絶品!至高の肉じゃが「ひまわり」(東京・西早稲田)

肉じゃが
「ひまわり」と言えば肉じゃがの「肉じゃが」
「ひまわり」外観
戸山ハイツそばで明治通りに面した「ひまわり」(東京・西早稲田)

ようやく自転車通勤にぴったりな気温が続くようになってまいりました。今年は、寒気がなかなか去ってくれず、寒がりな自分は難儀していましたが、ようやく気持ちのいい季節! 湿度もさほど高くなく、それでいてお日様の光が届く5月の風は最高なのです。このままずっと、このぐらいの気候でいてくれたらいいのですが……。暑くなりすぎると、今度は熱中症や着替えや冷房に注意! となるわけで……。四季を楽しめる国とは言え、難しいもんでございます。

40超えてのステキな再会

「ひまわり」店内
連日ご近所さん中心に大盛況

 学生時代から、早稲田界隈は地元として散々うろつきまわっていた。で、そんな青春の季節の中では、とにかく「量が多くて肉がイッパイ」がシアワセな食事の原点だったから、そんなお店ばかり探していたような気がする。

 そして、こちらの「ひまわり」さんを知ったのも、学生時代ではないけれど、まぁ若いころ。とは言っても、若い頃は、こちらにそれほど関心があったわけでもなかったのだ。なぜかと言うと「肉!」というお店ではないので、当時の自分はそれだけ肉を求めていたのだろう。

 さて、40歳を超えてから、この年齢なりの自分に合う味のお店を求めていたとき、ひょんなことから、もう一度、このお店に巡り合った。

 あれはステキな出会いだったように思う。

際限なくお金をかけて食材を求めるのでもない、
エッジの立った味を追求するわけでもない、
それでいて、家庭料理からは、半歩だけ離れた、まさに安心して堪能できる定食。

 それが「ひまわり」さんの食事なのだと思う。

お客の願いが作った定食店

金子政嗣さん
金子政嗣さん

 そもそも、こちらは、40年以上前から地元に根を張り、同じ場所で飲食店をやってきた。

 開店当初は「JUN」という中華料理屋さん。三代目で代表取締役の金子政嗣さん(37)曰く、「ずっとここがお店で、2階が自宅。地元として家族でやってきたんです。僕も門前の小僧じゃないけど、小学校とか終わったら、お昼の後に準備中のお店に入って、ラーメンとか作ってたもの」。

 そんな自宅兼店舗が、18年前にビル化。それを機に店名を「ひまわり」と変え、定食屋に生まれ変わった。

「ずっと、お客さんから、ラーメンより定食屋やってくれ、って言われ続けていたんです。西早稲田のこの界隈は、定食屋が少ない。焼魚とか肉じゃがとか食べさせてくれ、ってずっと言われていて……。改装を機に定食屋に生まれ変わったんです」

 お客の中心は、近くの団地のほか、早稲田の学生やタクシーの運転手さんたち。おいしいと評判を呼んで、ずいぶんと遠くから足を運ぶお客もいるという。

「父が10年前に他界して、あとは母と従業員で切り盛りしてた。僕は、学校を出てからしばらく会社員やってたんです」

 その体制に変化が訪れたのが6年前。明治通りの区画整理のため、土地を2mほど削らなければならず、お店を改装したのだ。そのときから、長男の金子さんが店に入ることになった。

「それでも、店のアイデアは全部母親ですよ。『この店で最後だから好きにする』って言って、店の外観から、メニューから、小上がりを作るところまで、全部母親が決めちゃった(笑)」

 金子さんが苦笑するのも無理はない。「刺身を入れるネタケースもほしい」「貸切の宴会スペースもほしい」「外観は無国籍で外にも机があって」……と、すべてお母様が差配したという。

「掘りごたつ式の小上がりは板を敷けばちょっとした広間になりますから、母親がそこでフラダンスの発表会とかしちゃう(笑)。20人以上だったら貸切できるしね。近所じゃあまり貸切できるお店ないんです。学生のお客さんの貸切だと『予算がないから……』っていう難しさもあるけど、なんとかやっちゃう(笑)」

 そんなフレキシブルさと味が受けて、連日の大盛況。食べたいお客がいるからそうそう休むわけにもいかない。

「ウチは、震災の直後も売り上げては落ちなかったんです。僕の小さい頃から来てくれているような常連さんも変わらず利用してくれたし、近所の学生さんたちも。ありがたいことです」

 朝から整えられるおかず、毎日替わる日替わりメニュー、夜のつまみにもなる手作りの惣菜、その味、どれも近所の人にはなくてはならないもの――客が途絶えないのには、理由があるのだ。

「家族は母と妹と僕、そして従業員のみんな合わせて10人以上の規模でやってますが、店は年に5日しか休まないし、朝は近くのタクシー会社のお客さんがいるから6時から開けるし……。まぁ、僕らみんな、よく働きます。仕事が好きなんでしょうね(笑)」

