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セルビア第二の都市ノビサド

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朝露に濡れるコテージで迎えたセルビア2日目の朝。


リンゴの収穫風景。

リンゴの収穫風景。

 今日は昨日とは別の果樹園に向かう。こちらではリンゴの収穫の真っ最中だったので、教科書やテレビでしか見たことがなかった穫り入れの風景を折よくカメラに収めることができた。

 日本の苗木から育てたリンゴは高級品として引き合いも上々、食用としてロシアなどに輸出されるという。視察中は果物や酒のことばかりで話題にし忘れたが、こちらドネラー果樹園のオーナー、ヴァーシャ・ストイコビッチさんの車のエンブレムはトヨタだったので、日本好きな方だったのかもしれない。

 こちらの果樹園では自家醸造のワインを試飲させてもらった。ペットボトルに入っており、自宅で飲む分には問題ないと言う。ウクライナあたりではサマゴン(自家蒸溜)の文化があり、ここに来るまでにも自家醸造・自家蒸溜の話はよく耳にした。また、ほとんど見たことがなかったクルミの実がなっているところも見つけた。

自家製ワインを勧めてくれるドネラ果樹園のヴァーシャ・ストイコビッチさん。東欧では自家消費のための個人醸造と蒸溜が認められており、日本とは様相が異なる。

自家製ワインを勧めてくれるドネラ果樹園のヴァーシャ・ストイコビッチさん。東欧では自家消費のための個人醸造と蒸溜が認められており、日本とは様相が異なる。

青胡桃のリキュールを買う

クロアチアのリキュール「オルホバック」にも使われている青いクルミ。

クロアチアのリキュール「オルホバック」にも使われている青いクルミ。

 夕方、昨日に続いて再開されたラキアの日本輸出に向けた話し合いも筆者が帰国後のレポートで触れることで一件落着し、ノビサドの街に繰り出すことになった。最初の目的はスーパーの酒売り場の視察で、大きな屋内駐車場があるビルの中に入り、酒売り場を目指す。ブダペストでは酒屋とバー、パブは撮影したものの、スーパーの写真撮影がうるさいのは洋の東西を問わないらしく、黙って取るわけにもいかない。ハンガリー政府観光局のエディットさん経由でスーパーの責任者を呼び出して……となると大ごとになりそうだったのでスーパーの写真は取らずじまいだった。ノビサドでは納品先の社長と同行していることもあり、何枚かをアイフォンで撮影できた。やはり、ラキアはセルビアの酒売り場でも目立つ棚に置かれていたことを確認して他に目を転じる。

プレミア物のラキアは2299ディナール≒2500円。平均月収が3万円の国だから日本の感覚でいうと3万円位の感覚だろうか。プロモント社のラキアはこのスーパーで4159ディナールだったから、更に倍近い高級品と言うことになる。

プレミア物のラキアは2299ディナール≒2500円。平均月収が3万円の国だから日本の感覚でいうと3万円位の感覚だろうか。プロモント社のラキアはこのスーパーで4159ディナールだったから、更に倍近い高級品と言うことになる。

 ウイスキーではメジャー系のモルトが5種類ほどでブレンデッドやバーボン、カナディアンやアイリッシュをまとめて並べており、ラキアのスペースと広さがほぼ同じだった。テキーラがちょっと面白くて「オルメカ」や「マリアッチ」「サウザ」に「クエルボ」という日本でも見掛ける銘柄以外に「PEPE LOPEZ」「AGAVITA」「SIERRA」といった見掛けない銘柄があった。日本では次から次にプレミア系、スタンダード系取り混ぜて新顔テキーラの輸入ラッシュが続いているが、この辺の銘柄も入って来ているだろうか。「ヴィニヤック」は買うほどのこともないし……と目についたクロアチアの「オルホバック」という青胡桃のリキュールを買うことにした。帰国後に試してみるとクルミリキュールの「ノチェロ」というよりも薬草系の「イェーガーマイスター」に近い濃厚な味わいだった。

