外食産業再生(6)店舗の自主性自発性の強すぎる抑制(2)

外食産業再生のために見直したいポイント
外食産業再生のために見直したいポイント
外食産業再生のために見直したいポイント
外食産業再生のために見直したいポイント

外食チェーンが取っている、中央集権的組織形態、店舗の自主性や独自性を抑制するしくみでは、真に強い組織は作りにくい。ボトムアップを建前上認めていないことは、組織の統合を阻害することにもつながる。

コスト・カット優先の革新

 店頭はこのように、あくまでもトータルに設計された外食チェーンの最終生産工程なのであり、チェーン本部が想定する範囲内でのサービス以外を提供することは好ましくないと規定される。

 マニュアルが規定するサービス内容は、価格レンジに依存する。しかし、低価格競争が日増しに進む外食産業の中で新商品・新業態の開発に対応するためには、多くの場合コスト・カットが優先され、人件費は切り詰められる。

 店に課せられる重要な責務は、マニュアルが規定する内容の工程を確実に、安定的に、管理された時間工数の範囲内で、迅速に行えるように人員を確保し、教育し、稼働時間帯を管理し、店頭で時間帯によって異なる顧客数の増減に対しても最低限に必要なマンパワーを確保することであり、体制を組めるように人員を時間単位に分けて管理することである。このため、店長とは別に一定の時間帯を管理する時間帯管理責任者が置かれることもある。

 それらの前提として、精度高く来店者数の予想を行い、本部が供給する中間仕掛り製品としての食材を仕入れておくことが重要となる。予測精度は店舗の収益に大きく影響する。

 また新業態に依る外食産業に移行しようとする時には、新規商品のテーマ特性、ターゲットマーケットなどに応じてお店の内外装自体を一新する必要になることが多いので、店舗のスクラップアンドビルドが当然に必要となる。しかし、直営店の場合には問題が少ないが、他人資本のフランチャイジーが運営するお店では問題が発生することも多い。そこで、この種の問題の解決方式までマニュアル化されていることも少なくないようである。

個性・自主性否定のシステムには無理がある

 外食チェーンがこのようなものであるとしたら、あるいはこのような組織を理想とするものであるとしたら、組織全体に対する個々の店舗(自己資本の店でも、他人資本の店でも)、個々の従業員の価値とは何であろうか。

 本部に言われた通りに出資し、本部に言われた通りにロボットのように働くことであれば、個々の価値とは金銭や労働時間といった計量可能なものの域を出ないはずである。それは中央集権的、上意下達、トップダウン的であり、ボトムアップは例外である。したがって、店舗とチェーン本部との間では“Mutual Satisfaction”(相互の満足)は問題とはされず、本部と店舗の相互間の“Mind Share”も重視はされない。

 私は経験上、このような形のチェーンの力は限定的であると見ている。さらに言えば、人はそのように抑え込まれた状態では働けないものだ。

 そのために、外食チェーンでも、現実には店舗発のアイデアが採用されたり、店舗の従業員の感性がインフォーマルには評価されたりということはある。しかし、全体の仕組みが建前上それを否定しているため、往々にしてそれらの積み重ねがチェーンの統合を阻害することにもなっていく。

 より強いチェーンを構築するには、最初から店舗、店舗の従業員の個性と力を認め、期待する考え方を織り込んだしくみを考えるべきなのだ。

奥井俊史
About 奥井俊史 106 Articles
アンクル・アウル コンサルティング主宰 おくい・としふみ 1942年大阪府生まれ。65年大阪外国語大学中国語科卒業。同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。中国、中近東、アフリカ諸国への輸出に携わる。80年初代北京事務所所長。90年ハーレーダビッドソンジャパン入社。91年~2008年同社社長。2009年アンクルアウルコンサルティングを立ち上げ、経営実績と経験を生かしたコンサルティング活動を展開中。著書に「アメリカ車はなぜ日本で売れないのか」(光文社)、「巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念」(丸善)、「ハーレーダビッドソン ジャパン実践営業革新」「日本発ハーレダビッドソンがめざした顧客との『絆』づくり」(ともにファーストプレス)などがある。 ●アンクル・アウル コンサルティング http://uncle-owl.jp/