ビスフェノールAリスクなし

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.03(2015.02.04)を発表した。

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【EFSA】ビスフェノールA暴露による消費者の健康リスクはない

 欧州食品安全機関(EFSA)が、食品およびその他(ダスト、化粧品、感熱紙)に由来するビスフェノールA(BPA)について包括的再評価の結果を科学的意見として公表した。EFSAによる結論は、BPAはどのような年齢集団(胎児や乳児、青少年を含む)の消費者にとっても現在の暴露量では健康リスクとはならない、というものであった。

 科学的意見は、「Part 1 暴露評価(p396)」と「Part 2毒性学的評価およびリスクキャラクタリゼーション(p621)」の二部構成になっている。

 毒性学的評価では、BPAについて報告された学術論文等を“根拠の重み付け(WoE=Weight of Evidence)アプローチ”を用いて評価し、「可能性があるLikely」と判断された腎臓への影響に基づき、マウス二世代毒性試験の腎臓の相対重量平均の変化から算出されたBMDL10をヒトに外挿し、不確実係数150を用いて一日当たり4μg/kg bwの暫定耐容一日摂取量(t-TDI)を設定した。

 不確実係数については、種差・個体差の不確実性として25、評価の過程で一つずつ検討して専門家の判断(expert judgement)をもとに数値化した、WoEで「ありそうにない(not likely)」と判断された乳腺・生殖系・代謝系・神経行動・免疫系への影響の不確実性として6を考慮した。

 今回算出されたt-TDIは以前の値よりも低いが、これは、新データの利用、リスク評価の精細化、そして乳腺・生殖系・代謝系・神経行動・免疫系に関する不確実性のためである。

※ポイント:今回の評価結果にはいくつかのポイントがあります。その中でも重要なのは「BPAはあらゆる暴露源を考慮しても消費者への健康リスクはない」「WoEアプローチに基づき、懸念されていた(低用量による)生殖系への影響の根拠はありそうにない(not likely)」と判断されたことでしょう。

 さらに、今回の評価では通常よりも複雑なアプローチでTDIが算出されています。通常は動物試験から得られた指標値(BMDL10等)に種差・個人差の不確実係数デフォルト100を考慮してTDIを算出することが多いですが、今回はデフォルトを使用せず、種差・個人差の中身をさらに細かく分解して不確実性を一つずつ検討しています。そのため、マウス試験の結果を経口ヒト当量となるように外挿するというアプローチを用いています。

 外挿は、要約のみを読むと簡単に計算しているように感じますが、621頁にも及ぶ本文を読むと、多くの不確実性が存在しているためにかなり苦しみながら計算していることがわかります。たとえば、マウスからヒトへ外挿するために、投与後の非抱合BPAの血中濃度-時間曲線下面積(AUC)の比からマウス-ヒト換算係数を求めています。しかしながら、非抱合BPAとは肝臓での薬物代謝を受けずにそのままの形で血中にたどり着いたものなので血中濃度は非常に微量で定量が難しいという問題があります。そのために、マウスについては投与後初期にかろうじて検出された数件の定量値をもとにデータ不足の不確実性を考慮した結果を、ヒトについては血中から検出できずにサルで得られたデータを用いたモデル系で検討した結果を利用して、やっとマウス-ヒト換算係数が計算されています。

 他にも不確実性が多数指摘されていて、意見が長文になったことからも、今回のBPA評価が非常に複雑だったことがうかがえます。これには、低用量暴露による生殖系影響の可能性と感熱紙由来の暴露に関するフランスの主張が影響しているので、EFSAとANSES(フランス食品・環境・労働衛生安全庁)との間では評価の過程でさまざまな議論がなされました。ANSESの記事からうかがえるようにANSESには異論があるものの、EFSAが多大な労力を費やして現時点での最善の結論を出したことを評価すべきでしょう。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(化学物質)No.03(2015.02.04)
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2015/foodinfo201503c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. ファクトシート更新 健康的な食生活
2. WHO紀要 メチル水銀暴露と発達神経毒性

【EC】
1. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. ビスフェノールA暴露による消費者の健康リスクはない
2. カフェイン:EFSAは評価案に関する意見を求める
3. 魚:リスクに比べてベネフィットとなるシナリオ
4. 「規制農薬リスク評価への疫学的知見の利用」に関する関係者のワークショップ
5. 食品添加物としての酒石酸ナトリウムと塩化鉄Ⅲの錯体形成製品の安全性に関する科学的意見
6. L-グルタミン酸(E620)、L-グルタミン酸ナトリウム(E621)、L-グルタミン酸カリウム(E622)、 L-グルタミン酸カルシウム(E623)、L-グルタミン酸アンモニウム(E624)、L-グルタミン酸マグネシウム(E625)の生産方法変更の安全性に関する科学的意見
7. 香料グループ評価
8. 飼料添加物関連
9. 飼料材料として規格化されたリュウキュウヤナギの葉の安全性に関する科学的意見
10. 低カロリーダイエット:EFSAは栄養摂取助言を更新
11. 食品と接触する非プラスチックに関する知識ギャップを埋める

【FSA】
1. 魚食についての助言を再確認

【COT】
1. COTの会議:2015年2月3日の議題
2. 難分解性有機汚染物質のキネティクスへの肥満の影響とリスク評価プロセスへの影響の可能性についてのCOTシンポジウム

【BfR】
1. 2014年11月26~27日の第15回BfR消費者保護フォーラム「毎日の生活の中のアルミニウム:健康リスク?」のプレゼンテーションの概要
2. 農薬認可プロセスについてのQ & A
3. 第一回ナノテクノロジー 合同シンポジウム(予告)
4. 抗生物質耐性の課題―全体論の考察とリスク認識への最新識見

【RIVM】
1. 土壌のリスクベースのPCB基準:環境リスク限度と最大量の提案

【ANSES】
1. ビスフェノールA:EFSAは現在の暴露量がヒト健康にリスクとはならないと考えるもののTDIの引き下げを薦めた

【FSAI】
1. ビスフェノールA暴露による消費者の健康リスクはない

【FDA】
1. Susan MayneがCFSANの舵をとる
2. 公示:Happy Passengersには表示されていない医薬品成分が含まれる
3. 警告文書
4. FDAは更新レッドブックへの意見募集期間を延長する
5. FDAはFSMAを実行するための重要な投資を求める

【EPA】
1. EPAはある種のメソミル使用の自主的中止を発表

【CDC】
1. 新しく販売された殺虫剤に関連する労働者の病気-ダグラス郡、ワシントン、2014年
2. 原因不明の神経疾患アウトブレイク Muzaffarpur、インド、2013–2014

【FTC】
1. グリーンコーヒー豆減量サプリメントの宣伝業者はFTCと和解

【TGA】
1. 警告

【MPI】
1. 新しいPGP計画がより健康的な羊肉を提供する

【香港政府ニュース】
1. 肉検体の99%は安全性検査に合格
2. 旧正月食品は安全性検査に合格
3. キャベツから過剰量の農薬を検出

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 説明資料(「国内業者のみ申告する奇妙な海外直輸法」の記事に関連)
3. 食品医薬品安全庁長、消費者団体の代表者との会合開催
4. 食品医薬品安全庁と韓国食品産業協会の業務協約の締結
5. 危害食品の販売遮断システムを2017年までに毎年1万ヶ所追加設置

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(EurekAlert)魚の脂肪酸は脳を水銀の傷害から守るかもしれない