こんな食感初めての肉じゃが

ごはん
つやっつやのごはん

 さて、定食のお味である。お店でとくに力を入れているのが、お米だという。

「母の出身地の長野県の伊那市で、母の実家の隣の農家さんが丹精込めて作った米を、親戚が精米して、叔母が発送してくれるんですよ」

 そんなまさに顔の見えるお米は、炊き上がるとピッカピカに光り、口に入れたそばから甘みが広がっていく。

 そして、ごはんもさることながら、「ひまわり」には名物がある。肉じゃがである。あまりにも人気があり、「『ひまわり』と言えば肉じゃが」と言われるほどの看板メニュー。もちろん、今回も「肉じゃがとメンチカツの定食」をいただくことに。

「ひまわり」店内
店内には長野県伊那市の水田風景の写真。そしてメディア紹介の実績の数々

「『ひまわり』の肉じゃが」は、メディアの取材もひっきりなしだ。

「別に特別なことをしてるわけではないんです。普通に仕入れる材料で普通に作ってるだけなんですが」という肉じゃがだが、その謙遜を額面通りに受け取るわけにはいかない。

 注文してしばらくしてやって来た定食のお盆の上。そこには確かに幸せが待っていたのだった。

 揚げたてで表面カリリのメンチ、そして、熱々のお味噌汁――この日はワカメとタマネギのお味噌汁だった。甘くて実に味が深い! 小鉢、そして、つやっつやに光った大盛り気味のごはん。そしてそして、どーんと大きく異彩を放つ肉じゃが。これらがお盆や狭しと並んでいる。

 わけてもこの肉じゃが――普通にイメージする肉じゃがからすると、倍ほどのジャンボボリューム! ゴロっとしたジャガイモを2つまるまる使っているのだ。

 さて、食事!ということで、おもむろに肉じゃがに箸を伸ばす。

  • 肉じゃが
    「ひまわり」と言えば肉じゃがの「肉じゃが」
  • 「肉じゃが」
    このイモの中心のほうの食感が「こんなの初めて!」

 まず、表面はほっくり。

 しっかり味がしみていて、素敵なにっころがしの風情を醸しているが、イモの中央部分へ食べ進むにつれて、今まであまり感じたことのない食感に行きつく。それが、さっくり、しっとり、という感じなのだ。

 煮えすぎず、さっくりとした中央部分を保ちながら、しっとりした周りのイモがまた舌にすんなり乗って。もう、絶品の肉じゃがなのだった。

 そして、このときに肉じゃがを口の中に残しながら、ご飯をわしっとほおばると……ごはんの甘さが実に上品で、それがまた口の中に広がり、肉じゃがにしみたうま味とあいまって……実に実に、いきなり幸せを実感させてくれるのだった!

 そして、一方のおかずの雄、メンチカツ……。

  • 「メンチカツ」
    これぞメンチカツという「メンチカツ」
  • 「メンチカツ」
    ソースをかけて。またこの中の肉汁が……。

 表面は、揚げたてでカリリ!

 ソースをかけて、いただくことにする。そのソースをまとった有様がまたなんとも、揚げ物の美しい姿! と言うべきか、ステキすぎる眺め。

 おもむろにこのメンチを口に持っていくと……。さっくりとした歯ごたえの表面、その下に、ジュンジュワーと肉汁がひろがっていく。

 その肉汁とソースがからみあっている間に、またご飯をほおばると……これはもう、天国のようなおいしさなのだった!!

 そうなるともう止まらない。

「切干大根」
切干大根。これがまたごはんに合う

 今回の小鉢は、切干大根。これがまた味がしみてていい! またご飯。

 次第に意識がごはんだけになっていく……。

 そしてそして、つけものと、タマネギが甘く滋味深い味噌汁で口の中を洗い流したら……。また肉じゃが出番! ということで、もう食事は、フルスロットルへ一気に勢いを増していくのであった。

 この快楽が780円で得られるなんて、なんて、素敵なお店なんだろう! ヒューッ! と、どんどん食べながらMAXハイテンションの夜へと突き進んでいくのであった……。

 この、今までに食べたことがない肉じゃが。一度、経験してみる価値がある!!


●ひまわり

「ひまわり」外観
夜の「ひまわり」。この外観、外の使い方も母上の考えで

東京都新宿区大久保2-3-10
Tel.03-3202-4788
営業時間
月~金 6:00~14:00、17:30~22:00
土 6:00~14:00、17:30~21:30
日 6:00~14:00

上荻吾朗
About 上荻吾朗 40 Articles
編集者 かみおぎ・ごろう 1964年生まれ。北海道出身。週刊誌記者、漫画編集者を経て、WEB製作会社で勤務。震災後、通勤困難を経験して、メタボ対策のためにも、自転車通勤をするようになる。おいしいものを食べることが何より好きな健康チューネン。いかにも飲めそうなヒゲ面のくせに下戸。