2016年食の10大ニュース[5]

外食分野。トップ3は、居酒屋の低迷続く、マクドナルド復活か、ファミレス失速。

  1. 居酒屋の低迷続く
  2. マクドナルド復活か
  3. ファミレス失速
  4. コンビニ、スーパーの攻勢が強まる
  5. ファストフードのちょい飲み対応拡大
  6. ご当地メニューの取り組み拡大
  7. 道遠し、食品企業の信頼回復
  8. 深刻な人手不足が続く
  9. 社会保険制度の改定
  10. 台風、猛暑、海水温上昇など、異常気象が招く危機始まる!?

1. 居酒屋の低迷続く

 JF調査によると居酒屋業態の不振は、すでに4年以上も前年割れが続いている状況。若者のアルコール離れと長期にわたる内向き志向の個人消費がその背景のありそう。1980年代以降、外食業界をけん引し続けた居酒屋業界だが、先見えのしない状況が続いている。

2. マクドナルド復活か

 この2年間のさまざまなリブランディングのマーケティング戦略が功を奏したのか、2014年以降の業績悪化に歯止めがかかったようだ。2016年後半には、2014年水準を上回る業績の月が増え、通年で前年比120%超の営業実績となった模様。ただ、かつてのような業界全体をけん引するような勢いを取り戻せるかはわからない。

3. ファミレス失速

 すかいらーく、ロイヤルなど大手ファミレスチェーンが相次いで24時間営業を廃止し始めた。消費者の生活スタイルの大きな変化が底流にあるようだ。景気が回復しているという政府の見方だが、消費者の実感は薄く個人消費は弱含みかつ内向きになっている。1980年代後半以降減速し続けたファミレスの勢いが、ここにきて急激にしぼみ始めているのだろうか。1. 2. と合わせて、外部環境の変化が、外食業界の構造変化をもたらしている。

4. コンビニ、スーパーの攻勢が強まる

 コンビニコーヒーやドーナツなどが、一部外食分野に大きく影響を与えてきた。ここにきて総菜の充実ぶりも著しく、即食ニーズをすっかり取り込む勢い。またスーパーもイートインスペースを設ける店が増え、売り場の即食商品の拡販に力を入れ始めた。日常食の分野で外食業と真っ向からバッティングする状況が拡大している。「家飲み、おうちごはん」ニーズが高まる中、外食業には厳しい環境になっている。

5. ファストフードのちょい飲み対応拡大

 ファミレスでのちょい飲みニーズは一過性のものだったようだが、ファストフードではもともと短い滞店時間なのでちょい飲みニーズにぴったり合うためか、取り組む企業、店が増えている模様。食の簡便化の料飲版か。

6. ご当地メニューの取り組み拡大

 チェーン企業での全店同一メニューという原則が崩れ始めている。「その地域でしか食べられない」ご当地メニューに取り組むチェーンが増えてきた。もともと食は地域性があり保守的なもの。画一化、標準化による安心感を強みとして拡大をしてきたチェーン展開が、今や弱点となって業績を圧迫する。現状打破の妙手となるか。

7. 道遠し、食品企業の信頼回復

 壱番屋の廃棄食品が、廃棄を請け負った企業から横流しされ販売された。そんな衝撃的な事件も、消費者にとっては「ああ、またか」という目で見られたのではないか。それほど、食品関連産業での不祥事は数が多く後を絶たない。冷凍メンチカツによるO157食中毒事件も起きている。健康と命に直接関係する産業であるにかかわらず、毎年のように信じがたい事件が表面化する。業者の数が多いこともその要因の一つかもしれない。しかし、ごく少数のダメ業者、ダメ経営者のために失われる信頼を取り戻すのは、並大抵のことではない。

8. 深刻な人手不足が続く

 2015年国勢調査で、日本の人口が調査開始以来初の減少を見た。加えて15〜64歳の生産年齢人口はそれ以前から長期継続的な減少を続けており、今後20年近くはこの状況が続く。外食業界が他産業よりも魅力的でなければ、新戦力確保が大変難しいことになる。これまでのビジネスモデルの見直しが焦眉の急だろう。

9. 社会保険制度の改定

 社会保障の増大に対応すべく、2016年10月に社会保険の適用範囲が拡大された。「週30時間働くパートアルバイト」から、「被保険者数501人以上の企業で週20時間以上働き、月収が8万8000円以上の従業員」となった。大手チェーンでは、大半のパートアルバイトが対象になるだろう。当然、企業の負担が大きくなり、経営圧迫要因になりそうだ。

10. 台風、猛暑、海水温上昇など、異常気象が招く危機始まる!?

 夏になってようやく第1号が発生したと思ったら、立て続けに3つ北海道に上陸したりと、台風が猛威をふるった。また、夏はとりわけ東日本が記録的な猛暑日の数だったり、海水温の上昇や大きな暖水塊の発生で水産資源が平年とずいぶん違ったりと、農産物、水産物に大きな影響が出て、異常気象に右往左往させられた1年だった。来年以降、こうした異常気象が常態になる可能性も高い。


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石川秀憲
About 石川秀憲 5 Articles
フードジャーナリスト いしかわ・ひでのり 大学卒業後、流通専門の出版社「商業界」に入社。「飲食店経営」をはじめ数誌の編集長、新規事業部長、出版部長等を歴任の後、2005年退社。その後、食に関わる講演・執筆活動を続ける。現在、名古屋文理大学フードビジネス学科(教授2007~2016年)、戸板女子短期大学(非常勤講師2006~2016年)、金城学院大学(2008~2013年非常勤講師)等の教育機関で、食品経済関係、食品流通関係の講座を担当してきた。ほかに、水産庁の「おさかな語り部」を務める。