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日本の農業技術は国際的に低レベル

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ここからは、現在の日本の農産物の抱える問題と今後の課題について考えていく。生産、販売・流通、そして食べること、これらについて順番に書いていきたい。なお、前回までは主に需用者(食品工業、外食産業、消費者)向けと意識して書いてきたが、今回からは生産者への提言を含んでいる。

国産レタスはアメリカ産より品質が悪い
アメリカのスーパーマーケットの青果売場

アメリカのスーパーマーケットの青果売場。見た目は悪く扱いはぞんざいと言う日本人は多いが、では日持ちと品質の安定度で見るとどうか(記事とは直接関係ありません)

 まず農産物の生産について、現状の問題と課題を見てみよう。

 日本の農産物は、品質が高いとよく言われる。本当だろうか。海外にも行く機会がある私から見ると、別に品質が高いとは思えない。

 パッケージは、いろいろ工夫が凝らされるようになり、大きさもそろっていて、一見よく見えるが、実際の品質というと別によいとは思えない。見た目はいいが中身がついてきていないということだ。

 たとえば、レタスなどアメリカから船便で2~3週間かけて到着するものでも、日本で収穫の翌日に市場に着くものよりも傷みが少ない。アメリカ産のものは農薬か何かをかけているのかということではなくて、日本のレタスは傷みやすいのだ。これでは明らかに品質的に劣っていると言わざるを得ない。

 また、日本の生産技術が優れているということもよく言われるが、誤りだと言っていい。これは、開発途上国から見れば一見進んでいるように見えるというだけなのだ。先進国であるから日本の農業技術は進んでいると勘違いされている。

 実情は、全く進んでいない。多くの作物について、日本は主要先進国の中で唯一、単位面積当たりの収量の伸びが30年間も止まったままだ。他の国では技術革新が次々と起こり、どんどん変化しているにもかかわらず、日本の農業技術は実は30年前に止まったままの袋小路の中にいる。

 日本国内ばかりを見ているうちに、すっかり置いていかれているのだ。

 日本の農産物の状況は、国内メディアなどが優秀と報じているのとは全く違っている。国内マスコミが、その実情を知らないだけのことだろう。それはジャーナリストに問題があると言うよりも、国内農業関係者のほとんどがそれに気づいていないのだから、ジャーナリストが勘違いしてもしかたがないだろう。

 日本の生産技術が進んでいるように錯覚されるのは、開発途上国に比べればあらゆる資材がそろい、資材多投入型で収量が高いように感じられるからに過ぎない。単に多くの資材が流通し、新しい機械、新しい技術などがあるために進んでいるように感じられるものの、実際に反収を調べれば30年前から進歩が止まってしまっていることがわかる。

明確な目標の定まらない生産技術

 これは、日本の農業技術は、ニーズの把握さえ怠った自己満足の技術になってしまった結果である。「いいものをたくさん作る」ために技術を磨いてきたはずなのだが、実際にはいいものも出来ていなければ、たくさんも出来ていない。生産者のためにも需用者のためにもなっていないのだ。ニーズとは、「いいものをたくさん作る」、すなわち安定品質と安定供給である。

 それでも、日本の農業技術には優位性があると主張する人たちが指摘する日本の農産物の特徴は、安心・安全、おいしい、体によいといったことだ。確かに、日本の生産技術はその方向に向かっているようだ。

 しかし、よく考えてみていただきたいのだが、これらは非常に曖昧なものである。もともと曖昧であるから、さまざまな新しい基準や計測項目の設定が提案されたり、実施されたりもしている。だが、それらに目がいったり、どれを採用するかで議論されるために、基本的かつ重要な目標が見落とされていると言えるだろう。

 本来、生産技術というものは、明確な目標のためにある。しかし、今の日本では生産者の目標が非常に曖昧なためにどういった技術を導入すべきなのかがわからないし、目標に向かって生産技術を導入するということが意識されていないのだ。

 明確と言える目標は何かと言えば、やはり安定品質と安定供給である。これらは、多くの人、多くの事業者からのニーズが間違いなくある。そして数値や視認可能な状態を設定できる、客観的な目標が設定できる。

 この2つの目標について、現状の日本の農産物一般の問題点を挙げれば、まず品質が非常に不安定である。これは、天候の影響も大きいし、地域的な問題も大きい。

 天候の影響というのはおわかりいただけるだろう。日本は温帯モンスーン気候で、作物の生産には適した場所ではあるが、半面、雨が多く、年や季節によって、あるいは地域によって天候がさまざまに変わる。そのために、出来たものの品質にバラつきが出やすい。

 地域による問題はもう一つ、土壌の不均一という問題がある。大陸の土壌というのは、均一とは言わないが、似たような土壌の地域がかなり広範囲に拡がっている。それに対して、日本の土壌というのは非常にバラエティに富んでいる。峠を越えると全く違う土壌だったり、同じ地域でも粘土質、沖積土(川が運んできた土壌)、火山灰土、砂質土など、土壌自体の種類が多く、狭いエリアごとに細分化しているのだ。こうした国土の特徴は、農業技術的には同じものを同じように安定的に作るための条件としては非常に厳しい。同じ地域で、同じ天候だとしても、土壌が違うとかなり違った生育になるためである。

 それでもなお、こうした困難を克服して、安定品質と安定供給というはっきりした目標を達成するための生産技術をもう一度考え直し、技術の追求を行うべきである。

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執筆者

岡本信一
岡本信一
農業コンサルタント おかもと・しんいち 1961年生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業後、埼玉県、北海道の農家にて研修。派米農業研修生として2年間アメリカにて農業研修。種苗メーカー勤務後、1995年農業コンサルタントとして独立。1998年有限会社アグセスを設立し、代表取締役に就任。農業法人、農業関連メーカー、農産物流通業、商社などのコンサルティングを国内外で行っている。「農業経営者」(農業技術通信社)で「科学する農業」を連載中。ブログ:【あなたも農業コンサルタントになれるわけではない】