2010年食の10大ニュース[6]

「2010年食の10大ニュース」は予想以上に各界の皆様からご協力をいただきました。食について、正しい情報、真に有益な情報を発信したいという皆様の情熱の強さに改めて敬意を表し、ご協力に感謝申し上げます。

 そして、FoodWatchJapanをご覧くださっている皆様の情熱も感じております。仕事納めが終わった後も閲覧数は高く、スタッフ一同冥利に尽きることと存じ、読者の皆様に感謝申し上げます。

「2010年食の10大ニュース」は当初まとめて一つの記事としてご紹介しようと計画していましたが、ご執筆いただいた皆様の記事の一つひとつがユニークかつ重要な情報を豊富に含んでいますので、編集部で手を加えることはなるべく控え、できるだけそのままの形でご紹介させていただいております。

 本日は一挙7名の方々の記事をお届けします。

 食の安全情報blogのohira-yさんが選んだ1位にはとくにご注目いただきたいと思います。「安心!?食べ物情報」の渡辺宏さんは、ご自身のメールマガジンで発表された10大ニュースをご提供くださいました。大切な批判が含まれています。また、10位にも注目いただきたいと思います。日本食糧新聞社の本宮康博さんからは企業経営とマーケティングの視点が生きたリストをくださいました。

 今夕には、外食産業メディアに携わる4名の方々からの10大ニュースをお届けします。ご期待ください。(FoodWatchJapan 齋藤訓之)

  1. 2009年の食中毒死亡者が0件に
  2. 口蹄疫が宮崎で猛威を振るう
  3. 農林水産省「遺伝子組換え技術の情報サイト」閉鎖
  4. 原料原産地表示やトランス脂肪酸など消費者庁が表示制度の改正に動く
  5. メディアパトロールによる取組み
  6. 猛暑が農産物の品質に影響、コメの等級が大幅低下
  7. 健康食品等の虚偽・誇大表示などに対する消費者庁の行政指導
  8. FoodScienceサイト閉鎖
  9. こんにゃくゼリー
  10. 内閣府の食育イベントに安部司氏が講師として登場

1. 2009年の食中毒死亡者が0件に

 正確には2009年のことですが、報告が出たのは今年なので選びました。

 食中毒による死者は戦後間もないころは毎年数百人ほどに上っていました。しかし、製造や流通技術の発達など、多くの方々の地道な努力の末、ようやく2009年、食中毒の死者が0名となりました。

 さらに、この記録はこの原稿を書いている時点においても死者0件は継続中です(厚生労働省・食中毒統計資料)。この事実が一般には知られることなく、逆に食に関する不安情報がまことしやかに語られるのは残念でなりません。

2. 口蹄疫が宮崎で猛威を振るう

 被害の状況についてはあらためて述べる必要もないと思いますが、あえてこの件について特に印象に残っているのは、農林水産省の原田英男氏がtwitterで行った情報発信です。素早く的確な情報提供は今後の行政の情報提供のあり方を考える上で、一つのモデル事例となり得るものではなかったでしょうか。

3. 農林水産省「遺伝子組換え技術の情報サイト」閉鎖

 民主党の掲げる「政治主導」の負の面が出てしまったのが残念な出来事だと思います。現在では一応アクセス可能になっていますが、以前のコンテンツは大幅に削除されてしまいました。

 遺伝子組換えという技術に対する好悪は別にして、すでに日本は1,600万t以上の遺伝子組換え作物を輸入しています。おそらく、反対派の議員の生活も遺伝子組換え作物の恩恵なしには成り立っていないはずです。そうした現状を踏まえての判断だったのか、疑問が残ります。

