「鏡月」の訴求ポイントの妙

 11月の第3木曜日、今年のボジョレー・ヌーボー解禁日の11月20日は今週となりました。

 私はと言えば、猫の額の庭に植えた梅の木が近年いくつも実をつけるようになり、それを仕込んだ梅酒がちょうどよく浸かってきたので、食後にちょっとなめたり、ソーダ割りにして食事といっしょに楽しんだりしています。

 それでこれを漬けた6月の頃を思い出していました。広口瓶を消毒するのにお湯を沸かしながら、妻が買ってきたスピリッツを見るとそれは「鏡月」でした。おやと思って見たところ、それは20度であったか25度であったか。これでは度数が足りないから、もっと強いものを買わなければと、果実酒用の35度のホワイトリカーを買い直したのです。

 それで漬け込みは無事終わったのですが、未開封の「鏡月」が余りました。それで晩酌はしばらく「鏡月」の炭酸割りということになったのです。「最近CMもよくやっているな」と思いながら、いつもの癖で、そう言えばこれは何から作っているのかと原材料表示を探しましたが、記載がありません。なるほど、これはホワイトリカーだったと改めて気付いたわけです。

 連続式蒸留は純度の高いアルコールを得る方法ですから、焼酎甲類(現・連続式蒸留焼酎)は薬品や食品添加物のように、それが「何であるか」が重要であって、「何から出来ているか」はむしろ問題にすべきではないという判断がかつてはあったのでしょう。そして、そのときどきに最も手に入りやすいものを原材料として活用することは、かつての焼酎メーカーに期待される社会的な機能でもあったはずです。

 おそらくはそうした事情から、焼酎甲類には法律では原材料の表示義務が定められませんでした。しかし、2007年以降は日本蒸留酒酒造組合など業界団体の自主基準で原材料表示をするようになっているとのことです。消費者の原材料に対する関心という波が、焼酎甲類にも及んだと言えそうです。

 ただ、「鏡月」を販売しているサントリーは日本蒸留酒酒造組合の会員社ですが、「鏡月」は韓国原産の焼酎で、輸入しているロッテは会員社ではありません。原材料表示がないのはそのことが関係しているのかと思い、サントリーが扱う他の甲類について調べてみたところ、国産の「スーパー樹氷」「大樹氷」「サントリー特製焼酎」はWebで原材料が示されている一方、「鏡月」と国産甲類でも「サントリーホワイトリカー果実酒用」の原材料はWebでは示されていませんでした。

 しかし、「鏡月」の原材料については問い合わせが多いらしく、サントリーのコーポレートサイトの「Q&A」に答えが出ていました。「麦、米、とうもろこし、糖蜜(さとうきび)、タピオカ(芋の一種)です」とのことです(「鏡月グリーン」についての回答)。一度にこのすべてを使っているのではなく、そのときどきにこれらから選んでいるのでしょう。

 それにしてもなるほどと感じたのは、「鏡月」ブランドサイトにある「おいしさの秘密」のコーナーです。ここでは使用する「水」のおいしさを表現しています。さすがコーポレートメッセージに「水と生きる」を採用したサントリーは訴求ポイントが一貫していると感心しました。

※「鏡月」ブランドサイト
http://www.suntory.co.jp/sho-chu/kyougetsu/index.html
※『鏡月グリーン』の原材料はなんですか?
http://www.suntory.co.jp/customer/faq/001790.html

※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

齋藤訓之
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Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。東京栄養食糧専門学校非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →