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居酒屋は放言する場所なのか

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 某党の勉強会での発言内容(それ自体についての論評はしません)を巡って、小説家の百田尚樹氏がさまざまに弁明をする中にこのようなものがありました。

「小説家が私的な場で何を言おうが関係ない。これが言論弾圧なら、飲み屋でオッサンが『○○新聞をつぶせ』と怒鳴っても、言論弾圧になる」

百田尚樹氏のツイート
http://twitter.com/hyakutanaoki/status/617332182067998722

 その言わんとするところが汲めないわけではありません。「『オッサン』が放言する場所」としての飲食店はありますし、あって悪いとは言いません。親しい者どうし、誰はばかることなく言いたいことが言える場があるのは、全くありがたいことです。世界にはそうではない国がたくさんありますから。

 ただ、こういうのはいかがでしょう。

「飲み屋では何でも言う。『あいつ殺したろうか』って、これ殺人未遂(になるのか)」

毎日新聞の記事
http://mainichi.jp/select/news/20150628k0000m040064000c.html

 話の勢いがある中での言葉でしょうけれども、これはちょっと穏やかではない。私が思い浮かべるよいお店であれば、店の場にそぐわない話し方、話の内容、あるいは態度などがあった場合、主なり従業員がそっと近づいて行って「お客様、そこはお控えください」とか「人聞きが悪いので」などと注意するでしょう。

 お店にはお店として、「ここはこうあってほしい」というものがあります。そこから逸脱するお客様には、そうしないでほしいとお願いをする。いかに馴染み客だけで成り立っているお店でもお店はやはり公共の場ですし、何より、経営者・運営者の世界観を表現してそれを商品とするものです。そこをきちんと守ることが、いわゆるブランド管理というものです。

 百田氏の発言を引いたのはあくまで話のきっかけとしてですが、お酒を提供するお店が「何をしても許される場所」として簡単に例に挙げられるようではいけないという気構えは持ちたいものだと感じました。

※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

執筆者

齋藤訓之
齋藤訓之
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。「FoodScience」(日経BP社)では「食の損得感情」を連載。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ → ※齋藤訓之のブログ →