2018年食の10大ニュース[3]

海外の食品安全関連情報を紹介する「食品安全情報(化学物質)」の記事の中からピックアップしました。順不同です。(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室 畝山智香子・登田美桜)

「食品安全情報」(食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報)
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html
  • 工業的に生産されるトランス脂肪酸への対応
  • EUがビスフェノールAに厳しく対応
  • 米国の食品栄養成分表示が改訂される
  • マイクロプラスチック
  • EUで新規食品に関する新しい規則が発効
  • 米国のクラトム製品
  • EUがネオニコチノイド類の屋外使用を禁止
  • 欧州で食品グレードの炭酸ガスが不足
  • 食品への革新的技術の利用
  • その他
    • 米国で電子タバコ対策を強化。
    • カナダ・アルバータでの遺伝子組換え小麦が発見される。
    • 韓国は農薬のポジティブリスト制度導入を決定。
    • グリホサート問題はまだまだ続く。
    • オーストラリア・クイーンズランド州でイチゴへの針混入事件。

(順不同)

工業的に生産されるトランス脂肪酸への対応

 2018年5月にWHOが、工業的に生産されるトランス脂肪酸を世界のフードサプライから段階的に排除するためのガイド「REPLACE」を発表しました。その後、6月には米国でトランス脂肪酸の主な摂取源となる部分水素添加油(PHO)の食品製造への使用を「一般的に安全と認められる」(GRAS)対象外とする規制が施行し、9月にはカナダでも同様に食品へのPHO使用が禁止されました。EUでも最終製品に含まれる工業的に生産されたトランス脂肪の濃度を脂肪100g当たり2gを超えてはならないとする規則を策定中です。

 このように、方法はさまざまですが、トランス脂肪酸の摂取量が多い国では低減化への対応が進みました。

EUがビスフェノールAに厳しく対応

 EUではビスフェノールA(BPA)を食品接触材料(食品の容器包装など)に使用することについて規制が厳しくなりました。2018年9月に施行された新規則では、食品接触材料から食品へのBPAの移行量を規定している特異的移行限度(SML)が以前よりも大幅に厳しく設定されています。対象範囲も広がり、乳児用「蓋付きマグカップ」については製造にBPAの使用が禁止されました。米国では国家毒性プログラム(NTP)の試験結果の公表が始まり、欧州食品安全機関(EFSA)はBPAの再評価に向けて準備を進めています。

 BPAについては数年のうちにまた何か動きがあるかもしれません。

米国の食品栄養成分表示が改訂される

 食品医薬品局(FDA)は、消費者が情報を与えられた上で自ら健康的な食事や食品を選択できるようにするために栄養表示の規制を大幅に見直しました。チェーン展開しているレストランのメニュー表示も新しくなり、総カロリー、総脂肪、飽和脂肪、トランス脂肪、コレステロール、ナトリウム、総炭水化物、糖類、食物繊維、タンパク質といった栄養情報が提供されるようになっています。

 これに合わせてFDAは、事業者が新規制を導入しやすいよう、さまざまな事業者向けガイダンスを公表しています。

マイクロプラスチック

 マイクロプラスチックの問題は数年前から世界的に話題になっていましたが、2018年はとくに注目が集まり、プラスチック製ストローの利用中止やプラスチックバックへの課金など、さまざまな地域で具体的な対策が講じられました。この話題は来年も続きそうです。

EUで新規食品に関する新しい規則が発効

 EUでは、1997年5月15日より前にEU域内で相当量の食経験がないものは「新規食品」(novel food)として扱われます。その関連規則が、技術向上による新しい食品の開発・利用拡大と手続きの簡素化を目的に改正され、2018年1月1日に発効しました。新規食品として申請されるものにはフードサプリメントの原料として使用することを意図したものが多いです。改正された規則では、以前よりも対象となる新規食品の定義が詳細に規定されて、安全性確保のための項目がより厳しくなり、充実しています。

米国のクラトム製品

 米国ではオピオイド鎮痛薬の乱用や依存症が国家的な公衆衛生問題になっています。クラトムにはオピオイド様の特性を持つ成分が含まれているため、オピオイド鎮痛薬の代用品として、あるいはオピオイド依存症・離脱症状の緩和や娯楽を目的とした製品が流通していましたが、健康への深刻な危害があるとしてFDAが販売業者に向けて警告文書を出すなどの対策を始めました。

 しかも3月にはクラトム製品のサルモネラ汚染によるアウトブレイクが発生し、FDAが初めて強制リコールを発出しました。

EUがネオニコチノイド類の屋外使用を禁止

 ネオニコチノイド類の農薬とミツバチとの問題は数年にわたりくすぶっていますが、反対派の多いEUでは3つのネオニコチノイド類(クロチアニジン、イミダクロピリド、チアメトキサム)の屋外での使用を禁止する規則が採択されました。

 ミツバチの減少と関連している可能性への懸念を受けての措置ですが、世界的に見ると、そのような懸念への判断はさまざまです。たとえば、オーストラリアでは飼育ミツバチでも野生ミツバチでも減少は観察されておらず、オーストラリア農薬・動物用医薬品局(APVMA)は国内で使用されているネオニコチノイドについて現時点では見直す予定がないと報告しています。

欧州で食品グレードの炭酸ガスが不足

 メディアでも話題になりましたね。「食品グレード」の炭酸ガスが不足して、食品・飲料業界だけでなく食肉業界なども大きな打撃を受けたようです。

 炭酸ガスの大部分はアンモニア製造の副産物で、アンモニアは肥料に使われます。複数の大手アンモニア工場がメンテナンスのために同時期に休業したことが影響したと報告されましたが、夏を迎える時期のメンテナンスは肥料の需要が最も少ない季節として実施が予め決められていたもので、そこにアンモニア価格の下落で生産も落ちていたことが影響したという話でした。

食品への革新的技術の利用

 ゲノム編集や細胞培養などの革新的技術を食品製造に利用することについて、安全性確保と管理をどのように行うべきかが世界各国で話題になりました。日本国内でもゲノム編集で開発された食品の規制のあり方が議論されました。

その他

  • 米国で電子タバコ対策を強化。
  • カナダ・アルバータでの遺伝子組換え小麦が発見される。
  • 韓国は農薬のポジティブリスト制度導入を決定。
  • グリホサート問題はまだまだ続く。
  • オーストラリア・クイーンズランド州でイチゴへの針混入事件。

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登田美桜
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国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室主任研究官 とだ・みおう 農学博士。国立医薬品食品衛生研究所は、医薬品、食品、その他生活環境中に存在する物質について、品質、安全性、有効性を評価するための試験、研究、調査を行う機関。 安全情報部の「食品安全情報」は、食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報を伝える。