トピックス

ハイテク時代は同質化の時代

FacebookTwitterHatenaLineYahoo BookmarksMixiLinkedInShare

 先週記した2020年夏季オリンピックのエンブレム制作者による盗作・盗用・模倣の問題について、その事の流れに触れて思い出したことがもう一つあります。トヨタ自動車出身で元ハーレーダビッドソンジャパン社長、そしてFood Watch Japanに「恢復するチェーン」を連載していただいていた奥井俊史氏が、以前、昨今の自動車業界について嘆いていたことです。

 要約すればこのようなことです。現代の自動車メーカーは統計調査によって、消費者の好みや意向をつかむ。現代の調査は正確になっているので、各社がほとんど同じデータを持つことになる。

 その上で、現代の自動車メーカーはCAD(computer aided design/コンピュータで設計を行うシステム)を使って設計を行う。このCADで優秀なものを提供する会社は世界に少数であり、異なる自動車メーカー同士で同じシステムを使っている可能性は高い。

 同じ情報を元に同じ道具でモノを作った場合、ほとんど同じものが出来てしまう可能性は高まる。事実、昨今の世界の自動車はかつてないほど似たものが増えている。

 そのことが商品の独自性を失わせ、ブランド作りを難しくし、ビジネスが価格訴求型になる傾向を助長しているというのです(自動車のコモディティ化)。

※「恢復するチェーン」(Food Watch Japan)
http://www.foodwatch.jp/tertiary_inds/risingchain

 優れた産業機械があって、優れた腕を持つ技術者がいて、市場のニーズを的確に伝えるデータがそろえば、そこから生み出される製品は理想的な製品として均質化、同質化します。

 また、産業全体の技術のレベルが上がると、各社が最も高品質な製品をリリースすることとなり、結局のところ高品質なものとして均質化、同質化します。

 便利な時代になればなるほど、技術レベルが高い時代になればなるほど、創造性を鍛え、独創性にこだわるトレーニングが必要となってくるわけです。

 実はこれは工業界だけの問題ではありません。たとえば、良質な加工食品を取り入れながら家庭で料理をしている生活者にも、「私だけの料理が作れていないのではないか」という不安を芽生えさせている人たちがいます。

※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

執筆者

齋藤訓之
齋藤訓之
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。「FoodScience」(日経BP社)では「食の損得感情」を連載。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ → ※齋藤訓之のブログ →