畑の土 xviii/まとめ(3)

土壌の種類のおさらいの続きです。粘土の多い土は保肥力の高いものと言えますが、これにはそれに適した管理をしてやる必要があります。ところが、それが行われていないことが多く、今後農業の大規模化が進めば、この種の問題が拡大する恐れがあります。

重粘土壌で多い管理間違い

 前回は、粘土の多い土壌の圃場では、いかに根に空気を供給して健康を保つかを考える必要があり、その方法もあるというお話をしました。

 粘土がとくに多い土壌を重粘土壌と言いますが、重粘土壌の圃場で営農しながら、こうした方法に思い至らず、管理間違いをしている農家は少なくないものです。多くの農家が、もっと肥料を与えようとか、もっと念入りに耕そうとかと考えてしまうものです。このようなことをしてしまうと、粘土を豊富に持つ圃場の長所を活かすことなく、逆に欠点を助長してしまうという結果になります。土に肥沃さを与える要因が、むしろ害となり、減収を招いてしまうのです。

 農家は営農のプロだから、農家のやることに間違いはないと思っているバイヤーの方も多いように見受けられますが、このようなミスは意外にも頻繁に起きていることです。

農業の大規模化で起こりやすい不都合

 とくに大型規模な畑作経営に転じたという人たちの場合、従来やってきたよりも多くの畑を耕すことになるために独特の不都合を生じることが多いものです。

 と言うのは、作物には生長の段階ごとに作業適期というものがあります。播種一つとっても、何月のいつからいつまでの間に開始して完了しなければならないものです。ところが、少ない人数、少ない農機で広い面積をこなそうとすると、適期の期間中にフル稼働の状態、つまり“いっぱいいっぱい”の状態で当たるということになりがちです。

 しかし、圃場にも事情というものがあり、365日いつでも農家がやりたいことをやれるというものではありません。雨の日はもちろん外の作業はできないわけですが、雨が上がった後ですぐに耕うんができるかと言えば、そうはいかないわけです。砂土などでは、多少の無理を押して耕してしまっても、あるいは影響は軽微かもしれません。ところが、粘土の多い圃場で、スケジュールを優先するがためにまだ湿った状態で耕うんしてしまえば、土を練り込み、根が酸欠状態を起こす準備をしてしまうことになるわけです。

生産者と需要者のタッグで土壌を生かす

 これはよく考えておかなければならない問題です。農業の規模拡大にともなって、重粘土壌でこのような営農が行われていけば、従来は特別な土で特別な圃場にだけあった欠点が、より広い地域で顕在化することになっていくでしょう。しかも、この欠点とは、圃場のすべての性質をだめにしてしまうものですから、深刻なものです。

 こうした大問題を起こさないためにも、畑の土壌型を知ることが生産現場にとっては重要なことなのです。それぞれの圃場の土の性質をしっかりと理解し、それぞれの土の性質に合った管理方法を採っていくという考え方を、普及・浸透させたいものです。こうした働きかけは、従来は農林水産省や地方自治体や農協が行ってきたことではありますが、これからは小売業、外食業、流通業など、農産物を扱う企業の方にも、そうした役割を担っていただくことを期待したいものです。

 この畑の土壌型は、そこで採れる作物の性質を大きく左右するものです。生産者と需用者が、その圃場の特徴を理解した上で、上手に役割を分担し、さらなる農業の発展に結び付けられるはずです。

About 関祐二 101 Articles
農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。