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日本の「餅」と中国の「餅」

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関東を中心に、日本の多くの地域では今日が鏡開きの日と聞きます。餅は日本のお正月に欠かせない食べ物ですが、今日は中国の餅のお話をしましょう。

中国の餅はお袋の味

 日本の「餅」と中国の「餅」は、字は同じでも、意味は全く違います。中国の「餅」は「ピン」「ビン」(bǐng)と呼ばれます。ピンは小麦粉をこねて平らな形にし、焼いたり、蒸したり、油で揚げたりしたものの総称です。無発酵と発酵、その中間的なものなどさまざまな種類があり、地域によっても多様な餅があります。それらは調理法によって、焼餅、油餅、煎餅、菜餅などに分けられます。

 焼餅は、少しの油を引いて焼いたものです(昨年、ある店の店頭で「焼餅」と書かれた暖簾を見かけて、一瞬、中国の「焼餅」を思い浮かべましたが、実際は、日本の「焼餅」で、ちょっとがっかりした記憶があります)。

 油餅は、薄くした生地を油で揚げたものです。

 煎餅は、クレープのような薄焼きの餅です。

 菜餅は、野菜などの具のあるものです。生地に混ぜて、焼いたり、揚げたりするものがある一方、具を生地に混ぜずに薄い生地で包んで、大きな餃子のように焼くものもあります。

 ピンは、中国の代表的な家庭料理であり、地域的な特徴を持ち、そして、家庭の「味」が凝縮されているもので、中国的な「おふくろの味」と言えます。しかし、これらの食べ方は、日本の中国料理でも中華料理でもあまり見かけない気がします。

 日本の食べ物では、強いて言えばお好み焼きは菜餅と似ているところが多いと言えます。ただ、それらの大きな違いとして、中国の菜餅はソースを使わず、味付けは生地を作るときにに行われます。

 ちなみに、私も家でお好み焼きを作りますが、菜餅を作るのと同様に、先に味付けをしてソースは使いません。これも、日本料理と中国料理の一種の融合と言えるかもしれませんね。

中国のお正月の餅

 日本でお正月に「餅」を食べるように、中国でも春節(中華圏の旧正月。2016年は2月8日です)に「餅」を食べます。これは「年糕」と呼ばれます。中国語の「年糕」の「糕」は「高」と同じ発音(gāo)なので「年糕」は「年高」に通じ、これを食べることで、年々、給料が上がり、昇進し、子供の成績や身長なども伸びと、もっともっと高くなるようにという願いが込められています。縁起がよく、栄養価も高い食べ物ですから、旧正月の料理の定番として続いているのです。

 一方、日本の餅は、食べておいしいだけではなく、餅つきというパフォーマンスも、お正月の伝統行事として重視されていますね。餅つきは一見シンプルな動作ですが、つく人と返す人が呼吸を合わせる必要があり、難しそうですが、見るたびに私もやってみたくなります。

我が家の餅

 餅の食べ方に関する日中の違いについては、また別の機会でご紹介しますが、今回は、ピンの作り方を簡単にご紹介しましょう。前述のとおりピンの種類はたくさんありますが、ここでは我が家で週末によく作るシンプルなピンを紹介します。

我が家のシンプルな餅

我が家のシンプルな餅

  1. ボウルに小麦粉(強力粉をお薦め)を用意し、お湯を少しずつ入れて混ぜていき、生地を作る。混ぜ終わったら少し休ませておく。
  2. まとまった生地

    まとまった生地

  3. 適当な量を取って、麺棒で平らな形に延ばす。大きさはフライパンのサイズと同じくらいに。
  4. 塩、コショウ、みじん切りのネギを生地の上に均等に散らす。生地を少し持ち上げて重ね、再度持ち上げて重ね、麺棒で2と同じように薄く延ばす。
  5. 生地に調味料と香味野菜

    生地に調味料と香味野菜

  6. フライパンを温めて、少し油を引き、ピンを焼く。少し色づいた加減でひっくり返す。これを数回繰り返し、ピンを指で押さえてみて、弾力が出てきたら、出来上がり。
  7. フライパンで焼く

    フライパンで焼く

【編集部・齋藤訓之より】

 徐さん、故郷のおいしそうな餅のお話をありがとうございます。

 日本の農業は古来、畑作よりも水田作が得意だったようで、麦よりも米が盛んに作られ、それが税としても集められ流通していました。その米で作ったモチに、穀物から作る軟らかい食べ物として同様と見える「餅」の字を当てたものと思われます。

 似ていたのは出来上がりの形状だけでなく、作り方もまた似ていたのでした。いや、日本の餅は粒のまま蒸した糯米をついて作るのに対して、大陸の餅は小麦の粉を使うので似ていないと思われるでしょう。しかし、昔の日本の餅の形は、生米を水に浸してすりつぶして粉にし、これを団子にまとめたものでした。これはシトギと呼ばれます。シトギは今日では主にお供え用に作られることから、シトギこそがより古い日本のモチの形であったことが推測できます。

横杵(左、白川郷)と竪杵(右、遠野)

横杵(左、白川郷)と竪杵(右、遠野)

 では、今日の蒸した糯米をついて作る日本の餅がいつごろから食べられるようになったのかと言うと、これが意外に新しい食べ物なのです。あの餅つきに使う柄の付いた杵をヨコギネ(横杵)と言いますが、これが国内に広く普及したのは江戸時代とされています。

 それ以前に日本で使われていた杵は、柄のない、つく部分だけのものを直接手で持って使うタテギネ(竪杵)でした。日本では月の模様をウサギが餅をついている様子と言いますが、その2羽のウサギが抱えているのがタテギネです。タテギネは脱穀や製粉には向いていますが、蒸した糯米をついて餅にするのにはより大きな打撃力が必要で、向いていません。

 ですから、日本で「餅」の字を使い始めた昔の日本のモチは、今のものよりも大陸の餅に似ているように感ぜられたのではないでしょうか。

 そして、今の日本の餅つきに欠かせないヨコギネも、日本で発明されたものではなく、大陸で小麦の脱穀に用いられていたものが伝来したものと聞いています。ここにも、大陸と日本の技術交流、文化交流、そしてそれぞれの特徴の発揮という物語が秘められているようです。

執筆者

徐航明
徐航明
じょ・こうめい Xu Hangming 中国の古都西安市出身。90年代後半来日。2000年東京工業大学大学院卒業。外資系通信機器メーカーを経て、2002年から電機メーカーに勤務。中国向けの標準化とアライアンス活動に携わっている。中国や日本などの異文化の比較研究、新興国のイノベーションなどに興味を持ち、関連する執筆活動を行っている。著書に「リバース・イノベーション2.0 世界を牽引する中国企業の『創造力』」(CCCメディアハウス)があり、「中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる『山寨革命』の衝撃」(阿甘著、日経BP社)の翻訳なども行っている。 E-mail:xandtjp◎yahoo.co.jp(◎を半角アットマークに変換してください)