外食チェーンはそもそも保存料を使いたくない

刺身
刺身
刺身
刺身
そば
そば。作ってすぐ食べるものに保存料は使わない。
「マクドナルド」が保存料を使っていないということについて、米国マクドナルド社の声明からさらに納得のいく説明がほしいというリョウ。話は、保存料とはそもそも何であるかという話になる。

保存料は何のために使うものか?

リョウ 「来たか。ごくろう」

タクヤ 「ではさっそく続きを。食品添加物、とくに、今回の件に関して保存料は何のために使うのか。ここを押さえましょうという話でした」

リョウ 「保存料が何のためかって、そんなの簡単だよ。食品が腐って使い物にならなくなるのを防ぐためさ」

タクヤ 「どんな食品に対して使うんですか?」

リョウ 「腐る恐れのある食品に対して使うんだよ、な」

タクヤ 「腐る恐れのある食品て、どんな食品ですか?」

リョウ 「この間までの話でいけばだ、自由水をそれなりの量含んだ食品てことだよ。しかも、長時間常温にさらされる可能性のある」

タクヤ 「じゃ、この事務所の近所にあるすし屋さんやそば屋さんも、保存料使うんですかね?」

リョウ 「あのすし屋さんは毎朝築地で買い付けた魚を捌いて使ってる。そば屋さんは毎日すんごい顔して手打ちだ。どちらも繁盛してるから、今日仕入れたり仕込んだりしたものを明日使うなんてことは、ほとんどないんじゃないか。つまり、腐る恐れどころか腐るヒマがない。保存料なんか使うこたないだろ」

タクヤ 「そこです。『マクドナルド』の食材も、通常のお客さんが食べるまでに腐るかもしれない場面というのが、ほとんど考えられません」

リョウ 「と言うと?」

タクヤ 「たとえばパティ。日本の場合、輸入した冷凍牛肉が箱でドカーっと契約工場に届いて、それを解凍して、ミンチにして、赤身と白身の割合などを基準に合わせて混合して、型に入れて、プレスして、即再冷凍します。それが冷凍のまま店の冷凍庫に届いて、厨房の冷凍庫に小出しにしながら、使います。工場を出てからグリドル(鉄板)に載る瞬間まで、カチンカチンの冷凍状態です」

リョウ 「それじゃ腐らんな。イモは?」

タクヤ 「フライドポテトは、アメリカのジャガイモ畑の近所にあるポテト専門の会社の工場で、選別、カット、フライされて、すぐ冷凍。これを輸入して店舗に配送します。これまた、アメリカの工場を出てから店のフライヤーに放り込まれるまで、カチンカチンの冷凍です」

リョウ 「はー。てことは何か。あのフライドポテトは工場と店とで2回フライされるってわけ?」

タクヤ 「あ、知らなかったんですか? 二度揚げの発明で、ああいうカリカリのフライドポテトができるようになったんですよ」

リョウ 「そう言えば、『マクドナルド』のフライドポテトは、細くてカリカリしてるな」

タクヤ 「シューストリングっていうカットです。前の話に戻りますが、これがまた水分の少ない状態なわけですよ」

リョウ 「なるほど。そもそも自由水が少ないポテトだったんだ。で、パンはどうなんだ?」

タクヤ 「パンは日本の誰もが知ってる製パン会社に仕様書発注ですね。これは、毎日焼いたものがすぐ届いて、すぐ使われる」

外食チェーンにとって過剰在庫は悪

リョウ 「ほんとにどれもすぐ使うのか?」

タクヤ 「すぐ使う仕組みを作れたから、マクドナルドは成長したんですよ。在庫というものは、金のかかるものです。まずそのものを買う代金が要る。買うために借入を起こせば金利がかかるし、買ったものが在庫として寝ている期間が長くなればなるほど、そのお金を他の事業や金融商品で運用した場合に得られるはずの利益分だけ損をすることになります。在庫であるうちはコストではなく資産ですから節税にもならない」

リョウ 「へー。在庫ってそういう風にとらえるものなんだ」

タクヤ 「もちろん。第一、それを保管しておく倉庫代もかかる。それには冷凍のための電気代も含まれます。店舗でその日使う以上の在庫を抱えるためには、それを置くスペースも必要です。すると、地方や郊外にある工場やデポよりも高い家賃を在庫のために支払うことになったり、駐車スペースを削ったりする必要があるでしょう。店での電気代も余計にかかる」

リョウ 「なるほどな。もし世界3万店についてそれをやったら、莫大な金がマクドナルドから出ていくことになるだろうな」

タクヤ 「しかも、食品は保管している時間が長ければ、いろいろなリスクが出て来ます。災害や停電があれば食品はパーです。衛生管理や防犯や保険のためのコストも膨れ上がるでしょう」

リョウ 「そもそも長く持っていたくないわけだな。工場で作ったものがトラックに乗ってって、お客さんの口へ直行するような形がいちばんいいわけだ」

タクヤ 「外食チェーンは、すべてその形を志向しています。そこまで頭が回らない外食チェーンは、店舗数が増えるに従って、皆つぶれます」

リョウ 「となると、すぐ使うものなんだから保存料を入れる動機がない、というわけか」

タクヤ 「冷めるとまずくなる食べ物ですから、常識的に考えて、買った後で家に置いといて、何日か後に食べるなんていうこともないわけです」

リョウ 「でも、なんか、ほら。入れるといいことあるかなぁ、なんて保存料入れたりしないものかね?」

タクヤ 「隊長。保存料はタダではありません。入れなくて済むものを入れてコストが上がったら、株主が黙ってませんよ。なにしろ、世界3万店が毎日売る膨大な量のハンバーガーにケミカルを入れるコストっていうのは、とてつもなく大きな金額になるでしょう」

●このシリーズの第1話
「マクドナルド」ハッピーセットが腐らない話について

北遥
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もの書き稼業 きた・はるか 理科好きの理科オンチ。