SF映画の中の食べ物

「2001年宇宙の旅」(1968)。今はなきパンアメリカン航空のスペースシャトル「オリオン号」で出された宇宙食。惣菜ごとに8つに小分けされ、無重力下のためストローで吸引して食する(絵・筆者)
「2001年宇宙の旅」(1968)。今はなきパンアメリカン航空のスペースシャトル「オリオン号」で出された宇宙食。惣菜ごとに8つに小分けされ、無重力下のためストローで吸引して食する(絵・筆者)
「2001年宇宙の旅」(1968)。今はなきパンアメリカン航空のスペースシャトル「オリオン号」で出された宇宙食。惣菜ごとに8つに小分けされ、無重力下のためストローで吸引して食する(絵・筆者)
「2001年宇宙の旅」(1968)。今はなきパンアメリカン航空のスペースシャトル「オリオン号」で出された宇宙食。惣菜ごとに8つに小分けされ、無重力下のためストローで吸引して食する(絵・筆者)

今夏公開の目玉作品もほぼ出揃ったなか、洋画は今年もコミック原作を含めSF映画がその大多数を占めている。今回は過去のSF映画で登場した未来の食の姿を見ていこうと思う。

「2001年宇宙の旅」の“宇宙食”

「2001年宇宙の旅」(1968)は、ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフに並ぶSF小説の大家であるアーサー・C・クラークと「博士の異常な愛情」(1964)、「時計じかけのオレンジ」(1971)のスタンリー・キューブリックの共同脚本によるSF映画史上の金字塔である。

 本作では製作当時の科学知識を総動員して設定・考証がなされており、それまでの荒唐無稽なSF映画とは一線を画した高度なリアリティを達成している。宇宙食についてもNASAが本作のために開発したものが提供されており、フロイド博士(ウィリアム・シルベスター)が月面基地に向かう際に搭乗した今はなきパンアメリカン航空のスペースシャトル「オリオン号」で出される魚や野菜、果物などを惣菜ごとに8つに小分けしてストローで吸引して食べるものと、月面で発掘された地球外知的生命体が残した謎の立方体(モノリス)の探査に向かう宇宙バスの中で科学者たちが食べるチキンとハムのサンドイッチ、木星探査に向かう宇宙船ディスカバリー号の中でボウマン船長(キア・デュリア)とプール飛行士(ゲイリー・ロックウッド)がスプーンで食べるパレットに入った四種類のペースト状のものと、重力の有無などの環境別に三つのタイプが登場する。

 そしてボウマン船長は最後にたどり着いたある場所である人物が食事をしているシーンを目撃するのだが、それは映画を見てご確認いただきたい。

「エイリアン」の“オートミール”(?)

「エイリアン」(1979)。航海士ケイン(ジョン・ハート)の胸部からエイリアンの幼体(チェストバスター)が飛び出す衝撃のシーン(絵・筆者)
「エイリアン」(1979)。航海士ケイン(ジョン・ハート)の胸部からエイリアンの幼体(チェストバスター)が飛び出す衝撃のシーン(絵・筆者)

「エイリアン」(1979)は第8回で紹介した「ブレードランナー」(1982)のリドリー・スコット監督によるヒット作で、多くの続編やスピンオフ作品が製作されている。

 オリジナルである本作では、宇宙船ノストロモ号の船内で冷凍睡眠から覚めた7人の乗組員が円卓を囲んで食事を摂る。そのオートミールのような雑多な食べ物は、「2001年」よりさらに未来で、しかも民間企業の貨物船という設定からすると、違った意味でのリアリティがある。その原料については、乗組員のセリフから、船内の“限られた有機物の循環”で作られていることが想像される。

 そして惑星LV-426で異星人の遺した宇宙船を調査した後に摂る二度目の食事では、調査時の事故で謎の生命体(フェイスハガー)が顔に貼り付いた後、意識を取り戻した航海士のケイン(ジョン・ハート)がオートミールを口にした途端に突然苦しみ出し、彼に寄生していたエイリアンの幼体(チェストバスター)が胸部を突き破って飛び出してくるという衝撃のシーンがある。

 なお、現在公開中のスコット監督の「プロメテウス」は、直接言及はされていないが明らかに「エイリアン」の前日譚であり、異星人の遺物とエイリアン誕生の謎が明らかにされている。ちなみにこの作品で冷凍睡眠から覚めた乗組員たちが最初に摂るのは高栄養のミルクセーキである。

「ソイレント・グリーン」の“合成食品”

「ソイレント・グリーン」(1973)。生産ライン上のソイレント・グリーン(絵・筆者)
「ソイレント・グリーン」(1973)。生産ライン上のソイレント・グリーン(絵・筆者)

「ソイレント・グリーン」(1973)はハリー・ハリソンの原作を“職人”リチャード・フライシャーが監督した近未来SFである。

 2022年のニューヨークでは人口の増加による食糧難が深刻な問題となっており、本物の食品を手にできるごく一部の特権階級と、政府が一週間に一度だけ配給するソイレント社(大豆=soybeanとレンズ豆=Lentilの合成語)が開発した合成食品「ソイレント・グリーン」で食いつなぐ大多数の貧民層に分かれた格差社会となっていた。

 そんな中、ソイレント社の幹部の一人であるウィリアム・サイモン(ジョセフ・コットン)が何者かに自宅で惨殺される事件が起き、市警殺人課の刑事ソーン(チャールトン・ヘストン)が捜査を担当することになる。しかし、事件の背後にソイレント社の大物の存在が浮上すると、上司のハッチャー(ブロック・ピーターズ)から捜査を打ち切るよう圧力をかけられ、ソイレント・グリーン配給の警備に回されてしまう。そこでは配給の少なさに怒った市民による暴動が発生し、彼はそのどさくさに紛れて殺し屋に危うく消されそうになる。

 その頃、彼の同居人でよき相談相手であるソル(エドワード・G・ロビンソン)は、サイモン殺しの動機となったソイレント社の秘密を知って絶望し、安楽死させてくれる「ホーム」へと向かう。

 ソルは死の間際、駆けつけたソーンにソイレント・グリーンの正体を告げ、ソーンは衝撃を受ける。

 そして彼は、一見クラッカー菓子のようなソイレント・グリーンの生産ラインを目の当たりにして、その恐ろしい原料を知ることになるのである。

 SFの世界は絵空事ではあるが、いくばくかの真実を含んでおり、「現実の合わせ鏡」としてご鑑賞いただければ幸いである。

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映画ウォッチャー 埼玉県出身。子供のころからSF映画が好きで、高校時代にキューブリックの「2001年宇宙の旅」を観たところ、モノリスに遭遇したサルの如く芸術映画に目覚め、国・ジャンルを問わない“雑食系映画ファン”となる。20~30代の一般に“青春”と呼ばれる貴重な時をTV・映画撮影現場の小道具係として捧げるが、「映画は見ているうちが天国、作るのは地獄」という現実を嫌というほど思い知らされ、食関連分野の月刊誌の編集者に転向。現在は各種出版物やITメディアを制作する会社で働きながら年間鑑賞本数1,000本以上という“映画中毒生活”を続ける“ダメ中年”である。第5回・第7回・第8回の計3回、キネマ旬報社主催の映画検定1級試験に合格。第5回・第6回の田辺・弁慶映画祭の映画検定審査員も務めた。