家族のギョーザvsすき焼き

ごはん映画ベスト10 2013年 邦画編

本膳
「武士の献立」の饗応料理の本膳

前回に続き年末企画として、今年公開された映画の中で印象的な食べ物や飲み物が出てきた映画を私rightwideが独断と偏見で洋画と邦画に分け10本ずつセレクトし発表する。今回は邦画のベスト10をご紹介。

【選定基準】

2013年1月1日~2013年12月31日に公開(公開予定)の邦画で、
・食べ物や飲み物の「おいしそう度」
・食べ物や飲み物の作品内容への関連性
・作品自体の完成度
の3点を加味して選定した。

●2013年度ごはん映画ベスト10〈邦画編〉(得点順)
チェック項目 おいしそう度 作品との関連性 作品の完成度 合計
そして父になる ★★★★ ★★★★★ ★★★★★ 14
映画 体脂肪計タニタの社員食堂 ★★★★★ ★★★★★ ★★★ 13
武士の献立 ★★★★★ ★★★★★ ★★★ 13
もらとりあむタマ子 ★★★★ ★★★★★ ★★★★ 13
風立ちぬ ★★★★ ★★★★ ★★★★ 12
四十九日のレシピ ★★★★★ ★★★★ ★★★ 12
すーちゃん まいちゃん さわ子さん ★★★★★ ★★★★ ★★★ 12
箱入り息子の恋 ★★★★ ★★★★ ★★★ 11
はじまりのみち ★★★★ ★★★ ★★★★ 11
横道世之介 ★★★★ ★★★ ★★★★ 11

●2013年度ごはん映画ベスト10〈洋画編〉 →

1位「そして父になる」のギョーザとすき焼き

 今年度のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した是枝裕和監督作品。

 大手ゼネコンに勤めるエリートサラリーマンの良多(福山雅治)とみどり(尾野真千子)の野々宮夫婦はある日、6年前の病院での赤ん坊の取り違えにより息子の慶多が他人の子供だと知らされる。実の息子・琉晴は群馬で小さな電器店を営む斎木夫婦(リリー・フランキー、真木よう子)に育てられていて、2組の夫婦は悩んだ末に息子の交換を選択する。

 お互いの息子を相手の家に外泊させた初日、子だくさんの斎木家で1つのフライパンの中にくっついたギョーザをつつき合うアットホームな雰囲気に圧倒される一人っ子の慶多と、琉晴曰く「ホテルのような」裕福な野々宮家で出される霜降牛のすき焼き。何気ない夕食のシーンが、交換された2人の子供の置かれた状況を雄弁に物語っていた。

2位「映画 体脂肪計タニタの社員食堂」のチキンのゴマサルサ定食

 本連載第49回参照。ベストセラーになった計量器メーカー・タニタの社員食堂レシピの映画化である。体脂肪計のプロモーションを兼ねたメタボ社員のダイエット挑戦を通してさまざまなうんちくが語られるが、ポイントは低カロリーでもおいしく食べられるということ。そのためには見た目も大事な要素で、フードコーディネーターの飯島奈美によってアレンジされたチキンのゴマサルサ定食等のメニューには、これなら無理なくダイエットできると納得させられた。

3位「武士の献立」の饗応料理

本膳
「武士の献立」の饗応料理の本膳

 加賀百万石の台所御用を勤める武士の料理人「包丁侍」の舟木家に嫁いだ料理上手なバツイチ妻・春(上戸彩)と料理の苦手な跡取り夫・安信(高良健吾)の夫婦を描いた時代劇。後に「加賀騒動」と呼ばれる藩を二分する内部抗争の中、妻は刀への未練から包丁に実が入らない夫に料理を教え、その甲斐あって安信は騒動の遺恨を晴らす「饗応の宴」の世話役を立派に務め上げる。この宴での加賀野菜などの地元の食材を用いた饗応料理のフルコースが最大の見どころで、これについては次回詳しく解説する。

