)が入手できる。価格も涙が出るほど安価である。したがって、飲めば飲むほど得をした気持ちになる。

 中国で一般的によく飲まれる酒類はこのビールと白酒(バイジョウ)である。これにワイン(葡萄酒=プータォジョウ)を加えておく。その他に黄酒(ファンジョウ)という醸造酒があり、そのなかでよく知られているのが紹興酒(シャオシンジョウ)である。

 ビールで有名なのは何といっても青島(チンタオ)啤酒である。青島をドイツが統治していた時代の置き土産と言える。その他にも多くのビールメーカーが存在する。アルコール度数が3%程度の製品が多く、水のような感覚で飲める。日本メーカーも各社進出しているが、「郷に入っては郷に従え」で、アルコール度数は低く造られている。たとえば、キリン「一番搾り」は中国では3.7%である(日本国内5.0%)。それでも、ホップが効いてしっかりしており、日本の味である。明確に差別化できており、現地でも好きという人がいる。

一口に白酒と言っても中身は千差万別だ。
一口に白酒と言っても中身は千差万別だ。

 白酒はウイスキー、ブランデーと並ぶ世界の三大蒸留酒である。ただし、一口に白酒と言っても中身は千差万別だ。原料はコーリャン(ソルガム)、トウモロコシ、ジャガイモなどである。これらを麹と一緒に並行複発酵させると黄酒が出来る。これを蒸留すると白酒となる。アルコールは40〜70%程度と幅が広い。

 ワインについては、少し意外に感じるが、中国はワイン大国なのである。中国はブドウ栽培の適地が各地に存在し、輸出量はアジア圏最大である。

 中国内で一般に好まれるのは赤である。筆者は宴会などの席で白ブドウ酒を見たことがないが、あることは間違いない。アルコールは十数%である。

宴席でも飲まないことがOKに

 中国では、集団で飲むときの作法がある。誰かが一言話してから、皆で乾杯する。これを繰り返すのである。したがって、マイペースで飲むのはやり難い。スタートは白酒になることが一般的である。もちろん、ビールやワインを選択することも可能だ。ある程度進むと白酒からビールに移る。「とりあえずビール」からハードリカーへ以降することが多い日本とは真逆なのである。

 ところで、中国の人は誰もが酒に強いというイメージがあるかもしれない。これは明確に間違いである。男性でも好まない人が存在するし、基本的に女性はそれほど飲まない。そして、近年は宴席でも酒を飲まないことが許容されるようになっている。お茶や水をグラスに注いで一緒に乾杯すればよいのだ。

 最後に価格について触れておこう。いずれも一般レベルの酒類である。ビール500mLビン2.5〜4.5元(1元=15円換算で後者68円)、白酒500mLビン15〜50元(同・後者750円)、ワイン750mLビン40〜70元(同・後者1,050円)程度である。普通の食品だけでなく、酒類も格安なのである。呑んべであれば、移住を検討したくなるに違いない。

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About 横山勉 99 Articles
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。