チョコ製品のサルモネラ続報

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。イギリスが報告したチョコレート菓子に関連のサルモネラについて、当局の調査は続いており、メーカーは回収対象を拡大した。欧州の9カ国で同様の事象があり、4月8日までにイギリスと他の欧州9カ国で計150人の患者が報告されている。イギリスと欧州諸国の患者由来株は遺伝学的に相互に近縁であることが示されている。

注目記事

【英国】Ferrero社Kinderブランドのチョコレート製品のサルモネラ更新情報

 英国保健安全保障局(UK HSA: UK Health Security Agency)は、英国食品基準庁(UK FSA: Food Standards Agency, UK)、スコットランド食品基準庁(FSS)、スコットランド公衆衛生局(PHS)、ウェールズ公衆衛生局(PHW)、北アイルランド公衆衛生庁(PHANI)、および国外の複数の公衆衛生・食品安全当局と協力し、Ferrero社の1施設(ベルギーのArlon)で製造されたKinderブランドの特定の製品に関連して発生しているサルモネラ感染アウトブレイクの調査を続けている。

 2022年4月20日までに、本アウトブレイクに関連した患者が英国で計73人発生している。患者の大多数は5歳未満の小児である。

 FSA、スコットランド食品基準庁(FSS)および英国保健安全保障局(UK HSA)は、消費者に対し、Kinderブランドのさまざまな卵型菓子製品および「Schoko-Bons」を喫食しないよう強く注意を呼びかけている。

 Ferrero社は、Kinderブランドの製品に関連して発生しているサルモネラ感染アウトブレイクに関する調査の途中結果を踏まえ、製品回収の対象を拡大し、ベルギーのArlonにある自社施設で2021年6月以降に製造されたKinderブランドのすべての製品を回収対象とした。同社は、調査の実施に協力するためベルギーの当該施設の稼働をすべて停止している。

【欧州】複数国で発生しているチョコレート製品に関連のサルモネラの報告

 欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)と欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)は合同で迅速アウトブレイク評価を行っている。

 2022年2月17日に英国がサルモネラ感染患者クラスターの発生を報告した。4月8日までに、欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟9カ国および英国から計150人の患者が報告されている。患者の大多数が10歳未満の小児であり、小児患者の多くが入院した。

 アウトブレイク株は7クラスの抗菌剤に耐性であるが、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、メロペネムおよびセファロスポリンに感受性を示している。

 患者への聞き取り調査および疫学調査の結果は、特定の食品会社のベルギーの加工施設 で製造された特定ブランドの一部のチョコレート製品が本アウトブレイクの感染源である可能性が高いことを示している。

 英国のアウトブレイク株とその他各国の患者由来株の塩基配列を比較した結果、両者が遺伝学的に相互に近縁であることが示された。

 最初に英国で実施された聞き取り調査では、予想を上回る数の患者が共通のブランドの特定のチョコレート製品を発症前に喫食していたことが示された。その後、その他の各国で実施された聞き取り調査の結果は、これらのチョコレート製品が感染源である可能性が高いという仮説を裏付けるものであった。

 2022年4月8日までに10カ国で聞き取りが行われた患者計101人のうち、88人が同ブランドのさまざまなチョコレート製品の喫食を報告し、中に小さい玩具が入った卵型のミルクチョコレート、および小さい卵型の一口サイズのプラリネチョコレートが多く報告された。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.09(2022.04.27)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202209m.pdf

今号の目次

【米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)】
1. 家禽類のサルモネラ対策のための研究と科学に関する討論会を開催

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. 欧州の複数国にわたり発生しているサルモネラ(単相性Salmonella Typhimurium)感染アウトブレイク(2022年4月19日付更新情報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. ECDC-EFSA 合同迅速アウトブレイク評価:チョコレート製品に関連して複数国にわたり発生しているサルモネラ(単相性Salmonella Typhimurium シークエンスタイプ
(ST)34)感染アウトブレイク

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【英国保健安全保障局(UK HSA)】
1. 英国保健安全保障局(UK HSA)が菓子製品に関連して発生しているサルモネラ感染患者に関する更新情報を発表(2022年4月22日、15日付更新情報、13日付初発情報)

【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. サルモネラ感染アウトブレイクに関連して Kinder ブランドのチョコレート製品の回収対象を拡大

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. チョコレートのサルモネラ汚染

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(15)(14)