4位「もらとりあむタマ子」のゴーヤーチャンプルー

 本連載第62回参照。東京の大学を出ながら就職もせず、父・善次(康すおん)が一人で暮らす甲府のスポーツ用品店の実家にパラサイトしたタマ子(前田敦子)に、凝り性の父は綺麗に盛り付けした秋刀魚の塩焼きやサラダ、カレーなどの手料理を黙って出し続ける。どの料理もおいしそうに見えるが、最後に登場するゴーヤーチャンプルーのほろ苦い味は、彼女のモラトリアムの終わりを宣告する親心のようだった。

5位「風立ちぬ」のシベリア

 本連載第56回参照。今年度の劇場用公開映画で第1位となる119億円(12月5日現在)の興行収入を挙げた宮崎駿監督の引退(?)作品。零戦設計者の堀越二郎(声:庵野秀明)が仕事帰りに買い求める、カステラに羊羹をはさんだシベリアがおいしそうで、思わず取り寄せて試食してしまった。

6位「四十九日のレシピ」のコロッケパン

 伊吹有喜の小説を映画化したタナダユキ監督作品。不妊と夫の浮気に悩む百合子(永作博美)が、妻を亡くしたばかりの父親・良平(石橋蓮司)がいる実家に帰ってみると、そこには亡き継母がボランティアをしていた依存症の更正施設の娘・イモ(二階堂ふみ)がいて、故人が遺した「暮らしのレシピカード」を百合子に渡す。遺された家族が自分がいなくなっても困らないように毎日の家事のコツをイラスト付きで描いたそれには料理のことも載っていて、とりわけソースをたっぷり染み込ませたコロッケパンは見栄えのよさに加えて亡き母の愛情が感じられ、生前に気持ちをうまく伝えられなかった父と娘の心に響くものだった。

7位「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」のル・クルーゼのおでん

 益田ミリの4コマ漫画「すーちゃん」を映画化した御法川修監督作品。12年勤めたカフェで料理担当をしているすーちゃん(柴咲コウ)、OA機器メーカー勤務で妻子ある男と不毛な恋愛中のまいちゃん(真木よう子)、祖母の介護をしながら在宅でWebデザイナーをしているさわ子さん(寺島しのぶ)。心の中で何かと愚痴を呟いてしまう彼女達のストレス解消法は、3人で集まっての食事会。公園でまいちゃんスペシャルの弁当を広げたり、すーちゃんの家でレモンの薄切りを載せた鍋をつついたり。さわ子さんの家で出されるおでんの串刺しの鍋は、鋳物に複数層のホーローを焼き付けることで熱伝導率をよくし野菜のうま味を引き出すル・クルーゼ製のココット・ロンドである。

8位「箱入り息子の恋」の牛丼

 市役所職員の天雫健太郎(星野源)は「彼女いない歴=年齢」の独身で、自宅と職場を往復するだけの日々を送る「さとり世代」の代表のような男である。見かねた両親が婚活を始め、見つけてきたお見合いの相手は視覚障害を持つ今井奈穂子(夏帆)であった。初めてのデートで彼女に行きつけの店に連れて行って欲しいと頼まれた彼が向かったのが、牛丼の「吉野家」。つゆだくや紅生姜のトッピングの説明を聞く奈穂子は楽しそうで健太郎も彼女に恋するが、突然の交通事故で2人は引き離されてしまう。傷の癒えた健太郎はある日街角で奈穂子の姿を見かける。杖をつきながら「吉野家」に向かい、カウンターに座って号泣しながら牛丼を食べる彼女の姿は彼の妄想だが、その後の大暴走へのきっかけとなるのである。

