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機能性表示食品制度への対応

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2015年4月に機能性表示食品制度が始まったことを受けて、去る2015年7月15日に行ったコンシューマーズカフェ(於くすりの適正使用協議会会議室)でこの話題を取り上げました。

 話題提供はグローバルニュートリショングループ(東京都豊島区)の武田猛社長で、制度の特徴や従来のトクホとの違いなどを具体例を示しながら説明されました。詳しいレポートはくらしとバイオプラザ21のWebサイト(http://www.life-bio.or.jp/topics/topics619.html)に掲載していますが、その要点を以下にまとめてみます。

武田猛さんのお話の骨子
はじめに

 機能性表示食品制度が始まり、7月15日現在、53商品の届け出があり、商品名、届出者、評価方法、機能成分の情報がHPに公開された。愛媛県や沖縄県など、本制度を支援、活性化を図っている自治体もある。

 にんにく卵黄のような、天然素材に近いもので機能性表示ができるようになったのも、今回の制度の柔軟性によるところが大きい。

どんな届出表示があるのか

 この制度の特徴は、わかりやすく踏み込んだ表現が使えること。「○○に適した」「○○に役立つ」などはトクホでも使われていたが、「低下」「軽減」などの具体的表現が受理された。「緩和」「調節」「改善」「保護」なども使われるようになった。「生理機能」「組織機能」に関しても表現できるようになった。

 全体的に主観的な指標による評価が書けるようになった。同じ機能や成分に対しても、企業によって異なる表現を届出ている。たとえば、肌の健康でも「乾燥を緩和」「潤い」「水分量を高める」「潤いサポート」などと表現が多様になった。

 今回、メンタルヘルス、睡眠サポートの届出表示が初登場したのも特記事項。

 ただし、「疾病リスク軽減」などの医薬品的効果のイメージにならないような表示を考えなくてはならない。表示の文言をつくるとき、科学がわかり、かつ国語力が豊かであることが求められている。

マーケットの大きさ

 いちばん多いのは生活習慣病予防、とくに内臓脂肪・体脂肪が増えないようにする脂肪吸収抑制だ。DHA、EPA、マルチビタミンなど。

 脂肪吸収抑制の顕在市場は382億円で、潜在市場(このくらいなら払ってもいいという消費者調査の市場)は1,672億円。まだ市場には成長の伸び代がある。

 今後、市場が拡大しそうなのは、美肌・肌ケア、目の健康に関する食品。

 不眠、抗ストレスは表示が可能になったことで市場が大きく拡大しそう。この分野は潜在市場も大きく、疲労回復のサプリの潜在市場の2倍にあたる。

 顧客ベネフィット(消費者の希望)は、QOL(Quality of Life)の向上、快適な生活、見た目の向上(痩身、美肌など)、不安解消、疾病リスクの低減などだが、意外と「お守り的存在」(特段体感していないが、継続していると安心する)としての利用が大きい。

 期待ベネフィットからみると、アメリカでは機能が明らかなもの(Condition-specific)が売れている。特定機能は、改善効果が出ないとリピートされない。マーケティングコミュニケーションで理解を進めて継続して利用してもらうことが重要。認知されている成分に対するエビデンスが少なかったり、エビデンスは多くても機能が認知されていなかったりすると普及しない。

健康食品のマーケットの潜在性

 消費者調査の結果から、消費者が支払ってもいいと思う金額と健康の利用を望む消費者数をかけると4兆2700億円。まだ、2兆7300億円の伸び代があることになる。

 アンケートによると、いわゆる健康食品を使わない理由は、値段が高い、本当に効くか疑いがある、選び方がわからない、副作用が心配、科学的根拠が不十分、医薬品との飲み合わせの不安があげられる。

 よく売れるためには効能が理解されること(効能理解)と、よく知られていること(認知度)が大切。乳酸菌、コラーゲン、ヒアルロン酸、ブルーベリーなどは認知も理解も高いので、PRは不要になる。認知も理解も低いものは、コミュニケーションで欠けている要素を補うと、普及する可能性がある。これまではイメージ戦略だったが、今後は直接、正確、具体的にベネフィットを伝えること。

