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2015年食の10大ニュース[1]

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人類はホモ・サピエンスたる存在か。

  1. TPP大筋合意
  2. 改正農協法成立
  3. 食品表示法施行
  4. 機能性表示食品制度スタート
  5. ミラノ万博・日本食大人気
  6. インバウンド消費拡大
  7. 異物問題の混乱
  8. リスコミの変化
  9. 肥料偽装の発覚
  10. 魚食文化の危機

 2015年12月、清水寺で今年の漢字が「安」と揮毫された。筆者は「偽」再びという感覚だった。体育館一杯に広げた紙に、「高校生書道パフォーマンス」で書すイメージである。2007年に相次いだ食品等とは桁違いの偽装が発覚した。東芝、フォルクスワーゲンといった、世界に大きな責任がある組織だ。

 大組織のトップは、能力があり立派な人物が選ばれるに違いない。それでも、その場に立つと保身が最重要になることもあるだろう。グローバルな状況下、他組織との厳しい競争で成果を示す必要がある。その結果、組織ぐるみで偽装を推進させた。

 怖いのが、国という組織である。各国でナショナリズムが台頭している。為政者は、国民の不満へどう対処すべきか。容易なのが、戦争である。国民の不満をそらし、経済活性化にも寄与する。すでに手を染めている国がある。人類が、ホモ・サピエンスたる存在かが問われている。

 日本では大きな動きがあった。食の問題では、TPPが合意され、農協法が改正された。強い安倍政権だからこそ実行できた。いくつかのニュースを取り上げたが、目指す方向はクール・ジャパンの価値(知価)向上である。これにより輸出は増え、訪日旅行者も増える。重要なコンテンツが日本食である。また、リスコミ(リスクコミュニケーション)で新たな動きを感じた年だった。

1. TPP大筋合意

 難航していたTPPが大筋で合意した。全世界GDPの4割を占める大きな経済圏が誕生する。自動車等の輸出産業は大きな恩恵を受ける。一方、安価な農産物が輸入される。消費者に歓迎されても、農業はダメージを受ける。第三の開国ともいわれるこの機会を生かし、強い農業を構築する必要がある。

2. 改正農協法成立

 本法律の狙いは、日本農業の競争力強化にある。全国農業協同組合中央会の影響力を排し、地域農協の創意工夫を促す。市場は国内だけではない。やる気があり能力の高い農家・組織へ農地を集積する施策が進められている。日本農業を存続させる最後のチャンスである。

3. 食品表示法施行

 アレルギーの一括表示等は情報不足で、大企業でも判断に迷っている。生鮮品の区分けで、異種盛合せは加工品扱いになった。当初の議論のように生鮮品扱いで、表示は別という考え方がよかった。また、食品添加物は、原材料と明確に区別される。興味を持つ消費者が増えれば、リスコミの機会になる。

4. 機能性表示食品制度スタート

 事業者の自己責任で、一定の健康機能を食品に表示できるようになり、市販品が増えつつある。玉石混淆というより、石が多いように感じる。制度の問題点について、多様な意見が出されている。早晩、見直しを行なう必要があるだろう。本制度が的確な機能性を発揮してほしいと願っている。

5. ミラノ万博・日本食大人気

 イタリアのミラノ万博で、日本館は金賞(展示デザイン部門)を受賞した。約230万人が来館し、中でも日本食が大人気だったという。日本への旅行者を増やすきっかけになったに違いない。世界中で日本食レストランが急増している。この流れを加速させたいものである。

6. インバウンド消費拡大

 訪日旅行者が2020年の目標2,000万人に迫る勢いである。「爆買い」が流行語大賞に輝いたが、インバウンド消費が拡大した。家電や化粧品等が注目されるが、最も高い購入率を誇るのが菓子類だ。抹茶使用が人気だが、それだけのわけはない。クール・ジャパン推進のヒントになる。

7. 異物問題の混乱

 ゴキブリ等の食品異物が大きな話題になった。工場を停止させ、改修を行う企業もあった。ネットが発端となることが多いが、対応の不適切が火に油を注ぐ例もある。異物混入は確実に低下しているが、皆無にはできない。苦情者への冷静・的確な対応とリスコミが重要な所以である。

8. リスコミの変化

 地道なリスコミ活動が続いているが、理解が進んでいる実感はない。普段、市民はリスコミの必要性を感じていないためである。異物等の耳を傾けてもらえる機会を有効に生かしたい。一方、「栄養素キャラクター図鑑」(日本図書センター)というユニークな本が出版され、続編も好評である。情報の届け方に、工夫の余地が大きいことに気がつく。

9. 肥料偽装の発覚

 偽装発覚はイントロに記しただけでない。電機や自動車に比べるとやや規模が小さいが、杭データ、化血研、食品関連でも太平物産の肥料が続いた。2008年の事故米転売事件では、問題のない焼酎でも廃棄を余儀なくされた。問題の肥料を有機栽培や特別栽培に用いていた農家をお気の毒に思う。発覚への公益通報者保護制度の寄与は不明だが、企業破綻が想定されれば機能するわけがない。

10. 魚食文化の危機

 クロマグロやウナギの絶滅危機が叫ばれて来たが、今年はサンマが加わった。要因として懸念されているのが、公海における中国や台湾の大型漁船による“爆漁猟”である。背景に、日本食普及による魚食量の増大もありそうだ。水産庁は関係国を集めて、漁獲制限の話合いを始めている。

執筆者

横山勉
横山勉
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。元ヒゲタ醤油品質保証室長、2010年独立。食品技術士センター理事(http://fpcc.jimdo.com/)。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中。