9位「はじまりのみち」のエアカレー

 本連載第55回参照。日本映画黄金時代の巨匠・木下恵介監督が戦時中に帰省した故郷・浜松で病気の母をリアカーに乗せて疎開させたエピソードをアニメが本業の原恵一監督が描いた作品である。険しい道中をサポートするために雇われた便利屋(濱田岳)が、休憩中に物資が豊富だった時代を思い出し、パントマイムでカレーライスを食べるふりをして見せるシーンには、カレーそのものが映っていないにもかかわらず食欲をそそられた。

10位「横道世之介」の特大バーガー

 吉田修一の小説を映画化した南極料理人(2009、本連載第38回参照 )の沖田修一監督作品。1980年代後半のバブル全盛期に青春時代を過ごした人々が、いるだけで周囲を明るくさせる存在だった横道世之介(高良健吾)を16年後に懐かしく回想する。お嬢様育ちの与謝野祥子(吉高由里子)との初めてのデートで入ったアメリカンスタイルのレストランで注文した特大バーガーを、最初はナイフとフォークでお行儀よく食べていた2人が、会話に夢中になるにつれ手掴みに移行していく様子が2人の距離が縮まるのを見事に表現していた。

作品基本データ

【そして父になる】

◆公式サイト
http://soshitechichininaru.gaga.ne.jp/

製作年:2013年
公開年月日:2013年9月28日
上映時間:121分
製作会社:「そして父になる」製作委員会
配給:ギャガ
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
監督・脚本:是枝裕和
撮影:瀧本幹也
フードコーディネーター:飯島奈美

◆キャスト
野々宮良多:福山雅治
野々宮みどり:尾野真千子
斎木ゆかり:真木よう子
斎木雄大:リリー・フランキー

【映画 体脂肪計タニタの社員食堂】

◆公式サイト
http://www.tanitamovie.jp/

製作年:2013年
公開年月日:2013年5月25日
上映時間:100分
製作会社:「体脂肪計タニタの社員食堂」製作委員会
配給:角川映画
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
監督:李闘士男
脚本・原作:田中大祐(「体脂肪計タニタの社員食堂」角川文庫刊)
原作:タニタ(「体脂肪計タニタの社員食堂~500kcalのまんぷく定食~」(大和書房刊))
撮影:永森芳伸
フードコーディネーター:飯島奈美

◆キャスト
春野菜々子(栄養士):優香
谷田幸之助(副社長):浜野謙太
谷田卯之助(社長):草刈正雄
小泉(専務):酒向芳

【武士の献立】

◆公式サイト
http://www.bushikon.jp/

製作年:2013年
公開年月日:2013年12月14日
上映時間:121分
製作会社:「武士の献立」製作委員会
配給:松竹
カラー/サイズ:カラー/ビスタ

◆スタッフ
監督:朝原雄三
脚本:柏田道夫、山室有紀子、朝原雄三
撮影:沖村志宏
料理監修:大友佐俊、青木悦子
料理考証:綿抜豊昭

◆キャスト
舟木春:上戸彩
舟木安信:高良健吾
舟木伝内:西田敏行
舟木満:余貴美子

【もらとりあむタマ子】

◆公式サイト
http://www.bitters.co.jp/tamako/

製作年:2013年
公開年月日:2013年11月23日
上映時間:78分
製作会社:エムオン・エンタテインメント、キングレコード
配給:ビターズ・エンド
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
監督:山下敦弘
脚本:向井康介
撮影:芦澤明子、池内義浩
主題曲/主題歌:星野源

◆キャスト
タマ子:前田敦子
善次:康すおん
仁:伊東清矢
曜子:富田靖子

【風立ちぬ】

◆公式サイト
http://kazetachinu.jp/

製作年:2013年
公開年月日:2013年7月20日
上映時間:126分
製作会社:スタジオジブリ 他
配給:東宝
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
原作・脚本・監督:宮崎駿
プロデューサー:鈴木敏夫
作画監督:高坂希太郎
音楽:久石譲

