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軽減税率を巡る議論の不様さ

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消費増税に伴う軽減税率をどのように設定するか、与党の議論はいよいよ滑稽な様相を呈してきました。

 15日の報道によれば、自民党の税制調査会は、加工食品は軽減税率の対象とし、外食は対象としない方針を前提とした上で、店内で飲食する場合は外食として扱い、出前や商品を持ち帰った場合は加工食品として対象に含めることなどを決めたそうです。

 その外食に当たる「店内」とは、「食品衛生法で規定される飲食店などが、その場で飲食させるため、テーブルやいすなどを設置した場所で食事を提供すること」と定義したとのことです。

 一方、コンビニエンスストアなどについては、「持ち帰りが可能な状態で売られている弁当」であれば、店内の座席で食べた場合でも「加工食品」として軽減税率の対象とするとのこと。

 軽減税率というもの自体、納税者個人の属性によらず税率を定める間接税のコンセプトを壊すものでそもそもどうなのかと思うわけですが、仮に所得水準の低い人の税率を緩和しようとして軽減税率を考えているのであれば、本来はその消費の内容や意味で定めるべきところですが、食品衛生法はそれとは全く関係のない法律です。

 彼らには客単価という発想が全く欠如しているのです。外食というビジネスにおいては、客単価が消費の内容や意味をかなり忠実に反映するものです(もちろん常に正確に反映するとは言えませんが)。たとえば、過去何カ月間ないし何年間の実績で500円程度の客単価であれば、それは糧としての食事をとる店だとわかります。3000円を超えれば、楽しみや贅沢のための食事をとる店だとわかります。しかし、食品衛生法で網をかけようとすれば、どちらも同じものになってしまうわけです。

 コンビニエンスストアの場合、これは店舗の実態や地域にもよりますが、飲食店営業許可や喫茶店営業許可を求められる店舗とそうでない店舗があります。たとえば「ミニストップ」は「最低でも2席」と必ず座席を配置する形で店舗を作り、店内調理も行ってきたため、前者に当たるものが普通です。そのため、同チェーン本部の人によれば、コンビニ業界でも店内の衛生状態は段違いによいという評価を得ていると言います。そういうチェーンもあれば、「温めているだけなので」などということで飲食店営業許可や喫茶店営業許可の取得を免れているチェーンないし店舗もあります。

 そして、最近、主に後者のチェーン・店舗で、座席を設置する動きがありますが、その中にはアルコール消費に対応するべく考えられているものが含まれます。そこで、持ち帰り用に包装された弁当・そうざいをアテにワインなど飲むのはどうなのでしょう。

 与党のアイデアは、たぶんそういう実態を知らないか無視して、包装状態で判断しようというものでしょう。

 もう一つ、そもそもの話をすれば、コンビニの弁当・そうざいは外食として考えるべきなのですが、これは税制よりも業態論の話になりますので、これはまた稿を改めることにします。

 まあ、先生方はいろいろ知恵を搾っているのかもしれませんが、端で見ている限りにおいては何か大事なことを忘れた演技過剰な茶番のようで、一部でささやかれる「与党の中には、軽減税率がうまくいかないことを理由に消費増税を見送ろうとする考えがある」という説が、あながち単なる噂でもないのかも知れないと思わされます。

※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

執筆者

齋藤訓之
齋藤訓之
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。「FoodScience」(日経BP社)では「食の損得感情」を連載。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ → ※齋藤訓之のブログ →