一農家としてTPP参加に賛成する(2)

アメリカの圃場で。播種機を付けたこのトラクタは小型の部類
アメリカの圃場で。播種機を付けたこのトラクタは小型の部類
アメリカの圃場で。播種機を付けたこのトラクタは小型の部類
アメリカの圃場で。播種機を付けたこのトラクタは小型の部類

経済的に豊かな国の農業が、豊かなのである。それはアメリカの農業を見ればわかるし、他の小さな国を見てもわかる。ただし、農業を社会から切り離して考える限り、その真実は見えない。

いちばん豊かな農業をやっているアメリカ

 話をTPP自体の方に修正しよう。

 農業に関して言えば、多くの方が勘違いしていることがある。それは豊かな経済力(予算)がある国は農業予算も多くあり、生産者もその恩恵にあずかることができると言う積極的事実がある。決して消極的な発言ではない。

 たとえばここに20歳の女子大生100人集めて、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの4か国中、どの国で農業をやりたいですかと質問をしてみよう。

「ん~、カナダ」「オーストラリア!」と答えることはあっても「アメリカ」と答える女子大生はほとんどいないだろう。イメージとして、カナダ、オーストラリアのほうが“自然が豊か”“広い平原”“平和そう”と感じるに違いない。“アメリカ勝ち組洗脳教育”を受けているはずの私の子供たちでさえ「アメリカはね~、ちょっとマズイんじゃない」なんてことを平気で言う始末だ。

 しかし、現実的にいちばん豊かな農業をやっているのはアメリカであり、それを支えているのはアメリカの農業生産者たちである。そんなことは中学生程度の地理と社会、そして小学校3年生程度の算数の知識があれば、その国のGDP、人口、農地面積、農産物収量を計算して簡単に理解できるはずだ。なのに、なぜが20歳の大学生はトンチンカンな回答をすることが出来て、それを許す社会があるとすれば、おかしいと思わないだろうか。

経済規模が小さければ農業も小さい

 確かに20歳の女子学生が農業に関心はあっても、どのくらい農業に関与できるかは疑問ではある。だが、普通のアメリカ人の女子学生と考え方があまりにも違うのであれば、やはりTPPの考え方の一つである知識や情報の共有も必要になってくるだろう。

 日本の人口が今の半分であれば、簡単に計算して予算規模は半分以下になり、人口が600万人程度のニュージーランド程度になれば、農業予算はニュージーランド程度になり、私のトラクタは20馬力の芝刈り機程度になる? しかし一人当たりの経営面積が大きくなるので、むしろ陸上自衛隊のハイテク戦車“10式”よりも大きな500馬力トラクタになっているかも知れない(馬力は10式の方が上だ)。

 ではニュージーランド農業ではよいではないか、と言う話にはならない。ざっと調べてみると2005年のアメリカの農業予算は802億ドルで、1農家当たりでは3万8000ドルである。それに対してニュージーランドの農業予算は11億NZドルで、1農家当たりの予算は1万7000NZドル(当時の1万2000USドル)でアメリカの1/3以下でしかない。しかも、現在ではその差はもっとあるようだ(ちなみに左翼に好きな人が多いEUの1農家当たりの予算は5000ドルである)。

 いくらニュージーランドの物価が安いとは言っても、国家予算が少なければ農業が成り立たないのは当然である(間違いがあるかもしれないので、みなさんも調べ直してみてくださいね)。

経済を強くする道は選んで当然

 つまり、強くて経済が豊かな国家予算の元に農業があるのは当然のことである。そして、経済を強くできるTPPであるのだから、積極的に参加すべきは当然のことだ。

 農業のみを語っていたら、アメリカ人が言う social idiot になるだけである。

宮井能雅
About 宮井能雅 22 Articles
西南農場有限会社 代表取締役 みやい・よしまさ 1958年北海道長沼町生まれ。大学を1カ月で中退後、新規就農に近い形で農業を始め、現在、麦作、大豆作で110ha近くを経営。遺伝子組換え大豆の栽培・販売を明らかにしたことで、反対派の批判の対象になっている。FoodScience(日経BP社)では「北海道よもやま話」を連載。