おふくろの味「油揚げ」

油揚げのよさの一つは、袋として食材を包み込める点にある
油揚げのよさの一つは、袋として食材を包み込める点にある
油揚げのよさの一つは、袋として食材を包み込める点にある
油揚げのよさの一つは、袋として食材を包み込める点にある

油揚げの形は、ユニークな袋状である。そのまま食べてもよいが、さまざまな食材を包み込むバツグンの包容力を有している。この食材こそが、新世紀になっても“おふくろの味”と言えるのではないだろうか。

おふくろの味あれこれ

 おふくろ(母親)の味が、レトルト食品や冷凍食品になったと言われて久しい。それでもアンケートを取れば、昔ながらの料理がピックアップされており、ホッとする。「gooランキング」の「いくつになっても懐かしい 好きなおふくろの味ランキング」(http://ranking.goo.ne.jp/ranking/013/homemade_dish/)では、上位に(1) 肉ジャガ、(2)味噌汁、(3) 炊き込みごはん、(4)きんぴらごぼう、とある。「おふくろの味BEST10」というWebサイト(http://ofukuro10.com/)では、同様な料理の他に、サバの味噌煮、切り干し大根、卵焼き、唐揚げなどが認められる。

 上記のランクには入っていないが、文字通りの“おふくろの味”と言えるのが、油揚げ料理ではないだろうか。油揚げこそ“袋”として使用できる優れた食材である。

 巾着(きんちゃく)と言えば大切なお金や薬を入れてひもで口を締める小袋を指す。油揚げに食材を詰めて、干ぴょう等で口を縛った料理をやはり巾着という。中に詰める食材は、餅、卵、野菜、凍り豆腐とさまざまだ。と言うより、何でも包み込める豊かな包容力を誇る袋なのである。

 いなりずしも油揚げの袋の特徴を生かした料理である。今日、これは忙しい人にも簡単に作れるようになっている。準備するのは市販の五目ずしのたねと味付け油揚げ。前者をご飯に混ぜ、後者に詰めるだけのお手軽料理。わが家でも時々作るが、甘辛さがちょうどよく、つい食べ過ぎてしまう。

油揚げの製造法と変わり種

がんもどきはおでんや煮物に欠かせない存在感を示す
がんもどきはおでんや煮物に欠かせない存在感を示す

 油揚げの製造法を説明しよう。まず、固めの豆腐をスライスして圧搾、脱水する。これを低温の油(110~120℃)で揚げて膨張させる。続いて、高温の油(180~200℃)を用いてカラッと二度揚するのが要点である。揚げ油には菜種油を用いることが多い。三度揚げすることもあるという。

 厚いスライスを使用すれば厚揚げになる。また、木綿豆腐を崩して水切りし、すりおろしたヤマイモ、刻んだニンジン、ゴボウ、ゴマ、海藻などを混ぜて揚げれば、がんもどき(雁擬き。関西では飛竜頭=ヒリョウズ、ヒロウス)になる。どこが雁の肉に似ているかわからないが、おでんや煮物では欠かせない存在感を示す。

 江戸時代初期の書物「本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)」には、現在とほとんど変わらない油揚げの製造法が記されている。ただし、製造が全国に広がるにつれ、変わった形状も生じている。宮城県定義山(じょうぎさん)西方寺では、シャレのような三角形の通称「三角定規揚げ」、新潟県の栃尾(現在は長岡市内)一帯では、通常の3倍の大きさがある「あぶらげ」が作られ、名物になっている。

キツネかタヌキか

 甘辛く煮た油揚げが熱いそばの上にあれば「きつねそば」である。揚げ玉が載れば「たぬきそば」になる――というのは、関東の常識。大阪なら、油揚げがうどんに載って「きつね」、同じく油揚げがそばに載って「たぬき」になる。名古屋では「しのだうどん」、その他の地方では「稲荷うどん」と呼ぶことが多いようだ。

 東アジアでは、多少形状が違っても油揚げを入手できそうだ。しかし、欧米では困難な様子である。日本国内であれば手に入らないということはないが、地域により呼称が違うのは興味深く、転勤した方は戸惑うに違いない。

 ともあれ、煮てよし、さまざまな食材を包み込んでよし、そのままみそ汁に入れるもよしの油揚げである。日々の生活に大切な食材であることを再認識したい。

横山勉
About 横山勉 57 Articles
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。元ヒゲタ醤油品質保証室長、2010年独立。食品技術士センター副会長(http://fpcc.jimdo.com/)。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(http://blogs.yahoo.co.jp/teckno555)。