大きく安価な野菜が豊富に並ぶ

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すべての野菜には来歴がある。たとえば、トマトである。原産地は南米アンデス高原と考えられている。これがメキシコに伝わり、食用として栽培されていた。16世紀、これを欧州に伝えたのはスペイン人とされる。ここから各国に伝播する。それでも、当初は観賞用であり、欧州で食用とされるのは18世紀になってからになる。

未包装・量り売りの合理性

中国の野菜売場。ナスはビッグサイズ。少々のキズは気にしない。
中国の野菜売場。ナスはビッグサイズ。少々のキズは気にしない。

 個々の野菜の来歴はさまざまだが、現在の野菜売場の顔触れは各国どこでもよく似た状態と言える。中国の売場でも、日本にある野菜の大部分は手に入る。チンゲンサイは日本でも現在は普通に栽培されているが、1970年代に中国から伝わったものである。

 しかし、日本では見かけない野菜もかなりある。そして、一見して感じる大きな違いがある。野菜の大きさである。ビッグサイズが多いのだ。ナス、ピーマン、インゲン、カリフラワーなどでとくに感じる。広大な大陸で育つと、野菜もデカクなるのかと思ってしまう。なお、大きいからと言って、決して大味なわけではない。中国では油を多く使うが、ナスの炒め物は油と調味料がしみ込んで実に美味である。

日本ではあまり見慣れない野菜。アブラナ科らしい、直径約20cm。
日本ではあまり見慣れない野菜。アブラナ科らしい、直径約20cm。

 売り方は重量が基本になる。「1斤何元」(1斤は500g)と表示されている。欲しい野菜を袋に入れて売り場の店員に渡すと、単位を合わせて秤に載せる。すると価格が印刷されたラベルが出て来て、それを袋に貼ってくれる。大きなスーパーでは予めパックした野菜も置かれている。もちろん、重量が違うため、パックごとの値段は異なっている。

 これこそが世界標準の売り方だろう。日本ではサイズをそろえてパックして、同価格で販売している。この異常さに改めて気が付くのである。もちろん、このやり方の場合は小さくないコストがかかっているはずだ。さらに、日本式ではサイズが合わないものや少しでもキズがあると商品にはならない。食品ロス削減法が成立したが、こういうシステムにもメスを入れるべきではないだろうか。

野菜は安価。ただしトマトを除く

 大きなスーパーにおける価格例を挙げておこう(2019年12月。1斤=500g当たり。1元は15円で換算)。

  • 泥付きニンジン1.2元(18円)
  • ナス3.0元(45円)
  • カリフラワー4.5元(68円)

 このように、日本と比べれば圧倒的に安価である。ただしトマトは別格で、中玉サイズ4個パックで17.4元(261円)と高価だった。

 中国の野菜に関して、残念な点にも触れておこう。トウモロコシである。蒸かしたものがコンビニなどで広く売られており、料理にも出てくる。日本人なら、スイートコーンを頭に描いて口に入れるわけだが、そのとたん、ガッカリ感の到来である。餅種ではないがねっとりした食感の一方、全く甘くない。

 しかし一度だけ、缶詰めではないスイートコーンに遭遇したことがある。存在することは確認できたが、どうして普及しないのだろう。疑問である。

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About 横山勉 99 Articles
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。