O157の可能性で牛肉回収

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.09(2021.04.28)を発表した。

注目記事

【米国】O157:H7汚染の可能性で骨なし牛肉製品を回収

 米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)は、輸入業者であるJBS USA社(コロラド州Greeley)が、大腸菌O157:H7汚染の可能性がある輸入骨なし牛肉製品約4,860ポンド(約2,200kg)を回収していると発表した。回収対象の冷凍生骨なし牛肉製品は、2020年11月10日前後に米国に輸入された後、加工用として出荷された。

 回収対象製品は、内容量が60ポンド(27.20kg)の段ボール箱入りで、包装ラベルに「95CL BONELESS BEEF PRODUCT OF AUSTRALIA(赤身率95%のオーストラリア産骨なし牛肉)」「PACKED ON:02-SEP-20(包装日:2020年9月2日)」および「EST.4(オーストラリアの施設番号)」の表示がある。

 これらの製品の喫食による健康被害の報告は確認されていない。

 FSISは、当該製品の卸売業者やその出荷先である加工業者に一部が冷凍保存されている可能性があることを懸念している。

【米国】七面鳥ひき肉に関連のサルモネラ

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)は、生の七面鳥ひき肉に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Hadar)感染アウトブレイクについて調査するため、さまざまなデータを収集している。

 患者の年齢範囲は1歳未満〜92歳。情報が得られた患者19人のうち2人が入院した。死亡者は報告されていない。

 米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS: Department of Agriculture, Food Safety and Inspection Service)は、サルモネラ(Salmonella Hadar)感染アウトブレイク患者の原因食品である可能性があることから、Plainville Brands社(ペンシルバニア州)が製造した生の七面鳥ひき肉製品約211,406ポンド(約95,890kg)について公衆衛生警報を発している。

 当該製品はもはや販売されていないと考えられるため、回収は要請されなかった。FSISは、当該製品が冷凍されて消費者の冷凍庫に保存されている可能性があることを懸念している。

【欧州】輸入生鮮ホウレンソウに関連のエルシニア

 Eurosurveillanceより。2019年4月、エルシニア(Yersinia enterocolitica)血清型O3感染アウトブレイクがスウェーデンおよびデンマークで国境を越えて発生したことが探知され、全ゲノムシークエンシング(WGS)法により確認された。ヒト・食品に関する当局の代表者が国境を越えて緊密に協力したことが、直接的な情報収集および調査に役立った。疫学・追跡合同調査により感染源として輸入生鮮ホウレンソウが特定され、Y. enterocolitica感染アウトブレイクにおいて豚肉以外の感染源を考慮する必要があることが示された。

 2019年4月上旬、スウェーデン公衆衛生局(PHAS)およびデンマーク国立血清学研究所(SSI)は、通常サーベイランスによりY. enterocolitica感染患者およびY. enterocolitica血清型O3生物型4感染患者の増加をそれぞれ探知した。スウェーデンでは、WGS法により分離株が遺伝学的に相互に近縁であることが判明した。4月10日、PHASは、遺伝子配列パターンが一致するクラスターが他国で発生していないかを問い合わせるため、デンマーク、フィンランドおよびノルウェーの公衆衛生機関に連絡を取り、代表的なアウトブレイク株の塩基配列情報を提供した。SSIはスウェーデンと同様の兆候がみられることを報告し、SSIが分離したY. enterocolitica血清型O3生物型4の塩基配列解析を開始した。スウェーデンおよびデンマークの分離株の塩基配列を比較したところ、配列型(ST)がST18で遺伝学的に相互に近縁であることが判明した。国境を越えたアウトブレイクの発生が2019年4月24日に発表された。

 2019年4月26日、欧州疾病予防管理センター(ECDC)の欧州疫学情報共有システム(EPIS)に欧州の他国の患者発生に関する緊急問い合わせ(UI-554)が掲載され、ヨーロッパ早期警告・対応システム(EWRS)を通じて通知が発信された。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.09(2021.04.28)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202109m.pdf

今号の目次

【米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)】
1. 米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)がサルモネラ(Salmonella Hadar)症患者に関連しているとして生の七面鳥ひき肉製品に関する公衆衛生警報を発表
2. 大腸菌O157:H7汚染の可能性によりJBS USA社が輸入骨なし牛肉製品を回収

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 七面鳥ひき肉に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Hadar)感染アウトブレイク(初発情報)
2. 小型のカメに関連して発生しているサルモネラ(Salmonella Typhimurium)感染アウトブレイク(2021年4月15日付更新情報)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 汚染率に関する2020年の検体ベースデータの報告ガイドライン

【Eurosurveillance】
1. 輸入生鮮ホウレンソウに関連して国境を越えて発生したエルシニア(Yersinia enterocolitica)血清型O3感染アウトブレイク(スウェーデンおよびデンマーク、2019年3月)

【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. 世界保健機関(WHO)がOne Healthの概念にもとづく抗菌剤耐性サーベイランスのための新しいプロトコル「Tricycle」を作成

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(06)