ヘルスクレーム(健康強調表示)制度の国際比較

 表示の制度には、規格基準型、個別評価型、届け出制がある。

 規格基準型は、日本の栄養機能食品やアメリカのNLEA(Nutrition Labeling and Education Act/栄養表示教育法)が該当する。

 個別評価型は日本のトクホが該当する。

 届け出制は、アメリカのDSHEA(Dietary Supplement Health and Education Act/栄養補助食品健康教育法)と今回の日本の機能性表示食品が該当する。これは日本とアメリカにしかない制度だ。

 DSHEAには、目立つように「FDAが評価していない」ことを表示することになっている。NLEAは規格基準に従い、無条件または限定的ヘルスクレームの使用が可能になっている。

安全性評価

 安全性評価は、食経験の評価(喫食情報、既存情報)と安全性試験に関する評価(既存情報、安全性試験実施)とで行われる。

 喫食実績とは、摂取集団、摂取形状、摂取方法、摂取頻度、日常的摂取量、機能性関与成分の含有量、これまでの販売量、健康被害情報を指している。

 届けられた商品をみると、19の商品が自社製品などの販売実績をもって安全性評価をしているが、FDAでは、食経験の目安として最低25年間摂取を挙げている。オーストラリア・ニュージーランド食品基準局は2~3世代あれば十分だが、条件によっては10~20年でも十分としている。

機能性表示食品の広告などに関する主な留意点

 6月に消費者庁の検討委員会が「機能性表示食品の広告等に関する主な留意点」を発表した(http://www.caa.go.jp/representation/pdf/150619premiums_1.pdf)。これの根拠となる法律は、景品表示法、健康増進法、食品表示法で、「実際よりも著しく優良」とか「著しく事実に相違していない」表示ならばよい。

 企業は、届け出た内容以上の表示をしないこと、トクホと誤認されないようにすること、必要な表示事項を示し、国が評価してない旨を明らかにして広告を行うこと。

 しかし、イラストによる説明が不適切であったり、説明文のバランスが悪いものもある。

 せっかくできた制度を育てるためにも、事業者が自ら見極め判断し、責任をもって判断することが重要。

機能性食品制度の利点と課題

 機能性表示食品制度には、(1)高い透明性、(2)機能性表示が具体的でトクホよりも幅広く柔軟に表現できる、(3)企業姿勢や取り組みがよくわかるという利点があるので、これらの利点が生かされるようにこの制度を利用してほしい。

 一方、疑義に対する解決方法が不明確で、届出情報のレベルに企業間で差がある、書類チェックに時間がかかり、情報公開期間60日が守られていないなどの制度面での課題がある。

 企業から見ると、受理・不受理の判断基準が不明で、届け出た情報が今はどの段階にあるのかがわからず、発売日を延期することがある。

 消費者にとっては、届出情報を読みこなすのは難しく、トクホと区別しにくい、どのように判断したらいいかわからないなどの問題がある。

 この制度を育てるには、安全性・機能性が担保され、それが適切に表示され、適切な広告と陳列が行われなくてはならない。

詳細な情報

 武田猛さんは、さらに企業に求められる責任、開発や表示を行う上での指針についてお話されました。その詳細と質疑応答については、くらしとバイオプラザ21のWebサイトでお読みください。

※コンシューマーズカフェレポート「機能性表示食品制度が始まって」
http://www.life-bio.or.jp/topics/topics619.html

執筆者

佐々義子
佐々義子
くらしとバイオプラザ21常務理事・主席研究員 さっさ・よしこ 1978年立教大学理学部物理学科卒業。1997年東京農工大学工学部物質生物工学科卒業、1998年同修士課程修了。2008年筑波大学大学院博士課程修了。生物科学博士。1997年からバイオインダストリー協会で「バイオテクノロジーの安全性」「市民とのコミュニケーション」の事業を担当。2002年NPO法人くらしとバイオプラザ21主席研究員、2011年同常務理事。「食の信頼向上をめざす会」幹事。