ジーヴァイン「GIN CONNOISSEUR PROGRAM 2013」東京予選レポート

「GIN CONNOISSEUR PROGRAM 2013」――そのカクテル競技会が開催されたのは、盛況に終わった東京インターナショナル・バーショー(以下TIBS2013。「『Tokyoインターナショナル・バーショー2013』レポート」(1)参照)の興奮さめやらぬ4月22日。そう、翌日である。

知られざる大イベント

出場者
GIN CONNOISSEUR PROGRAM 2013」東京予選出場者

 連載「洋酒文化の歴史的考察」「X 帝国ホテルのマウント・フジ」シリーズで後日取り上げるのだが、ある非公開のカクテル競技会を最近取材したこともあり、この際だから珍しそうなカクテル競技会はみんな見てみよう……そんな気持ちで、TIBS2013取材の疲れを押して会場に向かった。

 TIBS2013の「なでしこバーテンディング」の趣向も意表を突くものだったが、「GIN CONNOISSEUR PROGRAM」も異色さでは負けていない。

 まず、募集窓口が日本にない。インターネットでフランスのWebサイトにアクセスしてエントリーシートに入力する。資格は「ジーヴァイン」(「バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2013洋酒レポート」(1)参照)というフランス産のジンが好きだということで、カクテルを作った経験のない素人でも構わない。同サイトでは、このカクテル競技会に向けた意気込みも文章(英語)や動画でアピールする。

 ジン単品のメーカーの競技会で他のスポンサーが付いておらず、国内メディアを使った告知もなかったので、この競技会があることを知らなかったバーテンダーの方も多いことだろう。しかし、日本大会での優勝者には世界大会へのチケットが与えられ、さらに世界大会で優勝すると、トロフィーと3000ドルの賞金、2012年のGolden Spirit Award受賞者フィリップ・ダフ(Philip Duff)によるマンツーマン・トレーニングの機会、「Tales of the Cocktail 2013」(米国ニューオリンズ)、「Bar Convent Berlin 2013」(独ベルリン)、その他世界各地で行われるジーヴァインのイベントに参加できるといった、そこらのカクテル競技会では太刀打ちできないほどの特典が用意されていたのだ。

バーとは異なる空気の中

R2 SUPPER CLUB
会場となった「R2 SUPPER CLUB」

 夏の始まりを感じさせる蒸し暑さの中、会場となった「R2 SUPPER CLUB」(東京・六本木)に到着すると、間もなくジーヴァイン・ジンの商品特性を説明するセミナーが始まった。聴衆の数は30名ほどだろうか。

 この辺から雲行きが怪しくなってくる。観客はどういうつながりなのか、誰しも互いに知り合いの様子で、出場者の友人たちやこのクラブの客らしき人々が、第2部のカクテル競技会の審査のために続々とやって来る。他にメディアの人間はいない。

 この店のことを事前にあまり考えずに訪ねたのだが、ここが西麻布にほど近い“オシャレな”“六本木の”“クラブ”という、筆者がいちばん苦手とする場所であることに、鈍感な筆者もようやく気付いた。コの字型のカウンターには、バーのそれとは趣きを異にするスタイリッシュなライティングが施されている。そう、若者が踊る場所ではなくて、オシャレな業界人やら先端の人々が集う、あの“クラブ”である。

 長く生きていると、アウェーを感じる場所に出没せざるを得ない場合は多々ある。しかし、筆者にとって、大胆に胸の空いたドレスの女性やブランド物のスーツを着こなした、六本木で遊びなれた若者達が挨拶を交わし合う中に独りでいるときの空気の薄さと言ったらない。そこここで談笑する男女の間、一人壁際でカクテル競技会を待って耐えている筆者を見かねて通訳の女性が話しかけてくれる一幕の後、ようやくカクテル競技会が始まった。

フランス本大会は今週

 フランスで行われた書類審査を勝ち抜いて日本大会にエントリーしたのは、女性5名、男性1名の計6名。

 彼らにはコの字型のカウンターの一部がそれぞれ与えられ、そこに思い思いのデコレーションで「自分のスペース」を作る。自分が働いているバーから最近流行のスモーク装置一式を持って来た女性がいるかと思えば、花を飾りつける女性がいる。一人だけ書類審査を勝ち残った男性は、どうやって作ったのか、ジーヴァインの風船で自分の持ち場を飾り、これも手製だというジーヴァインのロゴのシャツでシェーキングを始める。

 会場に集まった客は、1人1枚ずつトークンを渡されている。そして、出場者が調製したカクテルをそれぞれ試飲し、いちばんおいしいと思ったバーテンダーのカウンターの黒い小箱にトークンを入れる。この得点は、ジーヴァインの製造者、現在のブランド・アンバサダー、日本バーテンダー協会(NBA)といった審査員が付ける得点とは別にポイントとして加えられるシステムだった。

 入賞者のアナウンスメントを行ったNBAの上野秀嗣常務理事によれば、一般来場者が選んだ1位と審査員がプロの目で選んだ1位は同じ人だったという。

 その勝者は、ザ・ペニンシュラ東京の鎌田真理さん(ジーヴァインのエントリーではMari NAKANOとなっている)。彼女は、6月9日~14日の日程で世界中からフランスに集まる他の14名と、今まさに世界一の座を争っている最中である。

  • バーテンダー
    コの字型カウンターに持ち場が作られ同時に調整を行う
  • バーテンダー
    各バーテンダーはそれぞれの持ち場を思い思いに飾り付ける
  • スモーク
    スモークを使ったカクテルの調製
  • 鎌田真理さん(Mari NAKANO)
    東京予選を勝ち抜いた鎌田真理さん(Mari NAKANO)
About 石倉一雄 129 Articles
Absinthe 研究/洋酒ライター いしくら・かずお 1961年北海道生まれ。周囲の誰も興味を持たないものを丹念に調べる楽しさに魅入られ、学生時代はロシアの文物にのめり込む。その後、幻に包まれた戦前の洋酒文化の調査に没頭し、大正、明治、さらに江戸時代と史料をあたり、行動は図書館にバーにと神出鬼没。これまでにダイナースクラブ会員誌「Signature」、「男の隠れ家」(朝日新聞出版)に誰も知らない洋酒の話を連載。研究は幻の酒アブサン(Absinthe)にも及び、「日経MJ」に寄稿したほか、J-WAVE、FM静岡にも出演。こよなく愛する酒は「Moskovskaya」。