ブラックベリー関連のA型肝炎

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.24(2019.11.27)を発表した。

注目記事

【米国】ブラックベリー関連のA型肝炎

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、3州(インディアナ、ネブラスカ、ウィスコンシン)の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているA型肝炎アウトブレイクを調査している。

 本アウトブレイクは、米国中西部を拠点とする食料品チェーンFresh Thyme Farmers Marketの店舗で2019年9月9〜30日に販売された非有機栽培の生鮮ブラックベリーに関連している可能性がある。ただし、生鮮ブラックベリーに共通する単一の供給業者は特定されていない。FDAおよび複数州の食品規制当局は、患者が生鮮ブラックベリーを購入したと報告した複数の店舗から記録類を収集し、当該ブラックベリーの具体的なブランド名や卸売業者を特定するため追跡調査を行っている。

【米国】ロメインレタス関連の大腸菌O157:H7

 米国疾病予防管理センター(US CDC)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、カリフォルニア州Salinasの栽培地域で収穫されたロメインレタスに関連して複数州にわたり発生している志賀毒素産生性大腸菌O157:H7感染アウトブレイクを調査している。

 患者の発症日は2019年9月24日〜11月10日である。情報が得られた患者39人のうち28人が入院し、このうち5人が溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した。死亡者は報告されていない。

 聞き取りが行われた10人のうち8人がロメインレタスの喫食を報告した。メリーランド州の患者は、サラダ製品「Ready Pac Foods Bistro Chicken Caesar Salad」の喫食を報告した。現時点では、他州の患者はカリフォルニア州Salinasの栽培地域由来のロメインレタスが使用されている当該サラダ製品の喫食を報告していない。

 メリーランド州保健局(MDH)は、同州の患者1人の自宅で採取された未開封のサラダ製品「Ready Pac Foods Bistro Chicken Caesar Salad」に使用されていたロメインレタスから大腸菌O157を検出した。

 暫定情報では、一部の患者がカリフォルニア州Salinasで栽培されたレタスを喫食したことを示している。当該ロメインレタスに共通する栽培業者、供給業者、卸売業者およびブランド名は特定されていない。

 CDCは、消費者および小売業者に対し、詳細な情報が明らかになるまで当該地域由来のロメインレタスの喫食または販売を避けるよう注意喚起している。CDCは汚染源の特定および他に関連している製品があるか否かの調査を継続している。

【ドイツ】低脂肪乳のエロモナス・ハイドロフィラ汚染

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)によると、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)汚染により、1製造業者が低脂肪乳の回収を発表した。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、これを機にA. hydrophilaに関するQ&Aを発表した。

Q. hydrophilaはどのような細菌か

A. hydrophilaは運動性を有する桿菌で、細胞傷害性毒素を産生する。自然界に広く分布するが、主に地表水(湖、川)から見つかっていることから水媒介感染性細菌とされている。魚類のほか、昆虫、飼育動物、家畜からも見つかっている。水産食品の汚染が多いが、家畜由来の食肉、野菜、乳製品からも検出される。

Q. hydrophilaの感染によってどのような症状が引き起こされるか

A. 食品を介して感染すると胃腸感染症(胃腸炎)を発症することがあり、症状は下痢、悪心、腹痛などである。症状のほとんどは、特別な治療を受けなくても消失する。治癒しない場合は、医療機関を受診すべきである。免疫機能が低下しているまたは未発達の人は重症化する可能性があり、敗血症(血液中毒)を発症する場合がある。

Q. 生残する菌が少ないはずである低温殺菌乳に汚染が起こり得るのはなぜか

A. 低温殺菌(60℃〜100℃の範囲内の短時間加熱)によりエロモナスなどの微生物は確実に死滅するため、汚染が発生するのは殺菌処理後であると推測される。

Q. 汚染乳をすでに喫飲してしまった場合はどうすべきか

A. 健康な人では症状が出ないことが多いため、感染しても症状が弱いか見られない可能性がある。しかし、当該乳の喫飲後に胃腸感染症の症状(悪心、下痢など)が現れた場合は医師に相談し、汚染乳を喫飲したことを報告すべきである。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.24(2019.11.27)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2019/foodinfo201924m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 生鮮ブラックベリーに関連して発生しているA型肝炎アウトブレイク(初発情報)
2. ロメインレタスの喫食に関連して複数州にわたり発生している大腸菌O157:H7感染アウトブレイク(2019年11月22日付更新情報、20日付初発情報)
3. 牛ひき肉に関連して発生しているサルモネラ(Salmonella Dublin)感染アウトブレイク(2019年11月19日付更新情報)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 欧州連合(EU)域内の組織的なモニタリングプログラムおよび調査による科学的データの公表

【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. 主要小売業者が2019年4〜6月のカンピロバクター汚染検査の結果を公表

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 牛乳の回収:水媒介感染性細菌エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)に関するQ & A

【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. サルモネラ属菌タイピングについて欧州連合サルモネラリファレンス検査機関(EURL-Salmonella)が実施した第20回検査機関比較調査(2015年)