バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2013洋酒レポート(4)

モーリシャスのプレミアム・ラム「Blue Mauritius」。
モーリシャスのプレミアム・ラム「Blue Mauritius」。

プレミアム・ピスコ

ペルーブースにて。右から2人目がピスコに詳しいバーテンダーの石川和伸さん。
ペルーブースにて。右から2人目がピスコに詳しいバーテンダーの石川和伸さん。

 この辺で去年のレポートの“その後”もいくつか知れて来たのでお知らせしておこう。

 まず、ペルー産グレープブランデーのプレミアム・ピスコ(バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2012洋酒レポート10(2)参照)について。

 筆者は「ピスコ」という音感に、ついつい荒涼としたアンデス山脈を飛ぶ鳥と、栄華を極めながら悲劇で幕を閉じたインカ帝国……というイメージを持つのだが、南国のスピリッツの中では共感や郷愁を呼ぶ名前でもあり、気に入っている。

 ピスコについて日本で熱心に調べている方がおられることを最近知った。西川口でバーテンダーをされている石川和伸さんという方なのだが、彼が書いたピスコのレポートを参考にさせていただいて前回の話を補足する。

 ペルーの特産であるピスコには400年の歴史があり、2006年からはピスコ原産地呼称統制委員会が設立されて、国際的な認知を目指しているという。

 醸造には8種類のブドウが使われ、上級品では蒸溜後にピスクと呼ばれる素焼きの甕(かめ)で3カ月寝かせて味を調える。スコッチの世界ではストーンフラゴン(陶器瓶)はガラスに比較して細かい凹凸があるせいかアルコールや香りが抜けている場合が少なくなく、古いストーンフラゴン入りのスコッチは購入にリスクが伴う。しかし、素焼き容器をこういう使い方で短期間のうちに酒質を落ち着かせる目的で使うと、確かに効果的かもしれない。

ピスコサワー用ミックス。
ピスコサワー用ミックス。

 今年も石川さんが腕を振るったピスコサワーは会場内で好評で、実演の際には人だかりが出来ていた。

 ピスコと言えば現地でも定番のピスコサワーだが卵白を使用するので自宅では少々ハードルが高かった。ところが今回、FOODEX会場で活躍していたのがWASKA社のピスコサワー用ミックス。氷と水にこのミックスを加えてミキサーで1分。ここにピスコを加えてさらに30秒ミキサーにかけてグラスに注ぎ、上からシナモンを振れば本格ピスコサワーの出来上がりだという。完成品は1リットル近くになってしまうので、一人分は出来ないところが難点と言えば難点かもしれない。

 ペルーにはいくつかミックスのメーカーがあるようだが、日本で入手可能なミックスは今のところ写真にあるワスカ社のものだけで「ピスコサワーの素」で検索すると出てくる。輸入代理店を調べたのだが出てこなかったので、興味を持たれた方は「ピスコサワーの素」で検索・発注していただきたい。

ベルギー産ウイスキー「The Belgian Owl」

ベルギー産のウイスキー「The Belgian Owl」のブースにて。
ベルギー産のウイスキー「The Belgian Owl」のブースにて。

 もう一つ、去年の筆者のレポートで取り上げたベルギー産のウイスキー「The Belgian Owl」(バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2012洋酒レポート10(4)参照)は、レポートを書いた時点では代理店が見つかっていなかったのだが、その後成城石井が1パレットを輸入することが決まり、現在では成城石井と一部業務用酒販店で入手が可能だ。

 去年もOwlのブースで対応してくれたベルギー在住の日本人女性の話によれば、国際市場での販売は好調で、今年蒸留器を増設するとのことだった。1パレット分を成城石井が売り切った後の輸入計画は筆者がうかがった時点では未定だったので、興味のある読者には早めの購入をお奨めしたい。

ラムの新風

モーリシャスのプレミアム・ラム「Blue Mauritius」。
モーリシャスのプレミアム・ラム「Blue Mauritius」。
コーヒー、バニラのフレーバーを付けたモーリシャスのラム「シャマレル」。
コーヒー、バニラのフレーバーを付けたモーリシャスのラム「シャマレル」。
中米ドミニカのラム「COFRESI」もフレーバーが面白い。
中米ドミニカのラム「COFRESI」もフレーバーが面白い。

 年々参加国数も入場者数も微減を続けているFOODEXにあって、元気なのが南の国のスピリッツだ。テキーラとラムはそれぞれテキーラ・ソムリエ資格制度、ラム・コンシェルジュ資格制度の取得者も増えてきており、2013年の日本も暑い国の酒が熱くなりそうだ。

 さて、南の国のスピリッツの話は一挙に南下してアフリカ・モーリシャスに飛ぶ。地理が苦手だった筆者は国名を聞いても場所はわからなかったが、アフリカの右下にあるマダガスカル島のさらに右にある、人口180万人という小さな島国で、日本では綺麗な海への観光や遠洋漁業の寄港地として有名な国だという。

 ここでは2社のラムに注目した。

 植民地時代からサトウキビ栽培が盛んで国内向けのラムは生産されていたのだが、最近になって国際レベルのプレミアム・ラムが生産され始めたのがモーリシャス・ラムの始まりだという。去年ドイツの品評会で銀賞を獲得した品質は確かで、看板商品「Blue Mauritius」のゴールドを実際に試飲してみるとフランス・マルティニック系のラムをややヘビーにした感じで後味も上質なスピリッツ特有の広がり方で後味も悪くない。飾り立てていないすっきりしたボトルデザインにも好感が持てるし、「アフリカの上質ラム」という珍しい特徴もあるので日本での販売を望みたいところだ。

 もう一方はコーヒーとラムという相性のよさそうな「シャマレル・コーヒー」と、バニラビーンズを丸々1本漬け込んだ「シャマレル・バニラ」。この辺まで来て閉場時間が迫っていたこともあって、日本でも入手可能(信濃屋扱い)な「シャマレル」は試飲せずに写真のみで通り過ぎたが、見た目の高級感の割に価格が安い(1680円)こともあって、オシャレな部屋のインテリアとしても使えそうだ。

 南の国のスピリッツでは、他にも中米ドミニカのラム「COFRESI」もパイナップルやキャラメル、グレープフルーツ等、色とりどりのフレーバーで目をひいていた。

●モーリシャスのラム「Blue Mauritius」
http://bluemauritiusrum.com/en

●モーリシャスのラム「CHAMAREL」信濃屋扱い

●ドミニカのフレーバードラム「COFRESI」
http://www.vinicola.com.do/home.asp

About 石倉一雄 129 Articles
Absinthe 研究/洋酒ライター いしくら・かずお 1961年北海道生まれ。周囲の誰も興味を持たないものを丹念に調べる楽しさに魅入られ、学生時代はロシアの文物にのめり込む。その後、幻に包まれた戦前の洋酒文化の調査に没頭し、大正、明治、さらに江戸時代と史料をあたり、行動は図書館にバーにと神出鬼没。これまでにダイナースクラブ会員誌「Signature」、「男の隠れ家」(朝日新聞出版)に誰も知らない洋酒の話を連載。研究は幻の酒アブサン(Absinthe)にも及び、「日経MJ」に寄稿したほか、J-WAVE、FM静岡にも出演。こよなく愛する酒は「Moskovskaya」。