◆キャスト(声の出演)
堀越二郎:庵野秀明
里見菜穂子:瀧本美織
本庄:西島秀俊
黒川:西村雅彦

【四十九日のレシピ】

◆公式サイト
http://49.gaga.ne.jp/

製作年:2013年
公開年月日:2013年11月9日
上映時間:129分
製作会社:WOWOW 他
配給:ギャガ
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
監督:タナダユキ
原作:伊吹有喜
脚本:黒沢久子
撮影:近藤龍人
フードコーディネート:なかしましほ

◆キャスト
高岩百合子:永作博美
熱田良平:石橋蓮司
ハル:岡田将生
イモ:二階堂ふみ

【すーちゃん まいちゃん さわ子さん】

◆公式サイト
http://sumasa-movie.com/

製作年:2012年
公開年月日:2013年3月2日
上映時間:106分
製作会社:「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」製作委員会
配給:スールキートス
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
監督:御法川修
原作:益田ミリ(「すーちゃん」シリーズ 幻冬舎刊)
脚本:田中幸子
撮影:小林元

◆キャスト
すーちゃん:柴咲コウ
まいちゃん:真木よう子
さわ子さん:寺島しのぶ

【箱入り息子の恋】

◆公式サイト
http://www.hakoiri-movie.com/

製作年:2013年
公開年月日:2013年6月8日
上映時間:117分
製作会社:「箱入り息子の恋」製作委員会
配給:キノフィルムズ
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
監督:市井昌秀
原作:市井昌秀、今野早苗(小説版「箱入り息子の恋」ポプラ社刊)
脚本:市井昌秀、田村孝裕
撮影:相馬大輔

◆キャスト
天雫健太郎:星野源
今井奈穂子:夏帆
天雫寿男:平泉成
天雫フミ:森山良子
今井晃:大杉漣
今井玲子:黒木瞳

【はじまりのみち】

◆公式サイト
http://www.shochiku.co.jp/kinoshita/hajimarinomichi/

製作年:2013年
公開年月日:2013年6月1日
上映時間:96分
製作会社:「はじまりのみち」製作委員会
配給:松竹
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
監督、脚本:原恵一
撮影:池内義浩
美術:西村貴志

◆キャスト
木下惠介:加瀬亮
木下たま:田中裕子
便利屋:濱田岳
木下敏三:ユースケ・サンタマリア

【横道世之介】

◆公式サイト
http://yonosuke-movie.com/

製作年:2012年
公開年月日:2013年2月23日
上映時間:160分
製作会社:「横道世之介」製作委員会
配給:ショウゲート
カラー/サイズ:カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)

◆スタッフ
監督:沖田修一
原作:吉田修一(「横道世之介」毎日新聞社 文春文庫刊)
脚本:沖田修一、前田司郎
撮影:近藤龍人

◆キャスト
横道世之介:高良健吾
与謝野祥子:吉高由里子
倉持一平:池松壮亮
片瀬千春:伊藤歩
加藤雄介:綾野剛


●2013年度ごはん映画ベスト10〈洋画編〉 →

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About rightwide 224 Articles
映画ウォッチャー 埼玉県出身。子供のころからSF映画が好きで、高校時代にキューブリックの「2001年宇宙の旅」を観たところ、モノリスに遭遇したサルの如く芸術映画に目覚め、国・ジャンルを問わない“雑食系映画ファン”となる。20~30代の一般に“青春”と呼ばれる貴重な時をTV・映画撮影現場の小道具係として捧げるが、「映画は見ているうちが天国、作るのは地獄」という現実を嫌というほど思い知らされ、食関連分野の月刊誌の編集者に転向。現在は各種出版物やITメディアを制作する会社で働きながら年間鑑賞本数1,000本以上という“映画中毒生活”を続ける“ダメ中年”である。第5回・第7回・第8回の計3回、キネマ旬報社主催の映画検定1級試験に合格。第5回・第6回の田辺・弁慶映画祭の映画検定審査員も務めた。