4. 原料原産地表示やトランス脂肪酸など消費者庁が表示制度の改正に動く

 トランス脂肪酸の表示ガイドライン、黒糖と昆布巻きの原料原産地表示など表示制度の改正が進んでいます。

 トランス脂肪酸については3回にわたって行われた議論の記録からは、日本において緊急に対策を行う必要は乏しいように思えました。また、黒糖と昆布巻きの原料原産地表示は、過去に食品の表示に関する共同会議においてとりまとめられた報告書にある2つの要件(※1)を満たしているとは思われず、消費者委員会での議論も意見がまとまったとはいえない状態でした。にもかかわらずこれらの制度が実現に向けて進んでしまっていることに不安を覚えます。

※1編集部註:食品の表示に関する共同会議の報告書にある2つの要件は下記のとおり。
要件I原産地に由来する原料の品質の差違が、加工食品としての品質に大きく反映されると一般に認識されている品目のうち、
要件II製品の原材料のうち、単一の農畜産物の重量の割合が50%以上である商品。

5. メディアパトロールによる取組み

 食品安全情報ネットワーク(Food Safety Information Network: FSIN)や食の安全・市民ホットライン(※2)など、これまでにない活動を行う組織が出てきました。

 FSINは食品の安全に関する報道を科学的視点から検証し、不適切と思われる場合には抗議ではなく対話という形で働きかけを行っています。また、食の安全・市民ホットラインはネットで不具合情報の事例を集め、問題がある企業等に抗議を行っています。

 これらの組織が今後どのような活動を行っていくのか注目しています。

※2 編集部註:それぞれのWebサイトは下記。

6. 猛暑が農産物の品質に影響、コメの等級が大幅低下

 記録的な猛暑により、多くの農産物が影響を受けました。特にコメの品質低下は大きな話題になりました。米穀検査によるコメの等級については、斑点米や未検査米の原料原産地表示などを問題にする向きもあります。等級制度を今後どう位置付けていくのか、抜本的な見直しが必要な気がします。

7. 健康食品等の虚偽・誇大表示などに対する消費者庁の行政指導

 食品表示については疑問点の多かった消費者庁も健康危害の恐れのある表示への指導では良い働きを見せました。「アレルギー患者が食べられる」と称する卵の販売サイトや、インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する指導は、放置すれば健康被害が実際に発生する恐れもありました。今後もこうした取り組みは強化していくことを期待しています。

8. FoodScienceサイト閉鎖

 食の安全に関する質の高い情報を提供していた、日経BP社の「FoodScience」が惜しまれながら終了しました。サイエンスライターの松永和紀さんのことを知ったのもあのサイトがきっかけでしたし、本当に多くの事を学びました。今後、「FoodWatchJapan」が「FoodScience」に代わるようなサイトになってくれることを期待します。

9. こんにゃくゼリー

 消費者庁はこんにゃく入りゼリー等の物性・形状等改善に関する研究会報告書を取りまとめ、それを元に力学特性、形状等の改善の促進、個包装の警告表示等、表示の改善の徹底、菓子売場以外での販売や店頭における注意情報の提供の推進を関係者に要請しています。

 過去に行われた国民生活センターの調査でも店舗における販売状態に改善の余地があることは指摘されていますし、その改善を求めることには私も賛成です。しかし、ゾーニングが徹底されてもなお、形状等に今以上に配慮すべきなのかについては疑問を感じています。

 また、こんにゃくゼリーへの規制強化には消費者の反対意見が多いような印象を受けますが、日本人への影響は少ないとみられているトランス脂肪酸への規制には賛同意見が多いように感じるのは、興味深いと思っています。

10. 内閣府の食育イベントに安部司氏が講師として登場

 私を含め、この人選を嘆いた関係者は多かったようです。自治体で食育や食品安全などの講演を企画する場合、誰に依頼すれば適切なのかが解らず、「有名な人」へ依頼してしまうという事情が存在するようなので、ある意味仕方がないことだったのかもしれません。

 悪貨が良貨を駆逐することのないよう、適切な人材を検索・紹介できるような仕組みが必要なのでしょうか。


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食の安全情報blog主宰 おひら・かずたけ 「食の安全情報blog」筆者。食品関連の仕事に従事。