知られざる街ノビサド

セルビアに夜のとばりが下りてきた。

セルビアに夜のとばりが下りてきた。

 スーパーの視察を終えた頃にはそろそろ夕闇が迫ってくる時間になっていた。切なさを感じる夕暮れが少しくたびれた社会主義スタイルのビルに妙にマッチするのは筆者が知る昭和50年代の北海道の公務員住宅に似ているからなのかもしれない。

「今日の夕食はノビサド市街を一望できるレストランでとることになりました」そう筆者に告げて2人は歩いて行く。

 日本人の海外旅行ブログはヨーロッパの街という街を網羅している感があるほど充実しているが、そんなブログの世界でも「ノビサド」や「ノヴィ・サド」は日本語で書かれたブログの数自体が少なく、検索しても欧州縦断旅行の中継地か、サッカーの試合が同地のスタジアムであったときのスポーツ記者の方が駆け足で滞在したときに書かれたものしか見当たらない。

 ユーゴスラビアが分裂した後、アドリア海と有名な観光地はまるごと隣国クロアチアが持って行ったためにセルビアは観光立国ではない。さらに、首都であるベオグラードに機能が集中していて、ノビサドは第二の都市とは言っても緑が多いノンビリした町であること(ボージョ・ツィツミル社長談)。そんなことから、ノビサドを訪れる日本人は少ない。

 そこを地元の方と親しく歩く。贅沢を言えば、筆者としてはもう少しノビサド市街を歩いてみたかったのだが、英語が通じるかどうかもわからない土地で、人通りもまばらになる夜に迷子にでもなったらシャレにならない。

 この原稿をほぼ書き終えた頃、日本人の方によるセルビアの詳細なWebサイトを見つけた。やはり、いるところにはいるものだ。首都のベオグラード中心に活動されている方が書かれたものらしいが、ノビサドに関する記事もあり、筆者が帰国後に当たったセルビア関連ブログのなかではいちばん詳しかった。日本人がほとんど行かない未知の国セルビアに興味をお持ちの方はお試しいただきたい。

「セルビアのあれこれ」
http://www.serbianwalker.com/

懐かしいインテリアの店

 昭和の香りを感じさせるエレベーターで最上階に上がる。店名が「ノビサドのカフェクラブ・ジアルディーノ」というイタリアっぽい名前だったことが、あとで筆者をあわてさせることになるとはこの時点では気付いていない。エレベーターのドアが開くと広い屋上にはカフェのような席が立ち並び、バックライトの光に洋酒の瓶が並ぶ、お洒落なバーカウンターもある。夏場には多くのノビサド市民で賑わったに違いない。後から考えればここでもちょっと中のバーテンダーと話してみたかったし、できればマティーニを頼んでみたかった。

 店内はゴージャス、といういささか時代がかった表現が似合う落ち着いた空間で、暖炉を模した位置に席が用意されていた。ここでも昭和40年代の建築雑誌に出て来そうな懐かしい照明が店内を照らしている。

屋上のイタリアン・レストランからはノビサド市街が一望できる。

屋上のイタリアン・レストランからはノビサド市街が一望できる。

執筆者

石倉一雄
石倉一雄
Absinthe 研究/洋酒ライター いしくら・かずお 1961年北海道生まれ。周囲の誰も興味を持たないものを丹念に調べる楽しさに魅入られ、学生時代はロシアの文物にのめり込む。その後、幻に包まれた戦前の洋酒文化の調査に没頭し、大正、明治、さらに江戸時代と史料をあたり、行動は図書館にバーにと神出鬼没。これまでにダイナースクラブ会員誌「Signature」、「男の隠れ家」(朝日新聞出版)に誰も知らない洋酒の話を連載。研究は幻の酒アブサン(Absinthe)にも及び、「日経MJ」に寄稿したほか、J-WAVE、FM静岡にも出演。こよなく愛する酒は「Moskovskaya」。